学校では【スキルゼロ】と馬鹿にされてる僕ですが、裏の世界では【インビジブルゼロ】と呼ばれる世界最強の存在です

にこん

第1話 インビジブルゼロとスキルゼロ

─────地下迷宮・ボス部屋


ミノタウロスが僕の視線の先で棍棒を持ち立っていた。


「ブモォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」


そして、僕を必死に威嚇してくる。


そんな睨み合いが数分続いていたが。


ダッ!


痺れを切らしたミノタウロスがついに走り出す。


ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!


(あー、いつからだったっけ)


ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!


ミノタウロスが走ってくる。


僕とミノタウロスの間の距離はどんどん縮まる。


僕とミノタウロスの対策差は軽く5倍くらいはある。

本来ならば、恐怖のひとつでも感じるんだろうけど。


(もう、今はこいつがお金にしか見えない)


ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!


走ってきたミノタウロス。


対する僕は


「ふっ……」


ザン!


圧倒的なステータスから生み出される一回の斬撃でミノタウロスを討伐。


(今更僕の相手ではないな)


そう思いながらダンジョンを更に進もうとしたその時


「素晴らしい」


パチパチパチ。


後ろから拍手の音。

振り返るとハット帽にサングラス、いかにも怪しい出で立ちの男が3人ほど立っていた。


「お初にお目にかかります。インビジブル・ゼロですね?。噂通りの実力をお持ちのようだ」


インビジブルゼロ。

僕の通称だ。


「そりゃ、どうも。どんな噂かは知らないけど」


そう言いながら剣を収めた。


「良かったらどんな噂が流れてるのか、聞かせてくれないかな?」

「ミノタウロスを瞬殺、あまたの戦場を超えて不敗。そう聞いております」

「なるほど、それで?」


ジャキッ。

ジャキッ。

男たちは銃を僕に向けてきた。


「インビジブル・ゼロ。我々と来ていただきたいのです。あなたを軍事利用し、世界バランスを崩す」

「……」


はぁ……。

銃を向けられたのは初めてだな。


「お望みの返事とかはあるのかな?」

「了承いただけないのならここでダンジョンの藻屑となってもらいます。非常に残念なことですが」

「それは怖いね」

「でしょう?話の分かる方だと思います。ぜひ、我々と」

「行かないよ?」


そう言って僕は歩き出す。

クリアルームの方へ。


「フリーズ」


僕に向かって命令する声、そして響くのは銃声。


パン!

パン!


2発分。


「ま、まて!殺してしまう!」


そんな声が聞こえたきたが。


僕は呟いた。


形態変化モードチェンジ​───拒絶リジェクト


すると。

僕に当たるはずだった弾丸は。

宙で消えた。


「ば、ばかな……どうなってやがる!」

「あ、兄貴。弾丸が!」

「き、消えちまったぞ?!」


後ろから騒がしい声が聞こえてくる中僕は振り返って言ってやることにした。


「無駄な殺生は好まないよ。このまま逃げ出すのであれば深追いはしない。虫けらにだって命はある。蹂躙するのはかわいそうだ」


そう言うとワナワナと手を震わせる男たち。


今度はアサルトライフルを取りだした。


「撃て!撃てぇぇぇ!!!!」


ババババババ!!!!

僕に向かって一斉射撃。


「傷をつけても構わん!闇医者がいる!インビジブルゼロは脳が残っていれば……再生できる!」


僕は再度呟いた。


「形態変化​─────反射リフレクション


グニョーン。


目の前の空間が歪んで、数秒後そこに吸い込まれるように発射された弾丸たち。


だったけど。


パーン!!!!!


僕の前の空間はそれを弾き返した。


グチョッ!

ブシャ!

ブシャーーー!!!!


弾き返された弾丸はすべて発射した男達を遅い、ボスと呼ばれた真ん中の男以外を蜂の巣に。


「言ったよね?無駄な殺生は好まないって」


カツっ。

カツっ。


足音を鳴らしながら最後に残った男に近づいて行く。


「あがっ……あ、兄貴ぃ……」

「ぐぅ……」


下で這いずり回ってる子分に目を落としてから兄貴と呼ばれた男に目をやる。


「ほら、芋虫だってがんばって生きようとしてるんだ。今なら見なかったことにする。連れて帰りなよ」


そう言ってから続ける。


「脳みそが残ってれば再生できる優秀な闇医者がいるんだろ?」

「こ、このぉっ!」


再度銃を撃ってきたけど。

もう一度僕の目の前で反射して。


グシャッ!

撃ったはずの男を襲った。


バタッ。

その場に倒れる男3人。


ガシャっ。

ついでにアサルトライフルも落ちていた。


ピシャッ。

血でできた水溜まりの上でしゃがみこんでアサルトライフルを手に取った。


「危ないよね。戦利品ドロップとして貰っていこうかな」


嬉しいよね。

アサルトライフルのドロップなんて初めてだ。


「か、返せぇ……」


そう言ってくるアニキと呼ばれた男に目をやって僕は続ける。


「さよなら」


引き金に指をかける


カチッ。


パーン!


男3人の頭を撃ち抜く。


「やっぱいいや。アサルトライフルは、いーらね」


ポイッ。

その場に銃を投げ捨てて僕はそのままダンジョンの奥に向かうことにした。



深夜12時くらい。

ダンジョンを出た僕は寮までの道を(人並みの速度で)全力で走ってきた。


(激辛ラーメンの猛攻タンメン南極を食ってて遅くなったけど。まぁ、大丈夫か)


寮まで帰ってくると、玄関のところで寮母兼生徒会長の白石さんが迎えてくれた。


「何時だと思ってるんですか?」


ゴゴゴゴゴ。

白石さんの後ろで般若が見えた気がしたよ。


「あ、あはは。ちょっとさ。ほっつき歩いてたらさ。ほ、ほら。僕バイトしてるからそれでね?」


スン。


そのとき白石さんがなにかにおったのか鼻で嗅ぐような動作をしていた。


「火薬?」


うげっ。

ニオイついてたかな?


アサルトライフルのあれだと思うんだけど。


「火薬を使うようなバイト……?まぁあんまり言及はしないけど。今度から遅くなるようならちゃんと届け出を書くこと」


ピラッ。

用紙を突きつけてきた。


これは、帰りが遅くなるときにその理由を書く届け出。


「出したんだけどな、遅くなるよって」

「え?届いてませんでしたよ?」


そのときだった。

ガチャっ。


玄関に近い方の扉が開いて中から男が出てきた。

そいつは僕の顔を見るとすっ飛んできた。


こいつは、中田。

僕の悪友だ。


「よう。聞いたかよ兄弟。地下迷宮でマフィアの死体が出たんだってよ。死後そんなに経ってない死体でさ。で、結構やばめのマフィアだったから話題になってんだよ」

「ミノタウロスにやられたんですかね?マフィアがダンジョンというのはあまり考えられませんけど」


白石の質問に首を横に振る中田。


「銃火器で頭撃ち抜かれておじゃんらしいぜ?現場にアサルトライフルが落ちてたってさ」


僕に目をむけてくる白石。


「なんでそこで僕を見るわけ?」


僕の質問に答えずに白石と中田が2人で会話を始めた。


「ねぇ、中田くん?」

「ん?」

「よく見るとさ。血ついてない?」


そう言って僕のつま先から頭のてっぺんまで目をやる中田。


「ケチャップだろ?」

「でも微妙に火薬の匂いしない?」

「なになに、生徒会長サマはまさか兄弟がマフィア殺しの犯人とでも思ってるワケ?」


ニヤニヤしながら肩を組んでくる中田。。


「言っちゃ悪いかもだがこいつは【スキルゼロ】だぜ?へへっ。まさか火薬くらいで疑われちまうとは」


ガーハッハッハと笑って部屋に戻っていこうとする中田に聞く。


「中田。昼に渡した書類は会長に渡してくれたか?」

「あ?紙?」


そう言って僕の顔を見てきてハッ!とした顔をする。


「あー、どうりでねぇ!なんか知らねぇ紙がカバンに入ってるなって思ってたよ。腹減ってたから食っちまった!」


ヤギかお前は。


僕としては別に、問題は無いけど当の迷惑を被った会長に目をむける。


ゴゴゴゴゴ。

興味の矛先が僕から中田に変わったらしい会長。


「中田くん?お話を聞くわね。大事な書類を腹減ったからって理由で食べないでくれる?」

「ま、待てって待てって。紙に醤油かけたら意外といけるんだぜ?!会長もどう?奢るぜ?」

「いらないわよ!」


そんなふうに言い合いを始める2人を横目に僕は自分の部屋に戻ることにした。

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