第129話 大迷宮ムトゥンガ
「出発進行わん!」
「きゅっ、きゅー!」」「しゃっ、しゃーく!」
二十人近い人数を乗せてドラゴンボートが湖面に滑り出す。
両脇に手漕ぎ用のオールが付いてはいるが、どうやら実際に漕ぐ必要は無いようでちょっと安心した。なお、舵を取る必要もないみたいだ。
◯[あ、流石に一瞬で着くわけじゃないんだ]
▽[アンメモ、移動関連のリアルはある意味クソゲーだからな]
∴[それでも竜車とかが解放されて大分マシになったよね]
「あ、竜車使えるようになったんだ。ということは、ルーダン魔王国との行き来が完全に解放されたわん?」
迷い宿を発端としたエピッククエスト『大迷宮時代』に
うん、予想外のイベント盛りだくさんすぎて他のプレイヤーの状況を気にする余裕がなかった。
◎[ラナからロコノオまでは竜車の定期便による路線ができて大分マシになった]
∪[完全に新規のユーザーも入ってきだして利便性も求められてるかな]
∈[その新規ユーザーも多すぎて登録待ちが捌ききれてないみたいにゃ]
ゆったりと進むドラゴンボート。
「そう言えば完全新規ユーザーも入ってきてるんだったわん。ボクのとこにはこないからすっかり忘れてたわん……」
◆[完全新規ユーザー参入タイミングでルーダン魔王国のロコノオ城下街を初期地点に選べるようにはなったけどね]
▽[今回もランダム初期地点の復活とわん太王国は選べず]
◯[ランダム初期地点は……、結局生存者はわん太のみだし……]
「生存者……。ところで、クリスマスイベントとかはないわん?」
◯[あっ……、気づいてしまいました?]
∈[新規ユーザーが登録待ちだからおっきいイベントはないにゃ 。ちっさいのは始まってるにゃ]
◆[積雪のあるフィールドにスノーマン、雪だるま、雪大福のイベントモンスターが出現する]
「ほーん、積雪? こっち、雪ふってないわん! それに、雪大福? 雪うさぎではないわん?」
公式の案内を見ると確かに冬のイベントモンスター出現情報がある。
大きな雪玉が三つ重なった『スノーマン』、二つ重なった『雪だるま』。
それに、葉っぱの耳を生やした雪玉の雪うさぎ、ではなく『雪大福』。
◯[おまいう案件で草。昔、適当に名前を付けたワンコがいたらしいよ]
◆[正式バージョン以降、モンスター名のデフォルトが付くようになったしなぁ]
∴[実はウィキの方から修正案を出せる機能は残っている]
「え、あー、そう言えばおいしそーだなーと、いえ、記憶にございませんわん」
「わん太殿、それは貴族な方々が良く言われる誤魔化し方ですな。次は執事がやりました、とか言うのです」
「ふふ、わん太様は誤魔化し方が下手ですわね。お母様に言い訳をしているお父様みたいですわ」
リスナーとのやり取りを覗いていたキャンベルさんと
「そ、それはおいといて、このボートいつ頃ムトゥンガ遺跡に着くわん?」
「このペースなら夜になる頃には着くかもしれんな。普通だと数日、いや、十日程はかかりかねんから、ゆっくり進んでいるようで恐ろしく早いぞ」
確かにドラゴンボートは川面を滑るように揺れもせずに進んでいる。川幅が広く景色の変化がわかりにくかったから気づかなかったが、かなりスピードが出ていた。
「レヴィさんはムトゥンガ遺跡に入ったことがあるわん?」
「うーん、しっかりとは覚えておらんのだ。ふんわりと思い出される風景がムトゥンガ遺跡であるならば入ったことがあるのだろう」
「転移ポータル、あ、トゥアタヒ村の聖域の丸いやつが遺跡にあるって言ってたよね? もう少し詳しく教えて欲しいわん」
「断片的な記憶だが、その転移ポータルから何かが出てきたような気がする。そして、我は逃げた……、逃げた?」
何かを思い出そうとしたレヴィさんは、自身が口にした言葉に愕然として頭を振った。
「えーと、無理して思い出そうとしなくていいわん」
「そうですよ、そのうち姉御の記憶も戻りますって。案外、遺跡に入ったら全部思い出すかもしれませんよ」
『眉無し団』の一人がそう言ってレヴィさんに水袋を渡す。
ちなみに『眉無し団』は獣人で構成されている探索者パーティで、みんなが眉に当たる部分を剃っている。多分何らかの理由があるのだろうが、ボクの眉を剃ることになっても困るので、その話題には触れないでいる。
「ムトゥンガ遺跡に『魔槍スクイド』あるっすかねぇ」
段々と暗くなり、川面に映る夕焼けを見つめながら
『魔槍スクイド』はフェニック王家に伝わる魔槍だが、ムトゥンガ遺跡攻略で失われたとされている。なお、一般には王家によるムトゥンガ遺跡攻略自体が伏せられており、『大異変』で失われたとなっているらしい。
「
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