第21話 螺子
斜陽街三番街のがらくた横丁はゴミゴミした通りだ。
配線や配管は剥き出しになっており、
店同士が寄り添うようにして営業している。
どうでもいい場所にダンボールなどが置かれており、通りは余計狭くなっている。
螺子師はそんな、がらくた横丁で営業している。
螺子を扱うのが仕事だ。
螺子師は螺子を扱う。
日用品、機械、螺子があればなんでも扱う。
特殊なものとしては人間自身。
人間の頭の螺子を締めるのだ。
頭の螺子を締めると、考え方が理性的になるらしい。
緩めると、どことなくぼんやりした感じになるらしい。
螺子師はその調整もする。
その微妙な調整が螺子師の腕の見せ所だ。
螺子師には商売敵がいる。
螺子ドロボウという。
螺子ドロボウは頭の螺子を盗む。
螺子に支配されるのがよくないというのが持論らしい。
「本当にほしい螺子はこんなんじゃないんだ…」
螺子ドロボウは螺子を盗む度にそう言う。
螺子ドロボウを追ってきた螺子師と対峙する。
螺子師はいつか螺子ドロボウを懲らしめなければと思っている。
だから追う。
しかし、螺子ドロボウはそれを楽しんでいる節すらある。
「君の螺子が欲しいね…」
螺子師を指差し、ククッと低く笑う。
そうしていつも、螺子ドロボウは闇に消えてしまう。
螺子師は螺子ドロボウの意図が掴めない。
ある時、番外地の人形師が人形を持ってきた。
不格好に膨れた人形に螺子が食い込んでいた。
「番外地の廃ビルから崩壊の歌が聞こえる…」
人形師は言う。
「私は耳を塞ぐ…心の耳も塞ぐ…人形は耳が塞げないから体に溜めてしまうのだ…」
他にも膨れている人形はあるそうだ。
螺子師は取り合えず螺子を緩めて、人形に溜まった思いを抜いた。
酒屋を呼んで思いを持って行ってもらわないと、こっちがどうにかなりそうだった。
そんなこんなでも螺子師は元気に螺子を回している。
今日も螺子師の螺子は、しっかりおさまっている。
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