番外編1 甘い甘い蜂蜜キャンディー【side アリア】
ハクタカは変な人だ。
私と二つしか変わらないと聞くのに、変に老成している。
実際にはもうすぐ二十歳の好青年なのだけど。
まるでお爺ちゃんみたいだと、最近仲良くなった村の子ども達は、皆口をそろえて言う。
そう、ハクタカは良い人だ。
本人は
『便利にこき使われているだけだが?』
なんて言っているけど、優しく困っている人を放っておけないハクタカは、ここにきてまだ日が浅いというのにすっかり村の皆から慕われ頼りにされている。
そんなハクタカには困った所がある。
それは……。
私を犬か何かと勘違いしていることんじゃないかと思うような行動をとる事だ。
約半日、私が仕事で村の外に出ていて夕方になり帰って来た時の事だ。
ハクタカだって疲れていただろうに。
ハクタカが村の門の所までわざわざ私を迎えに来てくれていた。
それが妙に嬉しくて、私がハクタカに手を振った時だ。
ハクタカが
『おかえり』
って言って、私に向かってその手を広げてみせたから。
思わず嬉しくなってその腕の中に飛び込んでしまった。
その後でふと我に返って恥ずかしくて、私は長い事顔があげられなくなったのだけれど。
ハクタカはそんな私の様子になんて全く気が付かない様子で
『頑張ったな』
とその大きな手で優しく頭を撫でたのだった。
夕日が指す時間で良かったと、朱に染まってしまっているであろう顔をハクタカから逸らしながら二人並んで帰路についた時だった。
『頑張った良い子にはご褒美を買ってやろう!』
そう言ってハクタカが不意に私の手を取って歩きだした。
繋がれた指にドキドキしている私の想いなど露知らず、ハクタカは何でもない顔をしてまだ人通りの少なくない村の中をグングン歩いていく。
どこに行くのかと思いきや――
着いた先は村の小さな雑貨屋さんだった。
王都に注文していた物が、ようやく届いたのだとハクタカは言い、小さな包みを私に渡した。
包みを解いてみれば……。
そこにあったのは、蜂蜜を固めたキャンディーだった。
「ありがとう」
ハクタカの瞳と揃いの色をした、宝石の様に美しいキャンディーをギュッと胸に押抱き、そうお礼を言えば。
ハクタカが、贈り物を受け取った私以上に嬉しそうに笑った。
家までの帰り道、ハクタカが、私に向かって繋いでいるのと反対の手の平を私に向けて差し出してみせた。
どうやらハクタカもこのキャンディーを食べたいらしい。
一つとって渡せば、ハクタカが口を開ける仕草をした。
訳の分からぬまま、それにつられて口を開いた時だった。
ハクタカが優しく目を細めて、その飴をそっと私の口の中に押し込んだ。
甘い甘い、甘すぎるくらい甘い蜂蜜の味が口いっぱいに広がる。
「そんな後生大事そうに抱きしめなくても大丈夫だ。失くしたのなら、またいくらでも俺がやる。だから、たまには一つくらい食っとけ」
そう言って、ハクタカは私の口の中に広がる蜂蜜以上に甘く甘く笑って見せたのだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
いつも、応援して下さりありがとうございます。
皆様からポチっと押していただいた応援のお気持ち、取り急ぎ飴にして王都よりアリアに届けておきました( *´艸`)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます