第21話

 僕達は新国立競技場の周りを周回しながら……


 実際には人、人、人という状態で動くのも大変なんだけれど、どうにか一周することに成功した。



「みんなも一緒に行こう!」


 一時間近く歌い続けている優依は、まだまだパワフルだ。


 サビの部分がまた始まる。


「未来はいつでも無限大!」


 優依がマイクを僕の方に向けてきた。歌は苦手だけど、みんなイケイケの雰囲気だ。僕も自然と声が出た。


「宇宙だって、異次元だって、待っているから♪」


「未来はいつでも無限大!」


 今度は魔央の方にマイクを向けると、彼女もノリノリだ。


「異世界だって、電脳だって、待っているかーらー♪」


「もう一回、行くよー! 未来はいつでも無限大!」


 周囲にいる山田さん、木房さん達の方に向ける。


「宇宙だって、異次元だって、待っているから♪」


「未来はいつでも無限大!」


 最後、前の方にいる観衆にマイクを突き付けた。


「異世界だって、電脳だって、待っているかーらー!!」


「ヤッホーイ! みんな、ありがとー!」


 高い声をあげて優依が飛び上がり、観衆のボルテージも最高だ。



 僕も、魔央だけでなく、川神先輩や、武蔵も、いつのまにか最前列にやってきたエイマールまで含めてもみくちゃ状態だ。


 滅茶苦茶疲れる。


 だけど、楽しいなぁ。




 わいわい騒いでいて、携帯のメール着信音を聞き逃すところだった。


 携帯を開くと、アル・ナスィアルからのメールが届いていた。


『ミスター・トキカタ、今回は君の勝ちのようだ。いずれ、我が国王達も含めて挨拶に伺うことになるだろう』




 中々物騒な発言だ。


 だけど、彼はものすごく大きな見落としをしているんじゃないだろうか。


 今回、アル・ナスィアルは失敗したのかもしれない。


 だけど、それって僕はほとんど何もしていない。



 今、ここで実行しているのは優依なのだし、計画を立てたのは千瑛ちゃんだ。


 それができるようになったのも、川神先輩やみんなの力があってのことだ。


 僕は、ほとんどいただけなんだよね。



 今後だってそうだろう。


 僕が世界を救う、のではなくて、世界を救えるのは魔央の方だ。


 彼女が変わってくれなければ、僕がどれだけ頑張っても世界は終わってしまう。



 世界は、僕が救うんじゃなくて、二人で、みんなで救っていくんだ。




 午後9時前に、ゲリラライヴは終了した。


「悠ちゃーん、疲れたぁ。おんぶして♪」


「うわっ!?」


 いきなり優依が僕の背中にどんと乗ってきた。


 どよめく周囲。


 これはまずいと察知したのか、四里泰子がマイクを向けてきた。


『週刊憤激記者の四里です。天見優依さん、この少年は?』


 優依はほぼダウンしている。どう答えたらいいものか迷っていると四里が勝手に大声を出す。


『何と!? 天見優依さんにまさか双子の弟がいたとは! これは衝撃の事実です!』


「うん?」


『これは憤激砲のための取材が必要ですね。以降、この弟君、時方悠についてはこの私、四里泰子が密着取材をしますよ!』


「えぇ?」


 戸惑う僕に、四里がウィンクした。


 週刊憤激の憤激砲担当記者がつくのなら、他のメディアには出番がない。そういうことだろう。


『一部の映像は、あとから私が改変しておくわ』


 千瑛ちゃんの声も聞こえてきた。


 要は、僕と優依の関係も、必要以上には明るみにならない、ということだろう。



「……楽しいですね」


 魔央が声をかけてきた。僕は少し考えて、笑いを浮かべる。



「そうだね。楽しくて、疲れるね」




僕達の世界はすぐに滅びる(そして大抵はすぐ復活する)・完

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