第10話 イメージチェンジ 態度

 黒鬼さんと友人になれたことは、僕にとってイメージチェンジの第一歩だ。

 互いに友人を作るのが苦手ってだけで、僕からすれば黒鬼さんに興味が持てる。相原さん以外の女友達ができて嬉しい。

 

 これは打算的かな? だけど、僕としては相沢さんが好きだから、黒鬼さんとは本当に良いお友達でいられると思う。


 それをツバキ姉さんに報告すると頭を撫でてもらえた。


「うん、よくやった。女性のフォローもできてやるじゃん」


 どうやら、僕が黒鬼さんにとった態度は悪くなかったようだ。


「だけど、一つだけ考え方を改めなさい」

「考え方?」

「そうよ。女性から見た良い男っていうのはモテる男なの。顔がよかったり、人望を持っていたり、話が上手かったり、お金なんかの甲斐性があったり、人それぞれだけど、自分の強みを磨いてモテる要素を作るの」


 モテる要素を作る! そんなこと考えたこともなかったよ。


「レンに今すぐできるモテる方法は、たくさん経験を積むことよ」

「経験を積む?」

「そうよ。今のレンはRPGで言えば、レベル1で装備を整えている状態なんだから」


 ボクがゲームをしているのを見て、合わせてくれるツバキ姉さんは本当に優しいな。


「レベル1か、うん。そうだね。まだ始めたばかりだからね」


 毎日経験を作ってレベルを上げるんだ。


「女性の友達ができたレンに、女性へ接する態度の話をするわね」

「お願いします」


 最近は、ボクの行動を報告して講義してもらうことが当たり前になってしまった。


「うん。態度っていうのは、口ほどに相手に気持ちが伝わるものよ」

「口ほどに気持ちが伝わる態度?」

「そうよ。女子は男子の視線に敏感なの。特に胸や足、顔なんかは見られていることがわかるの。話をしていても、あなたがつまらなそうにしていれば、相手は話を聞いていないことがわかる。あなたが怒りっぽかったら、あなたに対して怒りっぽくなる。そうね。あなたの態度は相手を写す鏡になるの」


 僕の態度が相手を写す鏡? だんだん難しい話になってきて、全然わからないよ。


「あなたは学校に言って、誰かに挨拶をしてた?」

「えっ?」


 二年生になって、僕は挨拶をされれば挨拶を返していた。

 もちろん、相原さんには挨拶をしていたけど、最初はいつも相沢さんからだった。

 他のクラスメイトは、顔を合わせて言葉が出れば……していたかな?


「そんだけ考えても答えが出ないってことは、してないってことよ」

「うん。僕は自分から挨拶をしていないと思う」

「二年生は残り僅かだから、今からでもいい。少しずつクラスメイトに挨拶をしなさい。これは練習よ」

「わかった。明日から、クラスメイトに挨拶をしてみる。それで相手が話しかけてきたら興味を持って、相手の話を聞いてみる」

「よし。そこまで理解したなら、態度は最終段階よ」


 どれもそれほど難しいことには思えないように思えてきた。

 今までしてこなかった僕にできるかわからないけど、これは相沢さんに選ばれなかった僕がしなくちゃいけないことなんだ。


「筋肉をつけなさい」

「はっ? それって態度とどういう関係があるの?」

「最後に必要なのは、あなた自身の自信よ」


 ツバキ姉さんの言った意味が、またわからない。

 僕自身の自信? そんな物あるわけない。


「顔が引き攣っているわね」

「そうだよ。僕は相原さんに振られて、自分自身のダメなところを知って、自信なんて持てないよ」

「自信は、積み上げるものよ」

「積み上げる?」

「そうよ。今している美容に、男の誇りたる筋肉! それをつけることであなたは自信を積み上げられるの!」


 ツバキ姉さんが筋肉をアピールするポージングとっている。

 筋肉はないけど、ポーズが綺麗だ。


「筋肉をつけなさい」

「意味がわからないけど」


 ツバキ姉さんはどこからともなくホワイドボードを召喚して、バンバンとホワイトボードを叩いた。

 クルッと回ったホワイトボードの裏には、ツバキ姉さんの字で大きくテストステロンと書かれていた。


「男はテストステロンを分泌することで、女性を魅力するフェロモンを放出するのよ」

「フェロモン?」

「そうよ。ひ弱で頼りなさそうで、優しい男は嫌われないわ」

「最近は草食系のそういう男子が多いって聞くね」

「ええ、そうね。男子が優しくなったり、綺麗になることは否定しないわ。だけどね、結局は生き残るための甲斐性と魅力ある男性に女性は惹かれるの」


 ツバキ姉さんが大きな胸を抱きしめるように、自分の体を抱きしめる。


「話を聞いてくれる余裕。社交的なコミュニュケーション能力。そして、男性ホルモンから溢れ出す男性フェロモン。それは男としてのレンに自信を与えてくれる」

「僕に自信を……そんなバカな、そんなことで」

「レン、あなたは言ったわね。私の言う通りにすると」

「えっ、うん。言ったけど」

「なら、来年のこの時期に私が言ったことをやって、あなたが女性から好かれていなかったら、私があなたの初めての女性になってあげる」

「はあぁ! ツバキ姉さん頭おかしいの?」

「あら、私は嫌かしら? それならモデル仲間の女性を紹介してあげるわ。とにかく、あなたはまずは私の言う通りに実践してみなさい」


 ツバキ姉さんの突然の発言。

 それは置いといて、指摘されたことは間違ってはいない。

 だから言われたことはやろうと思う。


「筋肉をつけるためにはどうすればいいの?」

「それはnewtubeがあるじゃない! 最近は筋肉芸人さんとか、たくさん運動動画をあげているから見ながらやって見なさい。とりあえずは三ヶ月。三年生になるまでに相原さんの相談役スパイをしながら自分を磨く練習期間よ」

「わっ、わかったよ。とりあえず実践できることはやってみる」


 二日間でツバキ姉さんに言われて自分が気づいたこと、そしてこれから実践していくことをノートに書き出した。


 僕は本も読むけど、ウェブ小説も書いている。

 ツイッターで、同じ小説仲間とも交流がある。

 今回の失恋は凄く胸が痛い。

 僕にとって忘れられない初恋だと思う。

 

 だけど、ツバキ姉さんから受けた指摘。

 これから相沢さんに接する態度。

 それらは全て僕が招いた罪だ。


 だからこそ、今度は僕が彼女の相談役スパイになって、彼女の好みを聞いて、彼女の好きなことを知っていこうと思う。


「そのためにも筋トレからだけど、僕って運動が苦手なんだよね」


 走ったりすることから始めようかな? ツバキ姉さんが、美容と同じで習慣化させることが大事って言ってた。

 まずは運動して、それを習慣化させるために、色々やってみて、何が自分にあっているのか考えないとな。


 それに筋トレだけだと飽きそうだから、何か運動を始めてみるものありかも? 昔からスケボーとか興味あったけど、どうなのかな? ちょっと怖いかな?


 案外調べてみると楽しいかも。うん、これなら出来そう。


 new tubeを見て、体を鍛えながら、スケボーを趣味に僕は自分を鍛えることにした。

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