第43話 羽根
これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。
重そうな鉄の扉の向こうの世界の物語。
レオンは力仕事を任されるようになった。
とりあえず今は薪割りをしている。
ベッドでいろいろ考え込むより、身体を動かしていた方がいい。
義手の調子は悪くないし、義眼もよく見える。
レオンは随分薪を割った。
そこでふと手を止めた。
汗をかいた身体に心地よい風が吹いていった。
「…飛べないんだ…僕は」
少しかなしそうなギアビス。
微笑むギアビス。
大笑いするギアビス。
レオンの記憶はほとんどギアビスで埋められていた。
それでも…
ふと、ここに来る前のことを思いだそうとする。
こんなに穏やかな生活。
その前、一体自分は何をしていたんだろう?
「レオン」
自分を呼ぶ声で我にかえる。
「また何か余計なこと考えてたでしょ」
ギアビスは微笑む。
レオンは頷く。
「昔のことを思いだそうとしていた」
レオンは包み隠さず話した。
ギアビスは一瞬寂しそうな顔をした。
でもすぐ、それを微笑みで隠した。
「俺はここの人間じゃない。それだけはわかっている…」
ギアビスは頷く。
「一体何を求めてここに来たのか…自分は何者なのか…何を残してきてしまったのか…」
「レオン…」
「俺は…不安なのかもしれない…」
ポツリとレオンが呟く。
ギアビスは眼を閉じた。
そして呟く。
「僕も不安なんだ…」
「レオンはどこにだって行けるよ。あの鋼鉄の扉をくぐって、戻ることだってできるはずなんだ…」
ギアビスは眼を開く。
「僕はこの草原を動けない。多くの祖先が残してきた知識を守る義務があるんだ。知識の結晶が…君の義手や義眼、そして僕の身体なんだ」
ギアビスの眼に涙が光る。
「こんな身体抱えて…一人はもう…嫌なんだ…」
ギアビスの眼から涙が溢れた。
レオンは衝動的にギアビスを抱きしめていた。
その背には…大きな純白の羽根があった。
『こんな身体』とはこれなのだろうか?
レオンは羽根もまとめて抱きしめた。
レオンは頭で何かがはじけた気がした。
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