3-2 親
ニーナ・クシランダー。
勝手にソフィが金髪碧眼の少女の名前を決定したのは数時間前のこと。そんなことからしばらく。というか。現在は同日午後である。
俺はいろいろと復興中の町で作業。そして孤児院の様子見などをそれこそ、唐突に名前が決定したニーナと共に回っていた。
余談だが。ルーナは魔王城の離れでお勉強中である。多分――。
もしかすると、ソフィと未だに言い合いをしている可能性があるが――今のところ魔王城の離れのことはわからないのでおいておこう。
そして現状を説明すると。
「……マジか」
「セルジオお兄ちゃん。本当にみんな知ってたね」
「あー。うん。そうだな――ニーナ」
俺はまだぎこちない感じで金髪碧眼の少女――ニーナに声をかける。そりゃもちろん名前がちゃんとある方が呼んだりするときに大変楽だ。現に今日も孤児院や町中でニーナを呼ぶときは今までよりはるかに呼びやすかった。
今までだと、なんと呼べば――で。結局目が合うまで待つこともしばしばだったが。今日はそのようなことはなかった。
というかだ。
俺が町中でニーナと呼んでいると。
「おお、やっとまとまったのか」
「これでセルジオのところの子からは卒業だな」
「ソフィさんが待っててくれ言っていたけど、なんだったんだ?」
「ニーナちゃんかわいいじゃない。ルーナ様となんか似ているし」
「ニーナちゃん」
町の人は何か制限が解除されたかのように金髪碧眼の少女。ニーナのことを名前で呼ぶようになった。
その光景はなかなかのインパクト。衝撃だった。まさかみんな本当に知っているとは――だったからだ。
俺とニーナは魔王城の離れ。ルーナたちと別れた後。話しながら町の方へとやってきた。その際に『ソフィが言っていたことは――でたらめの可能性もあるかな』『私本当に何も知らないよ?聞いてないよ?』『わかってるわかってる。ソフィのことに関しては――今に始まったことじゃないから』などと、俺とニーナはそんな会話をしながら町へとやって来ていた。
簡単に言えば、ソフィの言っていたことを信じていなかったので。あれは適当に――などと思っていたのだが。町に着いたら、それはそれはあっという間に、事実だったと知ることになったのだった。
ソフィやはり彼女は謎が多すぎるというか――はっきり言って怖い。味方だとは思うが。実は敵でした――と言われても何ら不思議ではないような感じがしていた俺だった。
とまあそんな驚きとともにとりあえずニーナと共にいつも通り作業などをしてきた後は、魔王城の離れの方へと戻った。
ちなみにさすがにルーナとソフィが言い合いをまだしているということはなく。ルーナは何やらぶつぶつ言いつつも勉強をしていたらしい。それは帰ってきたすぐにあったソフィが教えてくれた。
そしてその後またいつもの通り俺は食事の準備などをして――夕食時のこと。
「セルジオ様どうでした?ちゃんと広まっていましたよね?」
「びっくりするぐらい広まってました」
「本当になの!?」
食事をしつつ各自の情報共有ではないが。ソフィに話しかけられたので、話していると、それを聞いていたルーナが驚いていた。まあ驚くだろう。ルーナも俺たちよりかは少なくとも、町にはちょくちょく出ていた。そしてその際付いてきていたニーナはセルジオのところの子などと呼ばれていたので、全く予想ができないのだろう。俺もできていなかったし。あれはマジで驚いた。
「本当ですね。普通にみんなソフィさんに言われていたとか――」
「さすが皆様」
「――ソフィがボスみたいで怖いんだけど――」
ルーナのつぶやきに俺とニーナが頷いた。
「まあまあ褒めても何も出ませんよ?」
「褒めてないわよ!」
そしてソフィはご機嫌な感じ。してやったではないだろうが。そんなことをつぶやき。またルーナと何やら言い合いが――と、思ったら。
「ところで、もう少し話しておきますが。今のところニーナ様はセルジオ様の家族となっております」
「えっ――あー、まあそうなるのか?って――いいのかな?」
「――セルジオお兄ちゃんと――家族?」
確かに俺がニーナを助けてから基本同じ部屋で過ごしていたし。行動も共にしていて、血は繋がっていなくとも、家族と呼んでも問題ないような感じだったが――いきなりそのようなことを言われても。はいそうですか。とはならなかった。もちろんニーナも少し戸惑い気味。
そしてだ。一番取り乱したのは――。
「ちょっと!いきなりセルジオと家族ってどういうこと!?」
何故かルーナだった。
そんなルーナの反応を見たソフィはというと。
「まあまあ自分が家族になれなかったから怒っちゃって――まあ、ルーナ様は横取りされたと。ルーナ様残念」
「ソフィは黙る!って、何が残念よ!」
何やら楽しそうにそんなことを――って、本当に何を言っているか。などと俺が思っていると。
「まあルーナ様のお馬鹿な発言は置いておきまして」
「ちょっと!?」
ソフィがぴしっとしてからまた話し出した。まるでルーナは居ないものと考えているかのように。または見えない物に一瞬でいたかのように、相手をすることをやめて、俺とニーナをソフィが見てきた。
近くでルーナが騒いでいるが――無視らしい。
「正確に言うとまあ勝手に作った家族です」
「勝手――というのは。ですが、ソフィさんが決めたですよね」
「です。なので――いっそのこと結婚しちゃいますか?本当は親でもいいかと思ったのですが――どうせならいけるところまで――」
「「「はい!?」」」
爆弾発言が次々落ちてきそうな雰囲気――と、俺が思う前に。いや、なんとなくそんな感じはあったんだよ。ソフィがぴしっとして話し出すと――ニーナの名前発表みたいにさ。とんでもないことが――だったが。まさかの本当にまた飛んでもないことを言い出したため。俺と、ルーナ、そしてニーナも驚いたのだった。
「ソフィ!?あなた何を勝手にどんどん話してるの!」
「ルーナ様が全くセルジオ様とくっつかないので?」
「な、何を言って!」
「まあということで、セルジオ様どうします?」
「いやいや、ソフィさん。ということで――というのか、いろいろおかしかったかと」
「えっと――セルジオお兄ちゃんと――結婚?」
「ニーナ。変なこと考えなくていいぞ」
「まあまあ、でもセルジオ様。ニーナ様を守るためにはそういうことも考えておいた方がよいのでは?」
「守るって――そこまでしなくても」
「形があるのは何かの時に役立つかもしれませんよ?たとえばニーナ様がどこぞやの王女様などでしたら――それはそれは。セルジオ様が一気にランクアップ――」
「いや、それはさすがに――って、そもそもこんな幼い子に対して」
ソフィがぶっ飛んでいるのはもう慣れた。いつものことなので、俺はソフィと話しつつ。あまりソフィを見ていると、いろいろ巻き込まれそうだったので、隣のニーナを見た。ニーナはというと少し恥ずかしそうにおろおろそして――今はぶつぶつ何か言っている状態となっていたが、こちらを見ていたので目が合った。
まあ幼い?ニーナでもこういう話はなんとなく分かるというか。混乱するよな。などと俺が思っていると。1人取り乱していたではないが。騒いでいたルーナが再度机を叩きながら。叫んだ。
バンバン。
「そんなこと私が許さないからね!セルジオは――私が雇ったの!」
「いえいえ私が雇いました」
「――で、でも、私のお世話――」
「子守の間違いですね」
「子守!?」
そしてソフィと何やら言い合いがまた始まったのだが。
「……求人票ってなんて書いてあったっけ?」
そんな光景。騒ぎには巻き込まれたくなかった俺はふとそんなことをつぶやいていた。すると――。
「ソフィ。そもそもね。こんな幼い子を勝手に結婚とかおかしいから」
「いえいえ、そんなことありません。どこの国でも幼くして嫁ぐ方はたくさんいらっしゃいます。そして、そもそもですが――ニーナ様とルーナ様。年はほとんど変わりませんよ?ちょっとニーナ様が幼く見えるだけで」
「「――えっ!?」」
ソフィがまたとんでもないことを――って、ちょっと待て、なんでソフィはそんなことがわかるんだ?確かニーナは記憶が――と、俺は話をちゃんと聞いていなかったので突っ込むことができなかったが。頭の中で何やら情報がいろいろ――って、ルーナとニーナの年が近い?いやいやいやいやいや。
とにかくそれだけはありえないだろうとニーナを見つつ思う俺だった。明らかにニーナの方が幼いはずだ。一回りとまでは――だが。でもルーナとニーナが並んだら――あれ?そういえば2人が並ぶことってあまりなかったが――よくよく考えると身長とかは同じ――って、ルーナがそもそもあまり身長が高くない。でもなんだろう?あっ。そうかニーナの話方というのか。雰囲気だな。おそるおそるが抜けないというか。いきなりこんなところで生活を余儀なくされたので、おろおろ?とにかく、ルーナは基本ハキハキ。ニーナは抑え気味――だったので、なんとなくニーナの方が子供――と勝手に思っていたが。
えっ?ソフィの言う通りルーナとニーナって――と、思いつつ2人を見比べる俺だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます