田豊と沮授、袁三兄弟と会談す

 劉義賢から話を聞いた田豊と沮授は、協力してくれる将軍は、袁三兄弟しかいないと彼らの元を訪ねていた。


 田豊「やれやれ、年寄りにこの道は堪えるな」


 沮授「歳は、取りたく無いものだな」


 小高い丘の上に作られた城で、武陵郡に位置しているこの城の城主を任されているのが袁尚である。


 袁尚「父が軍師にと求めた2人が訪ねてきてくださるとは、こんなに嬉しいことはありませんよ。義父には感謝しないと。こんな安全な場所を用意してくださって、城主として取り立てて、兄たちを側に置いてくださいましたから」


 袁尚の妻は、劉備の娘で、劉備と馮方女との間に産まれた劉鈴である。

 そこに劉鈴が下着姿でやってくる。


 劉鈴「ねぇねぇ。袁尚様、どうこの下着姿、興奮しちゃう?」


 袁尚「な、な、な、な、な、な、なんて破廉恥な。だが、何だろうめちゃくちゃ僕の中の男心がくすぐられる。じゃなくて、鈴殿、今はお客様が来ているので、また後でね」


 劉鈴「わかった〜。袁尚様の反応も見れたし、今夜の楽しみに取っておくね〜」


 袁尚「こ、こ、こ、こ、今夜の楽しみに。待ち遠しい。夜が待ち遠しい」


 袁煕「尚、気持ちはわかるが今は抑えよ。客人の前だぞ」


 そこに甄姫が下着姿でやってくる。


 甄姫「コラ袁叡、また私の服を隠して、どうして悪戯ばかりするのよ!」


 袁叡と呼ばれている悪戯が大好きな少年は、曹丕との子供ということにしていた袁煕との子供である曹叡のことである。


 袁叡「カカ様の今日の下着の色は、赤〜。トト様が好きな赤で、誘惑する気満々だよ〜」


 甄姫「もう、何言ってるのよ。ほら返してよ」


 袁煕は、自分の後ろに隠れた袁叡の首根っこを掴んで、目を背けながら甄姫の方に差し出す。


 袁煕「叡、悪戯ばかりしてはダメだぞ。ほら、甄に返しなさい」


 袁叡「トト様、顔が真っ赤っか〜。目も背けてる〜初心初心だ〜」


 袁煕「そんな言葉、何処で。全く、会ってない時間が長かったのに、懐いてくれているのは嬉しいが。流石に甘やかせすぎたか。叡、悪戯ばかりしているとこわ〜い鬼がやってくるぞ〜」


 袁叡「怖い鬼って?」


 甄姫「曹丕がやってくるってことよ〜」


 袁叡は、曹丕と聞いてガクガクと震えている。

 それもそのはず、曹丕は、母である甄姫のことを殺そうとしていたのだ。

 文字通り、怖い鬼なのだ。


 袁叡「良い子にするから、絶対に来ないで〜」


 袁煕「良し、約束だぞ。ほら、お客様が来ているから。甄、後は任せたよ」


 甄姫「かしこまりました。後で、その私のことも」


 袁煕「ゴホッ。ゴホッ。やめてくれないか。その目は。我慢できなくなる」


 甄姫「今夜、楽しみにしてますね」


 袁煕「息子がし、失礼した。田豊殿に沮授殿」


 田豊「構いませんぞ。役得でしたしな」


 沮授「うむうむ。何でしたかな?こういうことをラッキースケベとか何とか昔、劉丁殿が言っていたような気が」


 袁譚「全く、妻に尻に敷かれている弟たちで申し訳ない。此度は、どのようなご用件か?」


 田豊「仮面というのでしたかな?付け心地は如何かな?」


 袁譚「悪くは無い。甥たちを怖がらせることもないのでな」


 袁譚が仮面を取ると拷問を受けた際の生々しい傷跡が出てきた。


 沮授「それはとても子供達には見せられませんな」


 袁譚「この仮面のおかげで、甥っ子を怯えさせず過ごすことができ、生きて再び、弟の力となれるのだ。劉丁殿と董白殿には、感謝しかない。しかし、お二人が揃って、訪ねてきたのだ。そのようなことが聞きたかったのでは無いだろう?」


 言いながら袁譚は仮面を付け直す。


 田豊「うむ。本題に入るとしよう」


 沮授「長安の奇襲作戦に参加してもらいたいのだ」


 袁煕「長安を奇襲!?曹丕のお膝元であり本拠地に奇襲をかけるなど正気ですか!?」


 田豊「洛陽では、反乱が起こり、許昌を呂布将軍が武都を劉丁様が弘農を甘寧将軍が攻める手筈となっておる」


 袁煕「主要都市への同時多発攻撃か。丞相も大胆な手に出ましたね」


 沮授「いや、この策を提案したのは、劉丁殿なのだ」


 袁尚「劉丁殿が!?」


 袁煕「確かに全て成功すれば魏に対して、かなりの痛手を与えられる。しかし、無謀にも程がある。長安は、曹丕が定めた魏の本拠地。防備も固い。奇襲が成功する確率など。丞相は、知ってるのか?」


 田豊「無論だ。そして、袁煕殿と同じく成功する確率はかなり低いと申された」


 袁煕「なら決まっているだろう。論外だ」


 袁譚「煕よ。お前は頭で考えすぎだ。劉丁殿が焦る理由があるのだろう?田豊に沮授よ。話してくれんか?」


 田豊と沮授は、見合わせて悩んだ後、覚悟を決める。


 沮授「袁譚殿も劉丁殿に救われたものの1人か。ふむ」


 田豊「他言無用でお願いしたいが構わぬか?」


 袁譚「勿論だ」


 田豊は、劉義賢のことを話す。

 それを黙って最後まで聞く袁譚。


 袁譚「そうか。恩人は、俺より先に逝く運命なのだな。田豊、協力するからには成功させる策があるのだろうな?」


 袁煕「兄貴、何を!?丞相ですら確率が低いと言ったのだ。成功する方法など」


 袁譚「煕よ。まだわからないのか?人質になってるその中に俺がいたらお前は、保護して貰った劉備殿に刃を向けられるのだな?」


 袁煕「それとこれとは」


 袁譚「一緒だ!彼らは、こうして甄姫のことを守り、ここに合流できなかった場合の俺だ!俺は決めた。彼らを救うためこの武を貸す」


 袁煕「頑固なところが少しはマシになったと思ってたんだけどな。尚、どうする?」


 袁尚「僕が決めて良いんだね煕兄上」


 袁煕「あぁ。お前が城主だからな」


 袁尚「初めから決めていたよ。我ら袁三兄弟、以下兵力の全てを田豊殿に預けます。必ずや我らを勝利に導いたください」


 田豊「必ずや。人質となっているものたちを救い出しましょうぞ」


 沮授「協力に感謝しますぞ」


 袁三兄弟は、長安の奇襲に手を貸すことに決めるのだった。

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