番外編3 流れ星に願いを込めて②【side アリア】
どのくらい二人で夜空を眺めていたのだろうか。
「クシュン!」
ハクタカがくしゃみをした。
私に厚手の毛布を掛けてくれて、自身は薄いブランケットに包まっていたから冷えてしまったのだろう。
「…………」
しばらく迷った末、勇気を出してハクタカにくっつき一緒に包まる様にハクタカと自分の肩に毛布を掛けた。
一人用の毛布に二人で入るのは無理があり。
はみ出てしまった足は寒かったが、くっついた肩と心は何だか泣きたくなるくらい幸せで暖かい。
……とは言え、冬の夜の山はやはり酷く冷える。
「クシュン!!」
今度は私がくしゃみをしてしまい、慌てたハクタカがすぐさま毛布を返してきた。
しばらく毛布の押し付け合いをした後で、
「それで、流れ星に願いは掛けられたのか?」
突然、ハクタカがそんな事を言った。
少し考えて、
「うん……」
下を向いたまま短くそう答える。
何度か流れ星を見ることは出来たが、星が流れ落ちるのは一瞬で、まだ願いをかけるまでには至っていなかった。
でも、出来たとそう言えば、ハクタカは下山を決めるだろう。
自分勝手な願いをかけるよりも、ハクタカが風邪を引かない方がよっぽど大事だ。
そう思って諦めようと思った時だった。
「おいで」
思いがけない程優しい声で、ハクタカがそう言った。
驚いて顔を上げれば、『しょうがないヤツだな』と言う顔をして、ハクタカが座り込んだまま私に向かって手を広げている。
思わぬハクタカの行動にどうしてよいか分からず視線を彷徨わせた。
しばらく迷った末、ハクタカが抱きしめてくれるという誘惑に勝てず、おずおずと身を寄せれば……。
ハクタカが私の事を後ろからギュッと抱きしめる様にして毛布の中に入れてくれた。
「それで、アリアの願いって何なんだ?」
まるで、耳元に口付けられるのではないかと思うくらいの距離でハクタカの優しい声が響く。
「な、内緒」
バクバクしている心臓を手で押さえつつ、なんとかそれだけ返せば、そんな私の気持ちなんて全く知らないハクタカがのんきそうに首を傾げた。
「二人で挑戦すれば、可能性が上がると思ったんだけどなー。まぁ、願いは口に出すと叶わないって言う人もいるしな」
ハクタカの言葉を聞いて思わず呆れてしまった。
流れ星に自分の願いをかけれるという発想は無かったのだろうか?
ハクタカは本当にお人よしだなぁ。
そう思った時だった。
「あっ!!」
ハクタカが突然驚いた声を出した。
彼指さした方を見れば、これまでに見たことのないくらい沢山の星が一斉に降り注いでいる。
結局、
『この先、ハクタカが幸せでありますように』
私はお人よしのハクタカに代わり、繰り返し星に向かってそんな事を祈ったのだった。
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