第6話
三匹で毛布に潜り込む。因みに寝る位置は、テトが「サチがまんなかだから!ぜったい!」と断固として譲らなかったので、サチが真ん中となり、左にテト、右にジル、とサチからすると両手に花状態である。
マットレスも毛布もとってもふかふかで、本来ならすぐ眠れそうだが、サチは推しと同じ毛布に入っていることで興奮状態だった。
左からはすぐに、すぅすぅとテトの寝息が聞こえてきた。とにかく邪魔にならないように、じっとしていなければ。
しばらく石のように固まっていたサチだったが、少し体勢を変えようとした時、ばちりとジルと目が合ってしまう。
ち、ち、ちかい~!!推しが近すぎる~~!!間近で見てもカッコいい!!
内心パニックのサチだが、幸いジルには気づかれてはいないようだ。
「眠れないか?」
「ごめんなさい、起こしちゃった?」
「いや、俺も寝付けなくてな。サチは昼間も眠っていたから眠りづらいだろう」
いや、違うんです。あなたがイケメンすぎて眠れないんです…と言えるはずもなく、小さく頷いた。
「眠れないのに寝かされるのも辛いとは思うんだが、サチの体が心配だから頑張って眠ってほしい」
「ふふふ、頑張って眠るって、何だか可笑しい」
私が笑うと、釣られてジルも笑った。ジルの笑顔は『ねこダリ』の中ではめちゃくちゃレアで、見られてとっても嬉しいはずなのに、私の心はチクリと痛んだ。
「…サチ?」
ジルは、私の変化を敏感に察知してくれた。
「……怖くて」
「怖い?」
「ジルとテトがたくさん心配してくれて、すごく嬉しかったの。誰かに看病してもらうのも初めてだった。寄り添ってもらうって、あったかくなるね。
それに一緒に眠ってくれて…誰かと眠るのが初めてで、嬉しかった」
ジルは、遮らずに聞いてくれた。
「だから、朝目が覚めたら、また元の家に戻ってるんじゃないか、ジルもテトもいないんじゃないかって」
ジルからしたら意味が分からないだろう。だけど、私は、別の世界から来たから、急にまた戻されるかもしれない。アッコもいなくて、ジルもテトもいない世界に。この短い時間で、暖かさを知ってしまったから、離れることが恐ろしく感じた。
ジルは、いつの間にか流れていた私の涙を舐め取ってくれた。
「サチは、今までよく頑張ってきたな。そして今も頑張ってる」
ジルが私の頭を優しく撫でる。また、涙が出てしまう。
「サチが寝てる間に、何処かにいかないように、俺たちが捕まえとかないとな」
「えっ……きゃっ!」
急に強く抱きしめられ、思わず声を上げてしまう。涙も引っ込み、身体中が一気に燃えるように熱くなる。ジルは、それにも構わず、ぎゅうぎゅうに私を抱きしめた。
「ん~…ふたりとも、おしゃべり?ぼくも…」
私の声でテトが起きてしまったようだ。
「テト、サチが寝てる間に何処にも行かないよう、俺たちがしっかり捕まえておく必要がある。テト、できるか?」
「ん、もちろ~ん」
背中からテトがぎゅっと私を抱きしめる。私の体は、前からも後ろからもガッチリ固定されてしまった。
「サチ、俺たちが絶対離さないから、安心して眠るんだ」
ジルは微笑んで私の頭を撫で続けていた。推しとゼロ距離の接触をして、またしても私は気を失うように眠ってしまった。
神さま…私の推しがイケメンすぎます…
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