第4話 時は金なり④
俺の手が赤く輝いている
一瞬の出来事だったが今でも鮮明に覚えている
俺のすぐそこまで迫った化け物にとっさに手のひらを向けた
ただ頭の中には目の前で燃えている炎を強く意識した
その瞬間、一面が炎に包まれた
爆炎は一瞬で森ごと化け物を消し飛ばした
生き残ったのは俺だけだった
本当に一瞬すぎて俺でさえ理解が追い付かなかった
まだ俺の中であの炎が暴れているような気がする
それにさっきの炎を出してから体が重い
まさか、魔法?
そんなオカルトなこと俺は信じない派だが
現状がそれを強く否定する
確かにさっきの女性たちは皆派手な衣装を着ていたし
あんな化け物も見たことない
残敵を警戒しつつ、口元を破った服で抑え燃え尽きた洞窟内に入っていく
奥へと続く道には先ほどと同じ種類の化け物が何体も倒れていた
ここまでうまくいくと少し怖いが、迷わず進んでいくと
予想通り中では大量に化け物たちが倒れている
だがそれはいい
あの財宝が目的だ
さらに進んでいくと、一つだけ入口の狭い箇所があり
その中に、俺が探していたものがあった
金色に輝いて、一瞬その美しさ見惚れる
すぐにもてるだけを取り出してその場から離れる
この場所さえ隠しておけば後でいくらでも取れるので
今はポケットに入る分だけ貰っておこう
いったん外に戻り明るい空を見上げながら少し休憩する
ぐぅ~
お腹が食料を欲している
水しか飲んでいないため急速に何か食べたい
それに俺が使ったあの炎についても知りたい
今必要なことを頭で考える
まずは食糧を集めてそれから人間と交流を取れる場所に向かう
大雑把だがこんなものだろうと決意を決めて食料を探した
しかし...
そんな都合よく食料は見つからなかった
どれだけ歩いても同じ紫色しか視界に入ってこず
気力も体力も限界を迎えた俺は
意識を失った
「死んじゃった?」
「ウーウー言ってるから大丈夫よ」
久々に聞いたその声は若く心地よい声質だったのを覚えている
「…………ンゴロ」
「ンゴロって言った!!いましゃべったぁあああああああああああ」
「いや、うるせぇ!」
クソデカボイスで起こされた俺は咄嗟に暴言が出てしまう
「……………お姉ちゃん喋った!!喋ってる!」
俺の視界に真っ先に入ったのはいかにも好奇心で言葉を発するような幼い女の子だ
が
その頭の上には耳がある
耳というのは猫とかうさぎみたいな動物の耳だ
なんだこの生物!?
いや、確かに最初に見た化け物も見たことない奴らだったが
これもこれで凄い人種だ
人かどうかわからないけど
しかもこの人たちとは言葉も通じる
これでこの世界でも最低限の生活は可能ということがわかった
一安心するとまた腹が鳴った
それを察したのが姉っぽい子が床の分厚い葉をどかして謎の穀物(?)を笑顔で差し出してくれた
「どうぞ♥」
「すいません、ありがたくいただきます」
それを一つだけもらいむしゃむしゃと食す
じ~っと俺を見て観察しているのかちょっと食べずらい
「お、おいしい!」
空気を変えたかったのとまずくはないが誇張するほどうまいわけでもない状況からこの言葉が出た
「……………。」
それを見た姉っぽい女性はずっと無言のまま妹っぽい奴を連れて行こうする
「お姉ちゃんどしたの?この人食べないの?」
ファ⁉
咄嗟に出た言葉に本能が防衛反応を見せて立ち上がる
「はぁ、ミュミュ。そういうの餌の前で言ったらだめでしょ?バレちゃうじゃない」
先ほどの可愛い笑顔はどこへやら、俺を見る目は家畜を見る目と同じになった
気付くのが遅かった
こんな物騒な森でまともな奴らが暮らしているわけない
それに気づいたときに俺の周りは耳の生えた生物が取り囲んでいた
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