4本目
「あーちゃん……見つかった!!」
息を切らせたまーくんの手には、自分のとわたしの鞄を持っている……まさか、学校から走って?
「どうして先に帰ったんだよ!! なーちゃんも探しているぞ、家にもいないって!!」
「あ……ごめんね」
わたしが勝手に避けたのに二人はわたしを心配して探してくれたんだ……その嬉しさと申し訳なさに胸が痛くなってきた。
「あの……ごめ……あれ?」
これ以上変に思われたくないのに、なぜか涙がこぼれてきた……やだ、泣いちゃ駄目。
「あーちゃん、何があったんだ」
「ちがう、なんでもないの……目にゴミが入ったの」
「だったら手で擦るなよ、まってろよ」
まーくんは二つの鞄をそっと地面に降ろしてわたしに顔を近づける……わっ、ち、ちかいよ!! そんなわたしの焦りを物ともせずにハンカチと目薬を取り出して……ピリピリッと目薬の包装を解きつつ……ハンカチを持った手でわたしの顔に触れた。
「人の目薬って使っちゃ駄目だけど、これは今開けたやつだからな」
何かまーくんが言っているけれどわたしは心臓の音がうるさくて何も聞こえないよ……あ、なんかこれってキスする姿勢に似ていない?
なんてばかーーっっ!! なんで余計な事を考えちゃうの、もういま、まーくんがわたしにキスしようとしているとしか思えなくなってきたじゃない!!
あぁぁぁぁ、お願いだから心臓の音よ~静まってぇ~
わたしはそっと目を閉じて心なしか顎をそっと上げる……そんなわけ無いんだけれどいつでもキスが来てもOKの状態だ。
ポタッっと目に冷たい物が落ちてきて。
みよん! っとわたしの目が上に引っ張られ強制的に目が開かれた。
「こうやって目薬でゴミを押し流す」
ですよね~キスされるわけないよね~ちゃんとわかっていたんだからね。
まーくんは何度も目薬を流して、流れたそれをハンカチでキャッチするを繰り返す。
「どうだあーちゃん、まだ痛いか?」
「ううん、もう大丈夫、ありがと、まーくん」
いつでもわたしを気遣ってくれて、泣いたら一生懸命に助けてくれるまーくん。大好きだよまーくん……きっと今は夕焼けがわたしのほっぺたの色を隠してくれているよね?
まーくんは鞄を持ち上げるとポンポン叩いてからよこしてきた。
「まーくん、ありがとう」
鞄を受け取った後もまーくんが難しそうな顔をしていた。
「あのな、えーとな……男の前で無防備に目を瞑るのは良くないぜ」
「え? でも目薬をしてくれるんだから、ああなっちゃうよね?」
「あーちがう、なんだ、その……とにかく俺以外にあんな事をするなよ!」
「え? どういうこと?」
「いいから行くぞ!! はやくなーちゃんに連絡入れて帰るぞ」
まーくんは早足で歩いて行ってしまう……私の足だとあっという間に置いて行かれちゃう!?
「まってよー、まーくーーん!!」
「またない!!」
ねぇ、まーくん、もしかしてわたしを心配してくれているの? 後ろから見える耳が赤く見えるのは夕日のせいなのかな? もしかして……わたし……希望を持ってもいいのかな?
「ほら、急がないと……!?」
振り返ったまーくんの顔がこわばったと思うと、わたしに向かって飛びついてくる……え?
そのまま、まーくんに抱きかかえられると地面に倒れこむ……膝が痛い!! でもまーくんが下になるように倒れたからそれだけですんだけど。
その途端にバーーーンっと大きな音が聞こえた。
二人で起き上がって振り返るとマンションの塀が倒れていた……もしもまーくんに助けられていなかったらわたしは……
「あーちゃん、大丈夫か!?」
「うん、わたしは平気……でも、まーくんわたしのせいでごめんね、凄いすりむいて血が出てる」
「これくらい平気だよ」
まーくんは笑って見せてくれた。二人とも無事で良かった……でもなんでこんな頑丈そうな塀が倒れるんだろう?
……その時、なぜかわたしはさっき神社でお祈りをした事を思い出した。
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この回でプロローグ終了いけるかと思ったら駄目でした。
※まーちゃん → まーくん に変更しました。 自分で見ても紛らわしかったので……。
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