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いよいよ何も見えなくなった。




 その時だった。


 はじめは何が起きているのかわからなかった。

 風になびく白髪が、視界をかすめてから、少しずつ肺に酸素が戻ってきた。

 そこにはロボット達と格闘する父さんの姿があった。 幻でも見ているのかと、何度も目をこすった。父さんは、強かった。 ロボットの胴体に蹴りを入れ、頭を殴り、形を崩していく。ロボットは1体、また1体と動かなくなった。そして後に続いていた者たちは恐れをなしたのか逃げていった。

 父さんは僕の前に座り込んだ。

「大丈夫? 」

 心配そうな瞳に見つめられて、涙が出そうになった。

 その時、父さんの後ろで何かが動いた。

 黒い影が、鉄パイプを振りかぶる。

「父さん、 後ろ!」

 叫んだが遅かった。打撃音が耳を貫いた。父さんは顔をしかめてよろめいたがすぐ振り返ってロボットの頭を粉砕した。

 この時の僕の驚きを、どう表現すれば良いだろう。父さんの背中が抉れていた。しかし、人の肌の中には赤い血がなかった。その中に見えたのは機械のパーツだったのだ。

 僕は血の気を失って目眩を起こした。父さんが手を差し伸べてくれたが振り払ってしまった。胃の中から湧き上がってくる恐怖に顔が引きつった。

 父さんは全てに気づいたのだろう。決意した顔で、息を呑み込んだ。

「帰ろう」

 僕らは再び歩きだした。父さんにありがとうと言えないままだった。

互いに一言も発しないまま、洞窟の入り口へと帰ってきた。父さんは確かに怒っていたのに、その顔はまるで、僕よりも自分を責めている様だった。

「二度とこんなことしちゃだめだ。 どれほど心配したか」

 僕は手のひらに力を入れた。混乱していて、他のことなんて何も考えられなかった。

「父さんは、誰? 」

 僕の声はあまりにも弱々しく震えていた

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