怠惰で小物なクズ領主、保身ムーブかましてたら深読みされすぎてなぜか名君扱いされてしまう

田島はる

プロローグ

 搾取されてきた人生だった。


 大学を出て就職したのは、典型的なブラック企業だった。


 終電帰りも当たり前で、時には泊まりで残業をした。


 上司の勧めでお見合い結婚するも、わずか数年で嫁の不倫が発覚。


 貯金は財産分与で搾り取られ、給料も養育費の名目でほとんど残らず、その日の生活にも苦労する有様だった。


 後でわかったことだが、元嫁の不倫相手は俺に結婚を勧めた上司だという。


 失意の中、不意に電池が切れた人形のように身体が動かなくなった。


 泥の中に沈むような感覚と共に、俺は自分の死を悟った。


 真面目に生きてきたつもりだったが、結局のところ、何にもなれず、何もできずに死んでいくのだ。


 俺の死体が発見されても、きっと誰も悲しまないだろう。


 何でもないことのように消費されて、何もなかったように一日が過ぎていくのだろう。


 だから、俺は決めた。


 生まれ変わったら、搾取する側に回ろう。


 真面目に生きても報われないなら、不真面目に生きた方が幾分か得だろう。


 それならば、搾り取れるだけ搾り取って、好き勝手生きてやるのだ、と。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る