第4話 来世への旅立ち

 ここは天の世界。魔女王まじょおうフリーダだった私は、どうやら死んだらしい。

 そこで宿敵、勇者レッドと出会った。


「次の人生の旅立ちの時が来ました。ご準備を」


 口ひげの紳士は言った。


「あなたは?」


 レッドは眉をひそめて紳士を見た。


「神の使いのリーベルと申します。まあ、そんなことより……。あなた方は来世では、100年後の世界に生まれるということが決定いたしました」

「もうそんなことが決まっているの?」


 私は驚いて聞いた。


「神の力で、100年経った世界に、今すぐ転生できますよ。フリーダさん、レッドさんも同じ年齢でお生まれになっていただきます」

「ジェシカとデリックは?」


 レッドが聞くと、リーベル氏はうなずいた。


魔女王まじょおうフリーダさんと、勇者レッドさんが死んだあと、ジェシカさんたちも、魔物に殺されて亡くなりました。今、魂の存在となっております」

「マジか……」

「フリーダさんとレッドさんは、重要なお役目を持って、100年後の世界にお生まれになっていただきます」

「なんだ、その重要なお役目って」

「世界を救っていただきたい」


 リーベル氏の言葉に、私とレッドを顔を見合わせた。


「お二人で力を合わせれば、世界を救えます。お二人はツインソウルですからね。意味は少し違ってしまうが、ツインレイという言い方もあります。が、ここではツインソウルと言いましょう。その言い方が私は好きです」

「ツインソウルとは何なんだ?」


 私がリーベルに聞くと、彼は真面目な顔で言った。


「フリーダさんとレッドさんは、魂がもともと一つだったのです。今は魂が分かれてしまっているだけ。『双子の魂』というわけですな。まあ、来世ではそんなこと、忘れていますがね。神のお力によって……」


 私とレッドはお互いを見た。ちょっと恥ずかしい。

 リーベルは続ける。


「さて、そろそろ……」


 机の上には、パッと二枚の紙とペンが現われた。私とレッド用の書類らしい。


 おや? この世界の北の方を見ると、向こうに虹色に輝く扉が見える。


「あの扉を通れば転生し、赤子として100年後の地上に生まれます」


 リーベルは説明した。もう一度、人生をやり直すのか。


 ジェシカやデリックはどうなるんだろうか?


「では、来世に行かれる決心がなされたら、サインをしていただけますか。ぜひともチャレンジを」


 私たちは静かに書類にサインをした。……というより、いつの間にか書かされていた、といった方がいい。これも神の力なのか。……強引だな。


 リーベルは虹色の扉の前に立った。そして扉の中は光り輝いている。


「さて、と。どうなさいますか?」

「来世ではどうなるか分からんけど、俺は自分を勇者だと思ってるんだ」


 レッドは胸を張って言った。


「世界を救うってことは、100年後も、魔物だらけの、危険な世界になっているんだろう? 俺は正義のために戦いたいぜ。おい、フリーダ。また、お前と敵同士になるのかな」

「え? ……いや、知らんけど」


 私は軽く言った。でも、本当は泣きたいような気持ちだった。レッドと……また敵同士か。それはちょっと嫌だ。

 何でこんな気持ちになるんだ?


 レッドはリーベルに聞いた。


「来世では名前はどうなるんだ?」

「来世のことは、詳しくお話できません」

「しょうがねーなー」


 レッドはため息をついた。


 私とレッドは虹色の扉の前に立った。私たちは、来世に行くと決めた。というか、そのような気持ちになるように仕向けられているのかもしれない。


 まったく、どうにでもなれっつーの。


 どんな新しい人生が待ち構えているというんだろう? また、私は魔女王まじょおうなのか? それとも……。


 えーい、何とかなるだろう、多分!


 私は扉の中に飛び込んだ。レッドも後に続いた。


「フリーダ様、レッド様、お達者たっしゃで」


 リーベルは俺たちにそんな声をかけてくれた。


「神様は、あなた方を見守ってくださっていますからね」


 ああ、また私たちの頭の中が、真っ白になっていく。


 私は、何者になるのだろう? 100年後の世界では……。

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