第2話 キャンプ地

 世界の広さにひとしきり黄昏れたわけだが、そろそろ拠点について考える必要がある。

このゲームでは、ログアウトをするにも安全地帯セーフティエリアが必要になるのだ。


「ここをキャンプ地とする!」


◯[おやくそくw]

◇〚まだ、一歩も移動してないのにキャンプ〛

◎[いま来た。なにしてるの?]


「今北さん、こんばんわん。

簡単に説明すると、勇者わん太が悪の大魔王を倒して世界は平和になった。

そして、新たな世界を求めてレベル1に戻って旅立つところ。

詳しくはアーカイブ前の話を見てね」


◎[おk,はあくしました]

❤〚勇者さま~〛

▽[大草原www]


キャンプ地宣言はネタなだけではなく、実際にキャンプ地設定となる。

ジェスチャー機能によってキャンプ道具が展開、設置されるのだ。

そして、キャンプ周辺は安全地帯セーフティエリアとなる。

「大自然の中で焚き火にあたるのも良いよね」

串に刺したマシュマロを火で炙る。


△〚うまそう〛

◯[まだなにもしてないw]

◎[バトルは?]


「バトルというけどね、君たち周り見えてる?」

リスナーのみんなに見えるように遠くを見渡す。


△〚あー〛

❤〚恐竜?〛

◯[とてつもなくでかいモンスターが見えますね]


そう、かなり離れているのにでかい恐竜のようなモンスターが居るのだ。

そして、その周りにも狼のような群れをなしたモンスターも見える。


「このマップ難易度高すぎない?

ボク、まだレベル1なんだけど」


◇[このゲームは街から離れるごとにモンスターが強くなる仕様]

◎[つまり?]

◇[こんな辺境の地ではモンスターげきつよw]


「詰んだー!」

思わず絶叫した。


❤〚なんとかならない?〛

◇[人里をさがすとか]

▽[スタート地点ランダムだから、たぶん、はじまりの街からは大分遠い]


「そうだ、街がないなら造ればいいじゃないか」

街を造れば近くのモンスターは弱くなるはずだ。


そうと決まればやるしかない。


「ここを『わん太王国』とする!」


串に刺したマシュマロを掲げて声高に宣言する。


◎[おー]

❤〚移住しまーす〛

◯[建国は草w]


―― プレーヤーによる初めての建国が確認されました。

  以降、特定の条件下において建国を行うことができます。


◯[ふぁっ!]

◎[えっ、建国? できたの]

△〚なに、いまの〛

◇[ワールドアナウンス初めて聞いたよ]


リスナーと世界に混乱をもたらしつつも盛況のうちに配信は終了した。



―― 本日の配信は終了しました……

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