イワトビーの長老 -8-
「やっぱり、おまえだったんだな、イワオ。全部、おまえのせいだったんだな。最初、おまえは妙に俺様に馴れ馴れしくて、親切だった。子供はみんな、俺様を遠巻きにして見ていたのに、おまえだけはやさしかった。気づくべきだったよ。理由もなく近づいてくる奴には、なにか魂胆があるってことをよ」
「ペギー、すべてわたしが悪かったです。すみませんでした。申し訳ありませんでした。もう二度としません。許してくれとは言いません。どうか、その怒りはわたしだけに向けて、他のイワトビーたちを攻撃するのはやめてください。悪者はわたしだけです。どうか、気のすむまで殴ってください」
イワオは頭を雪地にこすりつけんばかりに、土下座していた。
すぐに粉雪がイワオの頭に、背中に、静かに降り積もっている。
「うるせーんだよ! お前の言うことなんか聞かねえよ! 物心ついたときから同じ黒いペンギンは誰もいねえ、一羽ぼっち、けどここで生きていくしかねえって、ギリギリの心で踏ん張ってた俺様を、おまえは味方の振りをしながら、裏で毎日毎日俺様を仲間外れにし、いじめ倒し、最後には命まで奪おうとしたんだ! そんなお前を許せるはずがねえじゃねえか!」
イワオの背中目がけて、ソニックブームが飛んできた。
なんとなく大きな黒いカラスが、両翼を羽ばたかすと結構な風力だ。
「……」
だがそこは、若い青年イワトビーのイワオ。
でっぷりと太ったお腹もあるし、さらに土下座までしてしまうと重心が下がり、実は魔法でガードなんかしなくとも、飛んでいきやしない。
土下座でお腹も頭も隠しているから、ちょっとピッピッと背中や羽に切り傷ができるくらいで、後で舐めときゃ直る。
「バカな奴め! 背中がガラ空きだ!」
チッと舌を鳴らしながらブラックペギーが上空に飛び上がると、イワオの丸い背中目がけて、鋭い爪をむき出しにし、襲い掛かっていった。
二羽の因縁。
いつかはぶつかるときがくる。それが今だ。
もう、わしは間に入らんぞ。あやつらだけで解決せねばならんときがやってきたのだ。
にしても、顔から下は立派なカラスなのに、飛んだら頭の大きなコブだけがゆらゆらと揺れて、いつ見ても不格好な飛び方だな。せっかくの緊張感ある場面が台無しだ。
と、長老は一羽静かに思っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます