第10話 解けゆく紐
彼女が言った一言、僕は何が何だか本当に分からない。僕が殺した?そんなわけが無い、僕は目の前で彼女が飛び出るのを見たはずだ…
何かの間違いだ、そんなはずはない
「そんなわけ…」
僕が口を開いたが桜華が遮った。
「そんなわけない?よくそんなことが言えるわね、私を突き飛ばして殺したじゃない。」
「は?」
何を言って……
僕は声にならない自分の言葉を喉の奥へと引っ込めた。
そうだ。
僕が殺したんだ。
なんでこんな大事なことを忘れていた。
何故だ、僕は完璧なはずだ。今まで何か忘れたことなんて1度もなかったはずだ。それなのに、何故だ。
「きっとあなたも彼と契約したんでしょう。」
状況を把握しようとしている僕に桜華は言った
「彼?」
「そう、誰なのかは分からない、神なのか悪魔なのか、ただ分かるのは人間ではないということ、私を生き返らせたのも彼よ。」
そんなことが有り得るわけが無い、でも桜華の話は真実味を帯びてきている。事実、僕が殺したはずなのに生きている。
「あなた、私を殺した理由覚えているかしら」
「………」
まだ思い出すことが出来ない。
「本当になにも覚えてないのね、あなたは小さい頃から頭が良かったわ。でもその頭の良さを私とチカの2人にしか教えなかった。」
そんなことが…僕は…
「そんな中、生死についての話を私たちにしたわ、そして死んだらどうなるか興味を持った私をトラックに突き飛ばしたわ。あの時の一言は今でも覚えてる。」
「じゃあ!死んでみたらいいよ!」
僕の脳内にそのセリフが流れてくる。
有り得ない現実を目の前に僕は力を振り絞り喋る。
「僕のことを恨んでいないのか?」
「別に、今は普通に生きてるわけだし。」
「じゃあなんで、また僕と関わった!また殺されるかもしれないんだぞ!」
「そうね、ただ私はあなたをコントロールするために来たの。それが私の役目のような気がする。」
「役目?何を言ってるんだ…?コントロール…?ふざけるな!僕は完璧だ!凡人とは違うんだ!」
「確かにそうね、まぁいいわ。また話しましょう。」
そう言いながら教室を出ようとする。
「あ、最後に1つだけ、Ich liebe dich!」
僕はその場に座り込んだ。
全身の力が勝手に抜けたのだ。
今日はもうダメだ、先輩やチカなんてどうでもいい、彼女をどうにかしなけられば、大丈夫、僕には全てある。人間1人の相手くらいなんてことない。
そして彼女の最後の一言だ。
あれは何語だ…英語では無い。
僕はその一言の意味が何故か分かった。
「愛してる」
どういうことだ。イカれてる殺した張本人だぞ?ハッタリだ。
困った……
上手くいっていたはずの僕の計画が狂いだす
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