いつの間にか周りを囲まれて

 嬀覧が亡くなり1夜明けた同じ部屋で戴員の死体が見つかった。


 徐薊「戴員まで、私の木像で、気持ち悪い(嬀覧に引き続き、戴員まで亡くなったのは、良いことなのだけど。流石にこれは慣れない。穴からポタポタと白いものが。まぁ、百歩譲って、私の身体が魅力的なのは認める。でも、そんな素振りすらなかった戴員にまで、1日中使われるというのは)」


 盛憲「放置した結果がこれだ。2日続けて、仲間を失った。劉備を問い詰めるべきだ」


 辺洪「これは疑いようも無い。この木像人形が人を狂わせているのは、明らかだ」


 呂壱「(何も行動を起こせず2人も失うとは。確かにこれが劉備の策略だとしたら危ない。まだ、孫翊を殺さず劉備を殺せば、罪をなすくりつける計画が台無しだ。ここは)」


 徐薊「それだけで犯人扱いすれば、劉備はきっと逃げ出すわ(どういうわけかわからないけどこれではっきりした。劉備殿は、呂壱たちを排除しようとしている。なら、私が取るべき行動は、それを引き延ばすこと。これで、明日。また、私の木像人形が穢されていたとしても)」


 盛憲「なら、せめてこれだけは破壊する」


 木像人形を槌で叩いて、完全に破壊する盛憲と辺洪。


 辺洪「これで、ひとまずこれに狂わされて、亡くなる人間は居ないだろう」


 徐薊「壊してくれてありがとう。私じゃ無いけど、嫌だったわ」


 盛憲「気にするな。では」


 こうして、その夜、盛憲と辺洪は話し合っていた。


 盛憲「呂壱が本当に俺たちを曹丕様に推すと思うか?」


 辺洪「今更、何を言っている?」


 盛憲「おかしいと思わないか?呂壱は、どうやって曹丕様に近づいた?」


 辺洪「確かに。そこは疑問だ」


 盛憲「俺たちは良いように利用されているんじゃ無いのか。操られずに駒として働ける人間として」


 辺洪「だったらどうするつもりだ?」


 盛憲「勿論、ここから逃げるんだ。それか劉備か孫翊の首を取って、魏に亡命するとかな」


 辺洪「それは良い。狙うなら孫翊だな。行こう」


 こうして、孫翊の寝室に近付いた2人は、斬りかかったところを防がれる。


 盛憲「孫翊、覚悟ーーーー」


 ???「そんなことはさせん!」


 盛憲「き、貴様は傅嬰フエイ


 徐元「お前たちなら追い詰められれば、孫翊様を暗殺して、魏に亡命を企んでいるだろうことは、読んでいた」


 辺洪「クソーーーーーーーー。おい、盛憲、逃げるぞ」


 盛憲「今、逃げたところで、その後どうする?」


 辺洪「そんなもん言ってる場合かよ。命あっての物種だろうが」


 盛憲「やむおえんか」


 逃げようとしていた盛憲と辺洪だがその背を斬られた。


 傅嬰「逃がさん!」


 徐元「お前たちを殺せば、残るは呂壱だけだ」


 盛憲「こんなところで、終わってしまうのか。孫翊を裏切ったのが運の尽きだった、か」


 辺洪「チクショーがぁぁぁぁぁ。呂壱を信じたばかりに貧乏クジを引いちまった、ぜ」


 その頃、呂壱は孫暠と話していた。


 孫暠「作戦が全て失敗した?」


 呂壱「あぁ」


 孫暠「その機械人形は破壊したんだろ?」


 呂壱「それは、な。だが、こちらは嬀覧に戴員を立て続けに失い、俺が曹丕と繋がっているということに疑問を持った様子の盛憲は辺洪と共に逃げる算段をつけているだろう」


 孫暠「何がどうなってる!?」


 呂壱「わからん。嬀覧と戴員は明らかな事故死だ」


 孫暠「それにしても、生身の女じゃ無い機械人形と丸一日してたってか?本当に外傷は無かったのか?」


 呂壱「無い」


 孫暠「あり得ない」


 その時、外から声が聞こえてくる。


 孫策「呂壱、お前がここにいるのはわかってる。出てこい!」


 周瑜「無駄な抵抗は止めるのだな」


 呂壱「これは、どうされたのです?呉王様は、牢屋に入ることを命じたはずですが。これでも食らえ」


 紫色の光で孫策と周瑜を操ろうとするが2人には全く効果がない。


 孫策「その紫の光で、翊の奴を操ったんだな。俺の弟を返しやがれ!」


 呂壱「先に見捨てて、劉備の元に行ったのは、誰ですかな?」


 周瑜「劉備の元へ行ったのではない。孫策の呪いを解くため、荊州の奥地にある腕の良い医者を訪ねていただけのこと」


 呂壱「言い訳なぞ。いくらでもできますな」


 孫暠「孫策じゃないか。そう、呂壱を虐めてやらないでくれよ。コイツも孫家のために。!?」


 孫暠は父の姿を見て驚いた。


 孫静「信じたくはなかった。まさか息子であるお前が呂壱と通じて、内部からこの国を乗っ取ろうとしていたなどと」


 孫暠「チッ。バレたら仕方ねぇ。あぁ、そうだよ。俺が呂壱に命じて、この国を混乱に貶めたんだよ。悪いか?俺がこの国を治めたら劉備にも曹丕にも負けねぇ。テメェらと違って、俺は有能だからな」


 孫堅「驕った男の末路か。残念だ。甥を殺す選択をしなければならないことを」


 孫暠「孫堅、テメェのことなんてな。叔父だと思ったことねぇんだよ。龍に尻尾振る虎が!」


 呂壱「俺の呪術は凄い。俺の呪術は凄い」


 呂壱の周りを黒いオーラのようなものが包み込んでいき、呪術の力が増したのを感じる。


 ???「これは不味かろう。小生が力を貸すとしよう」


 呂壱「やっと出てきたなぁ左慈方士ぃぃぃぃぃぃ!!!!于吉様と黄皓の敵討ちだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 呂壱の膨れ上がった呪術が孫暠をも包み込んで、2つの頭を持つ犬となる。


 呂壱・孫暠「ひゃひゃひゃひゃひゃ。成功だぁ。これこそ地獄の番犬、双頭黒狗そうとうくろこまだ。ひゃひゃひゃひゃひゃ」


 左慈「人であることすら捨てようとは、ここは危険ゆえ、孫伯符は、皆を安全な場所へ避難させよ」


 孫策「おっおぅ」


 呪術によって、2人の人間が合わさって、犬となって転生した姿が双頭黒狗である。

 見ている人にわかりやすく横文字に直すと地獄の番犬オルトロスである。

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