子守り係
6-1 空を操る者
ヴアイゼインゼルで暮らす時期魔王のルーナの身に危機?があってから数日。あれを危機と言っていいのかは微妙だが。一応命を狙われたので、危機でいいだろう。
なお、ヴアイゼインゼルの町の人はそんなことがあったことなど知らないため。町はいつも通りだった。
そして、もちろんルーナもあの出来事は怖かっただろうが。気にしていたのはその日だけ。その時だけだ。翌日からはけろっとしていていつも通りだった。ヴアイゼインゼルの町の方へも変わらず足を運んでいたし。夜の練習も欠かしていない。
そもそもだが。俺とルーナは襲撃?されたことより。『ソフィが一番怖い』というのが一番印象に残っていた。あの後意見も一致したよ。『ソフィを敵に回したらヤバいとね』。
そもそも俺は魔術が使えないので、絶対敵対しませんだし。
魔術が使えるようになったルーナですら『あんな化け物に喧嘩売ったら死ぬ』と、言っていたな。って、そうそう、運の悪いことにそれをソフィに聞かれていて『さあ特訓ですよ。今日は私が相手をしましょう』などと言いながらノリノリでソフィが登場し。しばらくの間風の魔術でルーナをいじめていたからな。
――何が行われていたかは俺は……詳しくは言えないな。特訓というよりいじめ――風の魔術とルーナはいつも通りの服装だったとだけ言っておこう。
とりあえずルーナの叫び声がしばらくの間聞こえていたのだった。
ちなみに怪しい奴らはあれ以来見ていない。この魔王城の離れは誰も来ない。いつも通りの時間が流れていた。
そりゃ、ソフィ曰く。『丸焦げになったでしょう』だったからな。あの怪しい奴ら――相手が悪かったよ。俺だけなら圧勝だっただろうが。
そうそう話を少し変えるが。ルーナは魔術の練習を頑張っている。今では中級も少しずつ安定というところまで来ている。
そして、なぜか俺も魔術がそろそろ使えるのではないかとソフィが何度も声をかけてくるという日々が続いている。
俺の状況を先に言っておくと、全く発動せずだがね。でもなぜかソフィは『この前ルーナ様とセルジオ様が抱きついておられましたからね。何か起こってもいいのですが――』などと言っていた。いやいや、そんなことで魔術が発動するようになったらびっくりですよ。というような返事を俺何度したことか。
でも確かにルーナは突然。魔術が発動するようになった。そのきっかけは俺のとの――間接キス?いや、ホントそれがきっかけなの?だが――これしか理由らしき理由がない。
なお抱きあっただけではもちろん俺は何も変化なしだったが。
おっと、少し過去の事を頭の中で整理していたらソフィがやってきた。
★
「セルジオ様。魔術は発動しませんか?」
それしか聞くことないのですかね?というレベルで今日も何回目だろうか……でもここで下手なことを言うと俺には死しか待っていないので、いつも通りの返事をする。
「いつも通り何もできない人間です」
「うーん。おかしいですね。そろそろセルジオ様も何かあっていいと思うのですが――セルジオ様はもっと強い刺激がないといけないのでしょうか?」
「いや、ソフィさん。使えない人もいるってことかと……」
「やはりここは――誰かと肉体関係を持ちませんか?」
「どうしていつもその話になるのでしょうか?」
この話題も1日に数回聞く。それもソフィは至って真面目に――すると。そのタイミングで部屋からルーナが出てきた。そして俺たちに声をかけてきた。
「ちょっと、セルジオは私の雑用係なんだから。傍に居いること。勝手に誰かの所行かない。魔術教えてもらえないじゃん」
少し怒っている?いや、ルーナ。俺は雑用係やめる予定ないですよ?ここ意外に行くところないですし。って、ソフィがいろいろ言うから――と、俺が思った瞬間だった。
「だそうですよ?セルジオ様?夜な夜な襲ってくれとルーナ様がおっしゃってますよ?」
ソフィが楽しそうに俺に話しかけてきた。って。
「「何故にそうなるの!?」」
「――ハモりましたねー」
唐突なことだったが。俺とルーナは同じタイミングで同じことをいいながらソフィを見たのだった。
「やはりお2人は相性がよろしいのでしょう。どうです?昼から盛大に――」
「ソフィ!?」
「――俺――掃除でもしてきましょうかね」
「あっ。セルジオ。私も手伝う」
「まあまあルーナ様が積極的に2人っきりになろうと――」
「違うからね!?ソフィから離れるためだから」
「それを2人っきりと」
「違うって言ってるでしょうが!」
「鍵のかかる部屋でもお作りしましょうか?あっ。地下室もよろしいかと」
「ちょっと表出ろー」
「よろしいでしょう」
「――しまったー」
「……」
今日も一言多かったルーナ……かな?その後ソフィに引っ張られるように外へと連れて行かれたルーナは――ボロボロで1人で歩くこともできないくらい疲れるまでソフィの攻撃を受けたのだった。
俺?室内の掃除頑張りました。これもここ数日よくあること。
★
そんなこんなでいろいろありつつも日々は過ぎていき――。
「うわっ!?」
ある日。ルーナが魔術を使うと――魔王城の離れ上空の天気が変わっていった。ちなみにできると思っていなかった本人は驚きの声をあげつつ自分の魔術を見ている所だ。
「おお」
「これは――空の力ですね。それも――なかなか的確に範囲を指定までしていますね」
ちなみにその魔術を見ていた俺とソフィも驚いていた。
何が起こったかというと。今ソフィが少し話していたが。ルーナが天候。天気、気象を操ることに成功したのだ。
これは空の力となるのだが。自分の思うように天候まで操るのはなかなかの知識。技術が必要なので、魔術が使えるようになったルーナでも始めはなかなかうまくいっていなかったのだが。今日。初めて成功した。というか。本来空の力は大雑把に――という感じなのだが。今のルーナは自分が思うように。思ったところだけ天気を操った。つまり――。
「これ――上級魔術――?」
ぼそりと俺がつぶやくと。さすがにソフィも驚きつつ答えてくれた。
「ですね。それも――上級以上かもしれません。ここまで的確に指定した範囲だけ天気を変えるとは――魔王様でも難しいことですよ」
「……ですよね。俺も知識としてあったのをルーナ様に教えましたが。これってある意味脅威じゃないですか?」
「そうなりますね。自分の意図する場所の天気を変えられる――と、言うことですから、良いことにも悪いことにも使えますね」
答えるソフィもまだ驚いた表情をしつつ空を見上げていた。
ちなみに今日の魔王城の離れ上空は先ほどまでは曇りだった。しかし今は快晴。魔王城の離れ上空だけが快晴となっている。
もしヴアイゼインゼルの人が今の状況に気が付いたら何事かと見に来るかもしれない。
余談だが。上級魔術を普通にぶっ放すソフィでも、空の力だけは使えないらしい。あれ?これ前にも言ったか。とりあえず珍しいことということだ。
「ちょ、これ私がやったの?」
「「です」」
自分がしたことに驚きつつ聞いてきたルーナに俺とソフィが同時に返事をした。なお、維持するというのは難しいらしく。少しするとまた周りから雲に魔王城の離れ上空も覆われたのだった。
とにかくだ。ルーナの成長が著しい。
「この空の力――ルーナ様の強みになるかもしれません」
「と、言いますと?」
室内へと戻った後、ソフィが俺に話しかけてきた。
「セルジオ様今後は集中的にルーナ様に空の魔術を」
「えっ?空――だけですか?」
「天気を正確に操れるということは、この魔界の土地でも良い農作物が作れるようになったり。生活が豊かになる可能性があります。また――町を守ることもできます」
「――あっ。なるほど」
ソフィに言われて気が付いた。天気を操れる。それは農作物を作る場合天候に関しては運のようなものだが。魔術である程度操ることが出来れば――また、水などが少ないところで雨を降らせることが出来れば、その土地を潤わすこともでき。もし以前のような襲撃。いや、それ以上の規模の何かが起こっても、魔術で嵐などを起こすことが出来れば――。
「って、ソフィさん」
「はい。何でしょうか?」
「これ――もしルーナ様が自在に操れるようになると――良いことももですが。ホント悪いことにも――」
「です。なのでしっかりとルーナ様に首輪でもしてしつけてください」
「――あの。ソフィさん。その言い方は――」
「大丈夫です」
「いや――」
多分怒る。もしこの会話をルーナが聞いていたら――揉めるだろう。でも確かにルーナが悪いように使うとは思えないが。そういうこともちゃんと教えないといけないだろう。
そして、その日からルーナは空に関しての魔術を徹底的に覚えることになったのだった。
★
それからまたしばらく。その日は、朝早くからソフィが魔王城へと出かけていたので、俺とルーナだけだった。
「ソフィがいないと快適ー」
そして今は、いつも通り。ヴアイゼインゼルの町中をルーナとともに俺は歩いていた。本当は何かあると――だったが。ここ最近のルーナの成長と。ヴアイゼインゼルの町の人もルーナと交流が増え。もしもの時は助けてくれるだろうという関係まできていたので、ここ最近はソフィが不在の時でもルーナはヴアイゼインゼルの町に出るようになっていた。
「ソフィが居るとぶらぶらできないんだよ。あっ、こんにちはー。おじさん!何かおいしそうなもの手に入ってる?」
「そう。それでさ。馬鹿みたいに私をいじめてくるの」
ちなみに――いろいろソフィの愚痴を町の人に先ほどから話しているが。ルーナよ。ルーナよりソフィの方が町の人とのつながりが強いと思うので、愚痴はソフィに届く可能性があると思うのだが――と、思いつつも何も言えない俺だった。
下手に口を挟んで、ルーナがご機嫌斜めになってもなのでね。俺死んでしまう。
何故なら、ルーナの魔術は着実に強く。特に空に関しては元々得意?な分類だったのか。今では中級。大雑把に天気を操るというのはおちゃのこさいさいとなっており。上級も少しの範囲なら。というところまでレベルアップしているので――俺に勝ち目なしである。雷でも落とされたら終わりである。そりゃさすがにそこまではまだ――だが。できなくないかもしれないいのでね。
ちなみに空を操る力に関しては本当にすごいことで、ルーナが次期魔王というのを皆が信じる。いや、認めることになるだろう。今のところ事故があってもなので、ヴアイゼインゼルの町中では空の魔術はルーナ使っていないが。
「あっ、ルーナ様。見てみて、家で野菜取れたんだよ」
俺がいろいろ考えていると、今度は野菜を持った女の子とルーナが話し出していた。平和な光景だ。多分それは俺以外にも周りに居る町の人も感じているだろう。
次期魔王様。頑張っています。
――と、平和のまま時が進めばよかったのだが……。
――ドゴン!ドゴン!
「「「「!?!?」」」」
突如として地響き。そして、俺たちの耳に激しい魔術。攻撃のぶつかる音が聞こえてきたのだった。
もちろんその場に居た人の多くが一瞬何が起こったのかはわからなかった。
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