超レア&強力スキル【剣聖】を手に入れた少女、実家から追放された少女を誘い、勇者を目指します!~剣聖スキルが強すぎちゃって無双!? 仮に追放少女の才能が開花されても、他のパーティには渡さない!~

琴珠

第1章

1.剣聖となった少女は、実家を追い出された少女をパーティに誘う

「は……? 私の子には……スキルが備わっていないですって……!?」


 スキル、それは人間誰もが生まれつきその身に宿す能力の事である。

 1人に1つ、必ず、この地に生まれた時にその身に宿す……と言われている。

 13歳になると、儀式によりそのロックを外す事ができるようになる。

 その儀式は本日も教会で行われていた。


「ありえないわ! 一体今まで何の為に育ててきたと思ってるの……!?」

「ご、ごめんなさい」

「ごめんなさいじゃないわよ! 当たりスキルを獲得して、勇者になってくれるんじゃなかったの!? お金持ちにしてくれるんじゃなかったの!?」


 この黒髪セミロングの少女、スキル無しらしい。

 周囲の人間、皆驚いている。

 スキル無しという前例がないのだ。

 無理もないのかもしれない


 そしてこの少女は、どうやら、良いスキルを取って、勇者になるべく教育されてきたようだ。

 会話からそれが伺えた。

 事実、母親らしき人物に、キレ気味に怒鳴られていた。


(あの子……っていけないいけない、次は私の番だ)


 続いてスキルのアンロックが行われるのは、紫色の髪をした、ポニーテールの少女だ。

 名前は、“コスモ”。


 一体どのようなスキルがその身に宿っているのだろうか?


 順番が来たので、コスモは神官の目の前に立つ。

 これから、コスモはスキルを獲得する。


「あなたのスキルは……おお! こ、これは……! 凄いです! 【剣聖】です!」


 辺りがざわつく。

 それもそうだ、【剣聖】と言ったら、勇者に相応しいスキルだからだ。


「私が……剣聖!?」


 コスモ本人が一番驚いていた。


「もっと早くに来ておけば良かった!」


 コスモは現在16歳だ。

 13歳になれば、スキルのアンロックが可能なだけで、義務はないのだ。

 コスモは外れスキル持ちだという現実を見たくなかった為、現実逃避として、今までここに来なかったのだ。

 だがその不安こそが杞憂きゆうであった。

 実際はかなりの当たりスキル、【剣聖】だったのだ。


「凄い! あの人、私に無い物を持ってる! 私が欲しかったもの、けれどもう手に入らない物を持ってる!」


 黒髪の少女が目を輝かせ、コスモを見る。

 嫉妬心などは無さそうで、純粋に憧れの眼差しでコスモを見る。

 そんな少女の反応を見て、母親らしき人物はキレた。


「そうね。あんたにはもう手に入らない物を持ってるわね。あーあ、本当にあーあ、あーあ……あーあ……ぐぬあああああああ!! どうしてくれるんだああああああああああああああああああ!! こんちくしょうがあああああああああああああああああああああ!!」

「ひっ!?」


 黒髪の少女の母親らしき人物は、少女にビンタを食らわせようと、大きく振りかぶった。

 だが、その平手は少女に当たらなかった。


「失礼!」

「!?」


 一瞬だった。

 一瞬の内に、コスモが移動し、振り下ろされるはずだったその腕を掴み、止めていたのだ。

 そのあまりの速さに、周囲の人々は拍手を送る。


「少し話を聞かせて貰いましたけど、本来であればこの子は勇者になる為に、旅立つ予定だったようですね?」

「そ、そうよ! けど、もうどうでもいいわ! スキル無しの役立たずだ何て、勇者はおろか、それ以前にまともな冒険者にもなれやしないわよ!」


 コスモは必死で笑いをこらえる。


(駄目よ。まだ堪えるのよ)


 コスモは言う。


「では、そちらの娘さんを私にください!」

「え?」


 母親の方は驚きの表所、そして、少女の方は顔を赤らめながら、困惑していた。


「何!? この駄目な娘にプロポーズでもする気!?」

「おっと、勘違いさせて、すみません! 先程見て頂いたように、私はスキル【剣聖】を取得しました。これにより、努力義務として魔王を倒しに行く事になります。ですが、私に、パーティを組めるような仲間はいません! という事で、娘さんを私にください!」


 パーティを組める仲間がいないのは事実だ。

 コスモには、友達の1人もいないのだ。 


「ああ、そういう意味ね。勝手にしなさい。そのかわり、返却は受け付けないわよ」

「ありがとうございます! では……行こう!」


 コスモは少女の手を引っ張る。


「あ、ちょっ!」


 強引に手を引き、人通りの少ない大きな木の陰へとやって来た。

 ここは日向ひなたぼっこをするのに丁度良く、コスモお気に入りの場所なのだ。


「ふふ……ふふふふふ……あーっはっはっは!!」


 すると、コスモは突然大きな声で笑った。


「え、えっと」


 困惑する少女。

 突然知らない人に連れられたと思ったら、その人が笑い出したのだ。

 無理もないのかもしれない。

 だが、コスモは上手くいきすぎて笑うしか無かったのである。


「ごめん。ついつい笑ってしまった。あなた名前は? 私はコスモ」

「わ、私ですか? 私の名前はユリです」

「分かったわ、ユリ、これから宜しくね!」

「あ、はい。えーと……」


 コスモは察する。


「ユリは知りたいんだね? なぜ私があなたをパーティに誘ったのかを」

「あ、まぁ、そうです。ちょっと戸惑っちゃいまして……」


 オドオドしているユリに対し、コスモは自信に満ちた表情で答える。


「一言で答えるならば……ユリ、あなたがとんでもない素質を秘めた人物だから! 私の予想だけどね!」

「素質……ですか?」

「だっておかしいと思わない? スキルが宿って無かったって、そんなこと今まであった?」

「ありませんでした……」

「でしょ? けど、それって不自然だと思わない?」


 コスモはユリをビシッと指差す。


「私はこう考える! おそらく、ユリは超大器晩成型! つまり、人より少し遅れている代わりに、物凄い能力を秘めているって事よ!」

「そうですか……?」

「そうよ! 私が保証するわ! もし、あなたが正真正銘のスキル無しだったら、私が責任を取る! その代わり、今は私のパーティメンバーになる事! どう?」


 そうコスモが言うと……。


「せ、責任ってどうやって取るんですか……?」

「そうだねぇ」


 特に考え無しに言ってしまった。

 だが、根拠のない自信がコスモの中にはあった。

 ユリが正真正銘のスキル無しではないという自信が。

 それに、【剣聖】のスキルならば、大金を得ることは容易だろう。

 魔王を倒せでもしたら、それこそ一生金には困らないだろう。


「もし、本当にスキル無しだったら、私がユリを一生養うわ!」

「え、えええええええええ!?」


 ユリは顔を真っ赤にし、絶叫するのであった。

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