後日談 俺と彼女と幼馴染たちと

久しぶり

⭐︎まいか⭐︎:未来の犬まだちゃんと見た事ないんだけど!



 いつメンと名前のついたグループにそんな投稿がされる。



 俺は、クッションの上で心地よさそうに寝ているリリの写真をカメラロールからグループに投稿する。



⭐︎まいか⭐︎:未来の妹ちゃんまだちゃんと見た事ないんだけど‼︎



 俺は、積み木を好きにいじって……暴れている悠の動画をグループに投稿する。



⭐︎まいか⭐︎:未来の彼女の北上さんもまだ見たことないし!!!



 俺は、この前一緒にショッピングモールに行った時のクレープを食べている時を不意打ち気味に撮った写真を……いや待て、これはやめとかないと。



⭐︎まいか⭐︎:と言うわけで、次の日曜日みんなで未来のウチ行くからね‼︎



「はぁ!?」



 急にそんな事を言い出す物だから、面食らってしまう。 俺はよっぽど大丈夫だが、真尋とか親父達にも聞いてみないと。



 後、あれの準備か。 いらないって言われてもどうとでもなるし用意しとくに越したことはない。



⭐︎まいか⭐︎:急な話でご都合悪ければリスケいたしますのでご都合の良い日付の候補を上げていただけると大変助かります



 うわぁ急に意識高めのビジネスマンみたいになるな。





  ◇





 11月末、寒さも本格的になる中幼馴染達が来る当日になる。真尋には先んじて来てもらうよう来てもらうようお願い済みだった。



 どうやら親父にも舞伽のパパさん経由で連絡が行っていたらしく話は滞りなく進んだ。



 午前10時頃、インターホンが鳴り出ると話通りまず真尋が来た………が。



「いらっしゃい……なんか、気合入ってる?」


「当たり前じゃん、だって未来の友達みんなカッコいい可愛いばかりなんだから、見劣りしないようにしないと」



 ウェーブがかったハーフアップに加え、普段から何もしてなくても可愛い……好きな相手なので正しく判断できているかは解らないが……その顔立ちもいつもと違って見えたのは、恐らくメイクもしてきているんだろう。



「殆どは学校で見てるし会ってるんだから気にしなくていいのに。 普段どおりでも全然問題ないよ。舞伽くらいでしょ初めて会うのは」


「未来は慣れてるからそう言えるんだよ………阿久根さんだって写真だけで可愛いってわかるくらいなのに」


「まあでも、今日はちょっと面白いもの見られると思うよ。 寒いから中でリリと遊んで待っといて。 俺ちょっとまだやる事あるから」


「え、なに……? おじゃまします………」




 少し警戒した様子の真尋に笑みが漏れつつ、中に案内してエプロンを取りキッチンに入る。すると上着を脱いだ真尋が驚きの目をこちらに向けてきた。



「未来、料理できるの……?」


「人並みにはね。 昔から1人でいること多かったから自然と」



 これも親父に迷惑をかけないよう、の中で得たものだ。幼い頃1人で包丁を扱おうとして怒られたこともあったが、だんだんと料理は任せてくれるようになった。



「ひ、人並みって何…!? 未来ごめんなさい私全然料理したこと無い!」


「落ち着いてくれ……別に今すぐ必要なスキルじゃないし、家庭科の調理実習出来るくらい、というか米を洗剤で洗うみたいな間違った事しない知識があればどうとでもなるから」


「それは大丈夫だと思う……うう、お母さん今までごめんなさい、これからはなるべく手伝います……」


「しかしそんなに驚かなくても」


「いや女子力で負けた気がしてしまって…」


「女子力って……料理なんて今どき誰でもやるイメージじゃない?」


「それでも、こう、やっぱりキッチンに立つお嫁さんに憧れがあるといいますか、いや今までそこまで具体的に考えたことはなかったんだけど…………」



 話しながら赤面していく真尋。 それはつまり最近考えるようになったということで。 最近という事は自惚れでなければ俺と関わるようになってからで。



 ここを突っ込んだらお互い恥ずかしくなってしまう事は間違いなかったので、触れないよう話を続けていく。



「まあ慣れだよ慣れ。 俺も技術的に習ったとかそういうのじゃないから。 タイミング合ったら一緒に作る?」


「いいの!? やらせてくださいお願いします! 家でもこれから練習しますので!」


「すごい下からくるな……」



 そんな真尋の返事から、軽く想像を走らせてしまい今度はこちらの顔が赤くなるのを感じる。



 それに気づかれないわけがなく、真尋はからかう様にこちらを伺ってくる。



「勝手に顔を赤くして、何考えちゃったの?」


「…………キッチンに真尋と並んで料理する絵を思い浮かべたら、なんかいいなって思って。 ……それが自然になっていけたらなって」



 俺に真尋の事をどうこう言う資格は無い。 俺だって色々な想像をしてしまうくらい熱に浮かされているんだから。



 目を逸らしお互い恥ずかしさからか言葉が無くなるが、ふと服を引っ張られ振り向くと真尋が側に立っている。



 俯いていたが、上目遣いでこちらを見ると、潤んだ、何かを期待するかのような目と視線が合う。



「……………好き」



 真尋からその言葉が聞こえ、頭の先まで痺れるような幸せを感じる。



 真尋は、そのまま目を瞑った。



 俺は真尋の肩に手を置き、ゆっくりとその唇に近づき、







「…………スマン、未来、わざとじゃないんだ」

「マジか、未来までこんな事になっちゃうんだ、アタシが言うのもなんだけど恋って凄いね」




 この場に居ないはずの幼馴染たちの声が聞こえて、跳ねるように距離を取り、入口の方を見ると、聡志と舞伽のそれはそれは頼りになる幼馴染みカップルがそこに立っていた。



「は、な、え、なんで、いつから!?」


「いやホント今来たばっかりだよ……携帯鳴らしても出ないからインターホン鳴らしたらおじさんが出てきてそのまま入れてくれたんだ」



 インターホンが鳴ってた事に2人揃って気づかないほど相手に夢中になってたとは。 真尋を見ると、見られた羞恥からか顔を埋めてうずくまって動かなくなっていた。



「おじさんはパパ達と一緒にもう出掛けたから………いやしかし、2年ぶりにちゃんと見た未来の顔がキス顔になるとは思いもしなんだよ、元気そうで何よりなんだけどさぁ」


「…………ころせ、ころしてくれぇ」


「ハイハイ、おじさんが悲しむようなこと言わないの」



 そう言いながらこちらに寄ってきて小悪魔的な笑みを浮かべながら正面に立ってこちらの目を見据えた。




「久しぶり、未来」


「……おう、久しぶり、舞伽」











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