第82話 永遠のアイドルだから
「……いいや。とりあえずその話は一旦いいとして」
俺があげたプレゼントを膝の上に置くと、
「今開けていい⁉ 中身めっちゃ気になるんだけど⁉」
開けたくて堪らない双葉は、目を輝かせ体をウズウズとさせる。
「どうぞ開けてくださいよ」
「まず予想してみていい?」
「当てられるのか?」
「頑張る! ……うーんとね」
顎をさすりながら双葉。
プレゼント自体、ありがちな物だから当てやすいとは思うが……
双葉がドンピシャで当てられるとは到底思えない。
予想外、というか変なことを言いそうだ。
「分かった! この箱から想像するにディルドだ!」
ほら、変なことを言った。
「んなわけないだろ」
「だってぇ~、この長細い箱とかそれにしか見えなくない?」
「普通はネックレスとかさ、誰でも想像がつくものを言うだろ」
「ディルドも誰もが想像つくと思うんだけどなぁ」
「誰が一年の記念に大人の玩具を渡すんだよ」
「ネックレスねぇ……そうか、プレゼントはネックレスなのか」
「開けたら分かる」
そう促すと、双葉はプレゼントに手を掛ける。
丁寧にラッピングを剥がすと黒い正方形の箱が姿を現した。
「開けていい?」
「どうぞ」
パカっと箱を開けると、途端に双葉の瞳孔は開き、丸みを帯びる。
「お気に召したか?」
箱の中身に目が釘付けになっている双葉に声を掛けると、
「何これ。ヤバい……このネックレス最高過ぎるんだけど……」
片手で口元を抑えながら、感動で甲高い声を上げる。
「喜んでくれたなら何よりだ」
俺がプレゼントしたネックレスは、天使の羽が模してあるチャームのついたシルバーネックレス。
そのチャームの片方の羽が黒で、もう片方がシルバーになっているのが特徴だ。
これを一目見た瞬間、双葉にふさわしいものだと運命を感じた。
「ねぇねぇ! 早速つけてよ!」
ネックレスを手に取ると、ウキウキな様子で俺に渡してくる。
髪を前に下し俯く双葉に、そっと俺は手を伸ばすし甘い香水が香るうなじへと周り、留め具を付ける。
「うわぁ……マジでヤバい……」
首元に掛けられたネックレスを見て、両手で口を覆う双葉。
「どう? 似合ってる?」
「最高に似合ってる」
「でも、なんで天使の羽なの?」
「悪魔が良かったか?」
「そうじゃなくって、私はもうアイドルを辞めたし『だ天使ちゃん』じゃないから、なんか不思議だなぁーって」
チャームを眺めながら、双葉は小首を傾げる。
確かに、今の双葉には合わないかもしれない。
アイドルを辞めたから、もう『だ天使ちゃん』ではない。
だけど、
「俺の中で双葉はずっとアイドルだから。いつも、どこでも、ずっと輝き続ける永遠のアイドル」
双葉がアイドルだということは俺の中では変わっていない。
それくらいに輝いていて、憧れで、大切な存在だから。
「可児くん……」
照れくさそうに言う俺に、瞳を潤わせる。
「それにこの羽。半分天使で半分堕天使なの。お前みたいだろ?」
「……はぁ。感動して泣きそうだったのにぃ。余計なこと言わないでよね」
照れ隠しに言った言葉に、双葉はムスっと顔をしかめた。
「でもありがと。可児くんの思い、伝わってきたよ」
ぎゅっとチャームを握ると、そのまま俺に抱きつく双葉。
こうして表情や行動に出して喜んでくれるのが双葉のいいところだ。
俺も嬉しくなるし、あげて良かったなと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます