第24話 絋 33歳 看護師

外気温36℃、茹だるような暑さ。

7月も中旬に差し掛かり、今まで経験したことのない暑さを感じていた。


都会のアスファルトから照り返しの熱。

絶え間なく走る車の排気ガス。

赤の他人が肩を寄せ合う満員電車。


仕事場に向かう途中の駅構内で、太郎は、気を失った。



太郎「ここは、、、どこだ?」


腕の辺りから、管が繋がれていた。

どうやら点滴をされているようだ。

ベットの上で横になって白い天井を見上げていた。


太郎「ここは、病院か?」


60代くらいの男性が部屋に入ってきて具合は、どうか?と尋ねてきた。

ドクターのようだ。


太郎「僕は、、どうしたんですか?」

ドクター「熱中症だね、駅で倒れて搬送されたんだよ」

太郎「そうでしたか、、、ご迷惑おかけしました」

ドクター「1日、様子見ようかね?異常なければ明日、帰れるよ」

太郎「ありがとうございました」


太郎にとって都会に来て、初めての夏だった。

息の詰まるような暑さを経験して、まさか自分が搬送されるとは、思ってもみなかった。

身体の、けだるさもあり、只々、ボーっと白い天井を見上げていた。


看護師「点滴おわりましたかね?具合は、どうですかー?」

女性の看護師が点滴の終わり時間に、様子を伺いに来た。


太郎「はい、大丈夫です」


看護師「それでは、点滴とりますねー」

太郎の腕に刺さった点滴の針を抜く時だった。


太郎「あなたは、、、、」


看護師「え?、、、あ、、、は、もう大丈夫ですよー」

女性は、平静を装うとしたが、針を抜く手が震えていた。


それから、太郎は段々と、体調も回復し、ドクターにも退院の許可を得た。

今日一日、病院のベットで、寝て朝を迎えれば、明日には、家に帰る事ができる。

やる事もないので、ひたすらに眠った。味気ない病院食を取りひたすら眠る。



時刻は、21時、病院内の明かりが、一斉に消えた。消灯の時間のようだ。

太郎の同室には、70代くらいの男性が1人いて、大きないびきをかいて寝ていた。

昼間、散々寝てしまった太郎は、なかなか寝る事が出来なかった。

1時間くらい、モソモソと寝返りをしながら、眠れなかった。



(ヒタヒタヒタヒタヒタヒタ)(足音)

遠くから足音が聞こえてきた。



その足音が、太郎の部屋の前で、止まる。



(ガチャ)(ドアを開ける音)

誰かが、入ってきた。


太郎は、寝返りを止め、寝てる振りをすることに精一杯務めた。


心臓が高鳴る。心臓の音が聞こえてしまいそうだ。


(ヒタヒタヒタヒタヒタヒタ)足音が、太郎のベットの前で止まった。

太郎の心臓が今にも飛び出しそうになる。


カーテンが、開けられた。


太郎は、精一杯、寝た振りをした。

むしろ、恐怖心で、目を開ける事が出来なかった。



「昨日は、本当に、ごめんなさい。あなたを疑ったこと、どんなに謝罪しても許されるべきことではありません。でも、、わたし、、あれから、、、」

女性のようだ。


何かあれば、力で抑え込めると太郎は、思った。

太郎は、息を殺して寝たふりをする。



女性が、腰かけたのが、ベットの沈みでわかった。


すると、女性が、太郎の掛布団をはがし、太郎の下半身をまさぐり始めた。


太郎は、必死に声を嚙み殺す。


女性の冷たい手が、太郎に触れる。


太郎の体がビクッと反応し、反り返った。

太郎は、必死に声を嚙み殺す。


そして今度は、太郎に暖かくて優しい感覚が襲う。今まで、味わった事のない感覚が太郎を優しく包み込む。


(ギシギシギシギシギシ)ベットがきしむ音がする。


(ギシギシギシギシギシ、ギシギシギシギシギシ)

段々と、リズムが早くなる。


女性は、声を噛み殺している。


(太郎の目の前に、大きな波がやってくる。目で確認できるほど、大きな大きな波が、、、ゆっくりと、ゆっくりと太郎を飲み込んだ)

太郎「ウウウウゥゥグゥ~」



女性「ハアハア、あ、ありがとう、お、起きてるんでしょ?ハアハア、今度お詫びに、食事でもご馳走します、よかったら連絡ください」と言って、メモを置いて部屋を去って行った。


そこには、携帯番号と絋(コウ)と書かれていた。






















 










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