第一章 乙女ゲーム編

1.漂流の末に

「ルシエル・ヴァレンシア。聖女リリーナへの数々の嫌がらせ、

及び聖女殺人未遂によりお前を離島への島流しとする。」


私の婚約者でもありこの国の王太子でもある

ハーレック王太子殿下は私にそう告げます。


「承知しました。」


私が素直に罰を受け入れるとそれが予想外だったのか

王太子は私に問いかけた

「では、罪を全て認めるのだな」

「いいえ、私はその様な事は一切しておりません。

しかしながら、私が何を言ってもお聞き入れして頂けない事も理解してます」


「本当に最後まで太々しい性格は治らぬのだな。

聖女リリーナは、お前の処刑を望んだが

仮にも先日まで婚約者だったお前を処刑するのは気が咎める

聖女リリーナに今後近づけない様に魔術契約を施しての島流しは

私のせめてもの慈悲である」


国王殿下がこの国を離れている最中に

仮にも侯爵令嬢の私の処刑は出来ない。


かと言って、国王陛下が戻られて正式に調査されるのもまずいのであろう。

罪人が処罰される様な離島の監獄、よしんば逃げらたとしても

聖女リリーナには近づけないので報復も出来ない

都合の良い落とし所。


つい先日にルシエルに転生した元女子大生の私は諦めていた

王太子の腕に縋り付いている赤色の

胸元がおおきく空いたドレスを着た聖女リリーナ


この世界は、この女のシンデレラストーリーの為の乙女ゲームであろう

少なくとも私はやった事も無く攻略ルートも知らないが

明らかにおかしいハーレムエンド


私が幼い頃から慕っていた義兄も攻略対象

さぞかし気分が良いのだろう、聖女と言うには余りにも品性のない笑い顔で

ニヤニヤこちらを見て笑っている


リリーナは、とことん私を嘲笑いたかったのであろう


魔術契約で彼女に近づけない私を船底にこしらえた独房に放り込み

ハーレムメンバーとバカンスを楽しむ為にリリーナも船で同行した。


その日の嵐により、船は座礁した。

本来、ルシエルが島流しされる島とは別の小さな島へ

私も含めて全員流れ着いた。


想定していなかったサバイバル生活

厳しい生活であるが最低限の命の保証をされた獄坊生活と

自由ではあるが時給自足をして食いつなげ無ければ

生きてさえ行けないサバイバル生活。


本来の貴族の令嬢であればサバイバル生活など出来るはずも無く

数週間ももたずに飢えて死ぬであろう。

だがルシエルは転生者としての知識がある。


また、リリーナが聖女スキルを持っていた様に

ルシエルも特別な能力である鑑定を持っていた。

上手く行けば少なくとも獄坊生活よりはマシであろう。


ただ、リリーナが聖女スキルをもっているか、

ルシエルは疑っている。

僅かの間であるが、不審な噂を何度か聞いたからだ。


だが、女一人での離島生活は力仕事や病気になった際に厳しい

せめてハーレムメンバーで最低限の協力者が欲しい


まず頭に浮かんだのは、

昔は少なくとも私に優しかった

義理兄の現在王国筆頭魔術師であるデュークの事である。

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