第17話 熱狂的な支持者
帝国で菓子店シェトレボーを開店するのを手伝ってくれた、商人のイングルさん。王国の人間が移ってきて、お店を開くなんて簡単じゃない。イングルさんも実力ある商人であることは知っているけれど、彼だけの力じゃない。彼の後ろに相当な権力を持つ人物が居る事は明らかだった。
イングルさんに話を聞いてみると、その人物は菓子店シェトレボーの熱烈な愛好者らしい。彼の指示を受けて、イングルさんは私達に協力してくださったそうだ。
その人物に、お礼と挨拶しに行く必要があるだろう。
帝国に到着してすぐに私は、例の人物に挨拶しに行こうとイングルさんに話をすると、開店の準備を優先してほしいと伝えられた。それなら、相手のご厚意に甘えさせていただき、ちゃんと準備が整ってから改めて挨拶に向かう事に。
しばらくして、ようやくお店も落ち着いた。余裕が出てきたので、改めて挨拶しに行くことに。例の人物は、甘いものが大好きな人らしい、という話は聞いていた。
「挨拶に来るのが遅れてしまい、申し訳ありませんでした」
「いえいえ! そんなに畏まらなくていいですよ。新しいお店の準備も大変だったでしょう。そちらを優先して頂くように伝えていたので、何の問題もありません」
初めて彼を見た時には、失礼だけれど彼が話に聞いていた人物だと思わなかった。スラッと背が高くてスタイルの良い、精悍な目つきの男性。予想と大きく違った。
「シェトレボーが帝国に来てくれて、本当に嬉しんですよ!」
しかし、彼と話し始めた瞬間に分かった。目を輝かせて、喜んでいる表情。本当にシェトレボーが好きなんでしょうね。彼の語る菓子店シェトレボーのお話を聞いて、とても嬉しくなった。非常に高く評価してくださっている事が伝わってきたから。
私達が王国に居た頃から、遠く離れた別の国で注目してくれていた。帝国に来た後にも、うちの商品を食べてくれている。そして、今もなお応援してくださっている。彼のような人のためにも、頑張らないと。
そして、ちょっと思いついたことがある。彼の語る的確な評価、甘いものに関する知識も豊富で、少し話を聞いただけで本当にシェトレボーにある数々の商品を好きで居てくれる熱意が伝わった。
そんな彼だからこそ、お願いしてみる価値がある。
「ハルトヴィヒさんに、帝国向けの新たな商品開発に協力していただきたいのです。新商品を味見して、意見を聞かせてもらえませんか?」
「俺なんかの意見で良ければ、ぜひ協力しますよ!!」
「ありがとうございます!」
彼に相談役として、商品の開発に協力してもらう。お願いしてみると、二つ返事で了承してくれた。
お願いしてみて良かった。快く、引き受けてくれたから。彼のような帝国の権力者とは仲良くしておきたい、という考えもあった。
けれど、それ以上にシェトレボーを高く評価してくれている彼の期待に応えたいと強く思ったから。ハルトヴィヒさんを唸らせる商品が完成したなら、シェトレボーの帝国での評価もより向上すること間違いなし。良い目標が出来たわ。
まさか彼と私が、この先もずっと一緒のパートナーという関係に発展するなんて、この時には想像していなかった。
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