第14話 一途の光

太郎は、いつも始業よりも1時間早く出勤する。これは、田舎の会社からの習慣だった。

みんなが、出勤する前に、ある程度の準備をしてスムーズに仕事が、出来るように心掛けていた。


駅を降りた時だった。「太郎ちゃ~ん」と後ろから、声を掛けられた。

振り向くと、そこには健二が立っていた。サングラスに派手なスーツを着て、この工業地帯で働くものとは、思えないカッコをしていた。


太郎「主任、おはようございます」

健二「太郎ちゃん、おはよう」健二は、太郎をジッと見つめている。

太郎「今日は、早いですね、何かありました?」

健二「君を、待っていたんだよ、今日、仕事後、空いてる?」

太郎「いや、今日は、、、すぐに帰らないと、、」

すると、健二は、小声で太郎に話掛けた。


健二「断るわけないよな、、、お前が俺に何したか覚えてるよな?あ?」

太郎「僕は、、、何も、、」

健二「OK!、じゃ、この前の店で、18時集合で、よろしく~」健二は、勝手にそう言って、職場にむかった。


太郎「参ったな~、今日は、オーナーとの約束が、、、」



太郎は、健二の強引な誘いを受け、渋々、この前、歓迎会をしてもらった店に行った。

店を開けると、ほぼ満席状態だった。健二の姿は、なかった。

店の店主に聞いたところ、個室のほうにいると言われ、奥の個室部屋に向かった。


健二「おお~、待ってたよ、太郎ちゃ~ん」

太郎「すいません、僕は、少ししたら帰りますので」

健二「まぁ~、取り敢えず乾杯しようか?」

健二と、その横には、女性従業員の里香が座っていた。


しばらくの間、他愛もない会話をした。仕事の話。テレビ番組の話。好きな漫画の話。

しかし、節々で見せるこの里香という子の健二に対する接し方が、普通の同僚では、ないと、太郎ですら感じた。


飲み始めて、1時間くらいたった頃

太郎は、そろそろ帰らなくては、いけないと伝えた。


健二「明日は、休みなんだから、まだいいじゃね~か」

太郎「いや、そろそろ」


健二は、話題を変える

健二「そういえば、太郎ちゃんのマッサージ凄く気持ちいいんだぜ~、里香もやってもらえよ」

里香「えー?そうなの?お願いしようかしら?」

太郎「いやいや、主任、僕は、そろそろ」

健二「最後にいいだろ?」

太郎「わかりました」

里香「よろしくお願いしまーす、太郎ちゃん」

里香は、太郎の横に来て,背中を向けた。


太郎は、里香の首筋から、肩の辺りをゆっくりと揉みほぐす。

太郎「優しく、優しく」と小声でつぶやく


里香「気持ちいい、気持ちいい」と連呼する。

里香は、フワフワと気持ちが、上がってくる。

健二は、不思議そうに見つめている。

健二は、疑念を募らす。俺の時とは、違った。あの快感の暴力。お前の力は、そんなもんじゃないだろ。


健二は、頭の中でつぶたいた。

すると突然、健二は、里香にキスをした。ねっとりと、舌を絡めあった。

太郎は、驚いて力が強くなる。


里香の呼吸が荒くなる。

里香「ダメ、ダメ、、、い、い、い、いぐ~」

白目をむいて健二に倒れかかった。


太郎「すいません、すいません」太郎は、逃げるように店を後にした。

健二は、ニヤリと笑った。


健二「おい、里香、大丈夫か?」

健二は、里香の頭を軽く撫でた。


里香「ダメ、私、おかしい、、、」

何とか声に出し里香は、答えた。


里香「健二、健二、ください、ください、お願い、お願いします」

涙ながら、懇願する。


健二は、黙って里香を、見下ろしている。


里香「う、う、う、、、」

里香は、健二を睨むように、見上げた。


健二「あいつを利用すれば、カネになる」とつぶやいた。




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