私は戦国一の女武将に成長する

いっくん

第1話 招かれた歪みの戦国時代生活

「おらぁ!」


一人の女のパンチで人相の悪い男のヤンキーが地面に倒れる。


「ば···化け物だぁ!」


ヤンキーは尻尾を巻いてこけながら逃げ出した。



女は、退屈そうな顔をしていた。


「また外れか···」


私の名前は、佐川 美恵(さがわ みえ)


一匹狼で女ヤンキーをやってる。ヤンキーをやってる理由?


それは···



私は、物心ついた頃から両親に嫌われ親族にも嫌われていた。


理由は、私は養子であり『養子支援金』と呼ばれるお金のためだけに引き取られた子だったからだ。




私は今、ヤンキーをぼこし、盗みをはたらきホームレス生活をしている。


そしてヤンキーを相手している間に一匹狼のヤンキーとして名が広まってしまい、腕に自信のあるヤンキー達が探し挑んでくるのだ。


でも···弱くてつまらない


私は『誰かに求められたい』


必要とされたい


そう願い、生きている。求められるための要素が私には強さしかないのだ。



いっそ、戦国時代に生まれてたら私を求めてくれる人に出会えたのかもね。


強さで心からぶつかっていた戦国時代が私は、昔から大好きだ。


中卒の十五歳の私だが、中学の図書室で戦国史については必死に研究し私の知識のほとんどは戦国史で埋まっている。



戦国時代について感傷に浸っていたらあっという間に夕暮れが訪れる。


私は、いつもの河川敷の橋の下にある段ボールハウスに入りスーパーから万引きしたおにぎり二つを頬張る。


相変わらず虚しい···


おにぎりを両手に虚しさを感じたその時だった。


眩しい光が私を包みこみ私は思わずおにぎりはしっかり守りつつ目を両腕で覆った。



刃物と刃物が激しくぶつかり、誰かは分からないが大量の者達が争う騒がしさを感じることが出来始めた。


「うっ··」


私は、状況を確認するために両腕をどけて視界を確認した。


「夢···じゃないよね?」


視界を認識して私は、涙をこぼし驚きのあまり一瞬硬直した。


見渡しの良い平原···槍や刀を持った男達が争いそれぞれ、違う模様の旗を掲げている。


「間違いない···ここは、戦国時代」


すぐには信じられないがお互いの家紋の旗を見てここが何の戦いの場なのかが把握できた。



これは、


『川中島の戦い』


それは、上杉家と武田家というお互い有名な武家が川中島という土地で何度も激戦を繰り広げ遂に決着はつかなかった戦いである。


「何が起きてるの···」


その時、身軽ないわゆる足軽の兵が私の目の前に吹き飛んできた。


「我、武田の将! 武田 信繁なり!」


「っ···まさかの将か···蹴りで先制してくるとは、もはやここまでか」


どうやら、上杉方の兵と武田の将 武田信繁が一騎討ちをしていて上杉方の兵は負けを悟っているらしい。


武田信繁···


武田家の大名 武田信玄の弟で武田家の副将···副リーダーのようなものだ。


「むっ···お主も上杉の者か? 幼子まで駆り出すとは上杉を追い込めてる証拠だな」


「幼子? 我が軍に幼子なんていたか?」


信繁に私は、気付かれた。だがなんだ?むかつく。


「幼子? 私のことなめてんのか? 川中島は何回目だ?」


「2回目だがどうした?」


信繁が私に無防備に上から目線に眺めてくる。


「てめぇ、私の強さを教えてやるよ!」


次の瞬間、信繁の槍を遠くに蹴り飛ばし横顔をジャンプして蹴り飛ばす。


「ぁが···なんだ、この体術は···」


「凄い、君! 私と共に共闘しないか?」


上杉の兵が提案してきた。まぁ、あの武田 信繁だしな。それに···私をなめやがったからには、後悔してもらわないとなぁ。


「ヤンキーの血が騒ぐぜ!」


私は、信繁に本気の拳を繰り出し信繁もさすがは武士。両腕で防ぎ痺れた程度だ。


「武田 信繁 覚悟!」


上杉の兵が信繁に長い槍で突撃するが信繁は私を強敵と認識しているようで既に避ける心構えもしているようだ···だが、私はその考えを読めたぞ?


「おらぁ!」


「しまっ···ぐあっ!?」


私は、上杉兵の元へ蹴り飛ばし信繁の脇腹に槍は刺さったのだ。


「おのれ···この程度でくたばら···」


その時、退却のほら貝の合図が両軍から出された。どうやら、決着はつかなかったようだ。


「そこの幼子、名乗れ!」


「私? 私は、佐川 美恵。ヤンキーだ」


「佐川···覚えたぞ! 次の川中島で一騎討ちを申し込む!」


そう言い残しふらつきながらも止めてあった馬に乗って去っていった。


さて、私はどうしたものか···


「佐川殿」


そう呼んできたのは上杉兵だ。


「なんだ?」


「貴女様さえ良ければ、私の仕える村上義清様にお会いしませんか?」


村上義清···


確か、上杉家の将だったな。


「案内してくれるか?」


「勿論です! 武田信繁を退けた功績があれば貴女も仕えれるかもしれません!」


この足軽···まだ若いな。貴方、名前は?


「私ですか? 私は直江兼続! これが初陣だったんです」


まじか···直江兼続といえば、謙信亡き後の上杉家の重臣。


助けて良かったな。でも、私がいなければ信繁に討たれてた。なぜ?私がいないこの時代の歴史が色々変わっている?


流れではあるが、元の時代に帰る方法を探すついでにこの歴史の歪みも確認するべきだと何となく思う。


「どうかしましたか? さぁ! 義清様の陣に行きましょう」


「分かった」


まぁ、今はその時その時で良いだろう。



そして、私と兼続は村上義清の陣に到着した。


「お主がこの度の川中島にて、かの将、武田信繁を退却に追い込んでくれた佐川殿か?」


「そうよ」


「ほう···兼続と連携したそうだな」


「はい! 佐川殿は武器ではなく体術で戦うんです」


「なんと!? お主、義清軍の兵とならぬか?」


···ここはのっとくか?手掛かりより先に拠点もいるしな。


「その話、ありがたく···」


「ほう、それはありがたい! これからよろしく頼むぞ! 佐川 美恵」


「えぇ」


まぁ、戦は思いっきり暴れれそうだし、今のところは村上義清の元で仕えておくか。



村上義清様の館に住ませて貰うことになるのはありがたかった。


でもさ、私の容姿が武士には好みなのか?


義清様の家臣がさっきから、可愛がってくれるんだが···



私の容姿···


黒髪にピアス、服とズボンはダメージ加工。サイズの合っていないパーカー。


これのどこが良いのだ?後は、強気なとこぐらい。



後、もう一人私を可愛がるというか、尊敬してくる者がいるのだが···


「佐川様!」


同い年ぐらいの一見、つんけんした少女が抱きついてくる。


「美依(みよ) やめろ、うっとおしい」


彼女は村上義清様に仕える唯一の女兵だったらしく私に喧嘩を売ってきたのだがヤンキーの態度で威圧しただけで、惚れられ困っている。


切田 美依···聞いたこと無いな。実在した人物なのかも分からない。



どうやら、彼女は私の下につきたがっていて義清様に頼みこみ検討して貰っているらしい。


勘弁して欲しい、義清様···信じてますよ。



翌朝、


「佐川様! これからよろしくお願いいたします。


私、切田 美依 誠心誠意仕えさせていただきます!」


義清様?正気です?私···一匹狼だったから下を持つのは嫌だったのに。


「義清様の命なら仕方ない···これからは私と共に戦ってちょうだい···言っとくけど貴女が弱いと置いてくから」


私は上の立場失格の言葉を言い放ったが美依には何故か惚れる態度だったようで···


「はい!」


目をハートにされた、これは何を言っても無駄だから味方が増えた喜びということにしておこう。



三日ほど義清様の屋敷で過ごし馴染んできた頃、義清様からどうやら戦の話だそうだ。


少し、暴れたい···やっぱ私、ヤンキーなのかもね。心の中では否定してたけど確信したよ。


「皆、呼び出しにこたえてくれて礼を言うぞ」


「礼などいりませぬ! さぁ、今回の敵を」


そう進言するのは、屋代 政国様。私もさすがに知らなかったがかなりの実力者らしい。


「今回の標的は、謙信公のご命令で武田方の横田 高松(よこた たかとし)である」


「なんと、横田家を···武田二十四将の一人ではありませんか」


政国様の言う、武田二十四将とは武田家を支える強力な武将のことである。


横田 高松···武田家の家臣ということは知ってる。そして、戦場慣れした将だ。


「今回の横田 高松の屋敷への攻めだが、メンバーは、


屋代 政国


小泉 重成


市川 信綱


総大将は、我直々に行き、残りの家臣に留守は任せる!」


集められた家臣が一斉に了承の返事を揃える。


どうやら、私と美依も留守役···安心した。


「そして、私の護衛役に佐川 美恵、切田美依を指名する!」


「はっ!」


美依は嬉しそうに返事する。まぁ、私も義清様には恩があるし、主君だからね。指名されたからにはやるよ···護衛だけど横田 高松。楽しみだな、会ってみたい。



翌日、出陣して進軍している。


私は、軽い足軽の服一式だけ貰い笠は断った。拳が愛しいからね。


ちなみに、私の家臣こと切田 美依は私の真似をして同じ服装で笠と一般的な日本刀が足された格好をしている。



もう夕方、やっと横田家の屋敷に到着したのだが中に感じの高松がどうやら忍によるといないらしい。


「もしかして、我らの動きに気付いたか? 中には将はいるのか?」


「はっ、中には高松殿の将は、栗田 表太郎率いる三百のみです」


栗田 表太郎とはいわゆる名もなきモブというやつだろう。現代人からしたら。


「伝令! 義清様、我が屋敷の動きに気付いていた横田軍 五百が我が屋敷に進軍している。模様!」


「何!? してやられた! して、奴らは今?」


「どうやら夜の攻撃は我が屋敷の戦力的にも危ないと判断したらしく夜営しております。場所は屋敷から見える森でございます!」


「ぐぬぬぬ···誰か、策はないか?」


ここにいる皆が頭を抱える。戦国時代が好きで軍師っぽく私は考える癖があるほど頭が切れる。戦国オタクだからね


「私の策でも良いなら···」


「美恵か···とにかく聞こう」



そして、私は全武将に策を話した。


「なんと···!? お主は軍師に向いておるな!」


義清様や他の方にも褒められ美依にはまた目をハートにされる。


まぁ、良い。さっそく、実行することが決定しそれぞれ動き始めた。


さて···どうなることやら。成功すれば、横田 高松の首をとれる!


さぁ、楽しい楽しい戦だぁ!






[後書き]

今回から、執筆することになった女ヤンキーの戦国時代生活の始まりはいかがだったでしょうか?

この作品には、事実と創作が混ざっているので了承のうえ、お楽しみください。


人物の登場数が出来るだけ押さえますが多いので、一話ごとに紹介を添えておきます。


それでは、この作品を今後ともお楽しみください。

次からは下のように紹介欄をつけておきます。



[人物紹介]


*佐川 美恵(主人公兼創作)···家族に恵まれずヤンキーの道に一人で生きている少女。しかし、根はしっかり者で心優しく不思議な魅力を持っている。


喧嘩大好き!



*武田 信繁···かの有名な将、武田信玄の弟。美恵に敗北してからライバル視している。



*直江兼続···今は美恵と同じくらいの年齢で足軽だが足軽で村上義清などから力を認められる実力者。


謙信亡き後から謙信の息子の側近として大活躍



*村上義清···上杉家の将。心優しく人望の厚い人物。見ず知らずの美恵を家臣にして自らの屋敷に住まわせてくれるほどのお人好し。



*切田 美依(創作)···村上義清に仕える女性の足軽でクールな性格で冷たい人柄をしているが自分を威圧で制圧した美恵に惚れ込み家臣となる。



*屋代 政国


*小泉 重成


*市川 信綱


···村上義清の家臣



*上杉 謙信···村上義清含めた上杉方の全ての将の主である大名。


武田 信玄の永遠のライバル



*武田 信玄···武田方の全ての将の主である大名。


上杉 謙信の永遠のライバル



*横田 高松···武田家の将


*栗田 表太郎(創作)···横田 高松に仕える将。留守を預けられるほど信頼されている。




分からないことも多いと思うので、いくらでもどんな意見でも歓迎なのでコメント、待っております。









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