後継者に納得できない劉封

 張飛と関羽は、妻や子供たちと家族ぐるみの付き合いをしていた。

 そこには、劉備も居た。


 劉封「父上、俺はまだ納得してませんよ!何故、次代が長男である俺ではなくて、劉禅なのですか」


 関興「この件については、俺も言いたいことがあります。劉備叔父上」


 張苞「まだまだ国は治まりそうにないしな。ひ弱な劉禅よりかは劉封兄の方が適任だろうよ」


 関平「父上たちも納得したと聞きました。俺も劉封が継ぐべきだと考えています」


 関羽「某は、劉封、お前に一つ問いたいが構わんか?」


 劉封「何です?関羽叔父上」


 関羽「万が一の話だが、魏に奥深くまで侵攻されたとしよう。最後まで抗うか降伏の2択ならどちらを選ぶ?」


 劉封「例え、この命尽き果てようと最後まで争い抜く」


 張飛「まぁ、お前ならそう言うよな。それが武人の考えだ。即ち、劉封。お前はどこまで行っても武人止まりってことだ。当主の器じゃねぇよ」


 張苞「父上、何を言ってるんだ?国が滅ぶまで民を率いて戦うのが当主の役目だろ?」


 関羽「劉禅様は違ったのだ。民を安んじてくれるのなら自分の命と引き換えに降伏を選ぶと宣言なされた」


 関興「そのような弱腰に国を治める力などないかと」


 関平「そんなこと。民も将も許さない!」


 劉備「果たして本当にそうだろうか?奥深くまで侵攻されるということは、戦っても何れ制圧されるのは日を見ても明らかなことだろう。民に負担と心労をかけることが当主の務めと言えるだろうか?」


 劉封「それがこの国に産まれた民の責務。死ぬまでこの国のために魏や呉に抗うのが嫌なら。出ていけば良い。やはり甘すぎる劉禅などに任せられん。俺が次期当主として、宣言を」


 芙蓉姫「やめなさい劉封。殿がお決めになられたことに息子とはいえ臣下の1人が意見することなどあってはならないことよ!恥を知りなさい!」


 劉封「母上は悔しくないのか!長男である俺が跡を継がないことを!」


 芙蓉姫「悔しくなんかないわ。貴方にこの国を任せる方が先行きが不安だと判断したもの。血気に逸る貴方は一介の将止まりよ!身の丈に合わないものを望むことは、母として許しません!」


 胡銀怜「関平に関興もよ。誰が当主であろうとお仕えするのが武門の誉でしょ。それに私たちは劉備義兄さんの親戚筋のお家なのよ。兄弟の誰に付くかなどで揉めるなんて浅ましいことよ」


 夏侯月姫「張苞、貴方もよ。劉備義兄様も張飛様も関羽義兄さんも悩んで選択したの。それに対して、堂々と意見を言った後に民なんかどうでも良いなんて発言した劉封様の肩を持ってはダメよ。この国の信念を理解してない言い方よ」


 関興「しかし、母よ。弱腰では、この先」


 ???「ゴホッゴホッ。この先などないから安心せよ。平に興に苞よ。兄上の代で、この世界を統一する。次代は、国を安んじ民を安んじられるものが最も適任なのだ。ゴホッゴホッ」


 劉封「ふざけるな!クソ叔父が。何が劉禅だ。俺は絶対に認めん。弱い奴が当主に立てば、求心力を失い。内から瓦解する。これだから所詮、策しか考えられぬクソ叔父なのだ」


 義賢「手厳しいな。しかし、策なく突撃しかできない猪武者では、命を落とすだけだぞ。ゴホッゴホッ」


 劉封「病人のクソ叔父が俺様に説教などするな!絶対に俺は認めん。これだけは、変わらん。行くぞ。関平・関興・張苞」


 関平「叔父上、一つ聞きたいことが」


 義賢「何だ平?」


 関平「叔父上は、国が滅ぶよりも民の生活が大事だとお考えなのですか?」


 義賢「あぁ。国の礎は民。民の生活を安んじることこそ国を預かる者の責務。民を悪戯に危険に晒してまで、守る国などあってはならない。そもそも内乱など以ての外だ」


 関平「劉封、諦めろ。叔父上が正しい。お前は、自分よりも弟の方が優秀だと思われたことが我慢できないだけだ。しかし、そうではない。叔父上は、我々の誰1人として、上下など決めていない。お前の負けだ」


 劉封「関平まで何を言い出すかと思えば、野心なき者に用などない」


 バシーンと劉備と芙蓉姫が劉封に平手打ちをかました。


 劉備「芙蓉、お前まで何を?」


 芙蓉姫「今のは聞き捨てならないわ。野心だなんて、それで国を滅ぼすのが息子だなんて哀れすぎるもの」


 劉備「フッ。俺たちは長男の育て方を間違えたな」


 芙蓉姫「そうね。この責任は、親である私たちが取らないと」


 劉封「父も母もそこまで俺に跡を継がせたくないと。やれやれ、こんな国俺の方から出て行ってやりますよ」


 劉備「そうか。勝手にせよ!その歳にもなって、驕り高ぶり、挙げ句の果てには、こんな国だと?この国は、私が義兄弟や頼れる臣下と共に築いた。その根幹は民を守りたいという気持ちだ。私はお前の言葉を聞いて、自分が間違ってなかったと確信した。劉禅こそが最も次代にふさわしい。お前などではなくな。どこへなりと行け。戦場で会ったら親子の情など一切捨てて、お前を斬り殺してくれる」


 劉封「その言葉、後悔させてやる劉備」


 関興「国を捨てるなど本気か劉封兄」


 劉封「フン。こんな国こちらから願い下げだ。今は乱世。己が武で新たな国を作る劉備も関羽も張飛も老いた」


 義賢「わかった。そこまでいうなら封よ。俺の提案を聞く気はないか?」


 劉封「今更なんだ?」


 義賢「禅と木刀での一騎討ちで勝てれば、兄上に後継者を再考するように進言しよう」


 劉封「フハハハハ。戦に出たこともない温室育ちと一騎討ちなど舐められたものだ。その言葉、後悔するなよクソ叔父」


 義賢「勝てればだがな」


 劉封はその場を後にするのだった。

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