第15話 祖母たちの言葉。

ヘマタイト達の要求に、ミチトが「…まあいいけど…。君達には一応聞かせるよ」と言って術を使うと遠くから声が聞こえてくる。


「はぁ?アンタ私とミチトの子孫とかなの?それなのに情けないこと言ってさぁ、しっかりしてよね?私は奥さんの中でビリッケツだからいつも頑張ってた。ジェードもベリルも必死だったよ。勝手に限界を決めない!出来ない事に足掻くんじゃ無くて、できることで追いつく!忘れないでよね!」


「もう、仕方ないですねえ。ミチトさんは本当に凄いし怖い器用貧乏でしたけど、それは才能だけじゃないの。本当に辛い日々を生き抜いて身につけた力。敵わないのは仕方ない。でも諦めちゃダメですよ。まあロゼちゃんも、初めてミチトさんに本気を出して負けた日に落ち込みましたし、落ち込む日もありますよ。そこで止まったらダメですよ。皆もミチトさんと一緒、まだ道の途中。決して終わらない道の途中です。訓練頑張ってくださいね」


「おやおや、なにやってんのミチト?えぇ?タシアの子供とか孫達が挫けた時に向けて言葉を残したいって?魔水晶に入れて取っておきたいからってライブとイブに聞いてきたの?…もう、イブなんてアイリス混じってるよ?まあ子供達も皆気づいてるからいいけどね。シアなんてこの前アイリスと2人でお酒飲みたいって言って村の跡地に行ってたもんね。


あ、私も言うんだ。

えっとね、お婆ちゃんだよ。

疲れたら一度休みなさい。人によって歩幅は違うの。先にゴールした人を妬んだり羨んだり自分を嫌いになったりしないで、自分もキチンとゴールをするの。目指した場所だけは変えてはダメ。それは私がミチトと居て教わった大事な事。頑張る事は良いけど無理はダメ。まあお婆ちゃんだからわかった事だから、まだ若い君達には難しいかな?ミチトといつも見守っている。


あ!そうだ。きっとイブとライブは訓練には厳しいし言わないだろうから、…お疲れ様。今日はゆっくり休みなさい。美味しい物を食べて、カケラ一つにも感謝をすればぐっすり眠れるよ」


聞こえてきた言葉達。

ペリドットが「これは…」と聞くと、シャヘルが「ライブとイブとリナ?」と続ける。


「そうだよ。あれ?真式の奴に魔水晶渡したはずだけど、聞いた事ないの?」

「ミチト、イブとライブは真式様に遠慮してたから、サルバンくらいしか繋がりないのよ」


「マジか、で?アクィはどうする?」

「私は…出来たら聞きたい。あの日はまだ若かった。今と違う私が何を言ったか聞きたいわ」

ミチトが頷くとアクィの声が聞こえてくる。


「挫けたの?良かったわね。それは自分の理想と現実の差をキチンと見極められた証。伸び代よ!それに何?すぐ辿り着く場所を簡単に設定したの?違うわよね?ミチトと私たちの子供達なら理想はかなり遠くだわ。そこにすぐに辿り着こうなんて驕りよ驕り!ラミィは生まれながらの真式でも、術人間ではないタシアに未だ勝てずにいる。フユィは真式への執着を捨てて強くなった。トゥモは独りよがりを昇華させて孤高を目指すようになった。皆それぞれの道を見つけて強く貴くなっていく。理想は高く持ちなさい。追いつけないのは伸び代よ。腐る事なく生き抜きなさい!」


アクィは自分の声を聞いて「もう、恥ずかしいわ」と言う。


「そう?今は?」

「変わらない。やっぱり私はこの子達に高い理想を持って、壁を見つけたら挫けずに伸び代と思えと言葉を送るわ」


嬉しそうに頷いたミチトが「やっぱりアクィは俺が見た中で1番高潔だ」と言って喜ぶとアクィは「よく言うわよ。ミチトが1番貴いわよ」と返した。

ミチトはニコニコと「やだよ。俺は器用貧乏なんだよ」と言うとアクィも嬉しそうだった。


アクィとミチトの掛け合いを見ていたヴァン達は感動していた。

そして宿題と言われたはずなのに、それからすぐにファットチャイルドを直して、ヘマタイトは手甲、ペリドットはダガー、シャヘルは二振のショートソードを生み出して貰い受けた。


「ユーナとコーラルは?」

「俺は自分の装備を直して微調整した」

「私は愛の証に近いレイピアを作るけど少し痩せた剣にするわ」


満足そうにそれを見て「やれるなら最初からやればいいのに…って思うけど、やっぱり俺の言葉って軽くて伝わらないんだよなぁ」と漏らすミチト。


アクィが「バカね。シーシーちゃん達もよく言ってたじゃない。ミチトは簡単にできるからなのよ」と笑う。


「そうかな?」と言ったミチトは「さてと」と言うと、ヴァン達を見て「俺はここまでだね」と言う。


「ミチトさん?」

「死人はさっさと死人に戻るよ。上手く言えないけどさ、亡霊が蘇って指南してきたとか思ってよ」


困り笑顔のミチトにヴァンは我慢ができなくなると、「ミチトさん!何か心残りとか!転生術で蘇ったらやりたかったと事とか!」と詰め寄る。


「えぇ?いいよ別に遠視術でマ・イードの国も全部見てきたし、海底都市のヨシさんや朱色、天空島の紺色達に青色とザップさんには修行しながら挨拶したよ」

想像もつかない離れ業にペリドットが「マジかよ」と言い、ヘマタイトが「これが伝説の器用貧乏」と続く。


「でも!見ると行くじゃ違いますよ!」

「…ヴァン君、君…死に対して…。うん…真式、よろしく。わかった」


ミチトは穏やかな顔になると「ヴァン君が誘ってくれたから皆で行こうか?」と言う。



「どこに?」

「お墓参り。位置登録のついでだよ。コーラル達は知らない土地は位置登録しなよ。でも俺が行くと大騒ぎになるから認識阻害するから静かにね」

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