第17話 再会

朝、起きると健二の姿は、なかった。会社に行くと、健二は、退職したと告げられた。

太郎は、結局、健二に何があったのか、わからなかった。あの夜のこと。健二に何があったのか?そして、何処にいったのか?


太郎は、田舎の祖父母を思い出した。

太郎「じいちゃんと、ばあちゃん元気にやってるかな?」

都会の時間は、田舎の時間よりも、数倍早く感じた。

太郎「こんなに人がいるのに誰も知らない」


そして、太郎の中で、何かが、変わりつつあった。


「ねえねえ、お兄さん、ちょっと飲んでいかない?」

太郎は、声を掛けられた。

太郎「いや、帰ります」とその女性を見た時だった。

お互いに、「あっ」と声に出した。

お互い、何処かで会ったことがあるようだが、思い出せない。


太郎「えっーと、えっーと」

女性は、「わかった」と言い、「新幹線の時のお兄さんだ」と言った。

太郎は、ようやく思い出した。

太郎「田舎から来た時の新幹線の、、、隣の、、」

優華「優華です」

太郎「優華さん?しかし、君は大学生では、、、?」

優華「お兄さんお願い、うちのお店来て、今月ピンチなの」

優華は、悲しそうな目でうったえた。


優華は、東京の大学に来たものの、日々の生活費が足りなく、キャバクラでアルバイトをしているらしい。

キャバクラというものは、指名客のノルマがあり、達成できるか、できないかで給料が雲泥の差で違うということだ。

この日、太郎は、生まれて初めて同伴というものを経験した。

同伴とは、自分のお客と店外で待ち合わせて、食事などをし、お店に一緒に向かうことらしい。


(いらっしゃいませ~)


店内は、薄暗かった。数人のお客が、いて、女の子と楽しそうに話している。

さとみの店とは、また違った雰囲気であった。


優華「お兄さん、この辺に住んでたんだね、また出会えた」

優華の笑顔を太郎は、思い出した。


太郎「そうですね、また出会えるとは思いませんでした」


そして、優華は、大学生活の事や、今の生活の事、田舎が恋しい事、相変わらずマシンガンのように話、続けた。

それでも太郎は、楽しかった。あっという間に時間は、過ぎていった。


(お客様、お時間です。延長は、いかがですか?)


太郎「いえ、今日は、帰ります」

太郎は、後ろ髪、惹かれる思いで帰ることにした。

もう少し優華と話していたかった。


優華「そうだ、お兄さんこれ、私の携帯の番号ね」

太郎は、名刺の裏に書かれた優華の携帯の番号を渡された。


太郎「優華さん、、、」太郎は、女性から携帯の番号を貰ったのは生まれて初めてのことだった。


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