第18話 お礼と白狐人族とホワイトフォックス

「私も何かしなければなりませんね」


 ザックとのやり取りを聞いていたシアが言った。


「いや、シアさんの件は3人が多めに薬草を取ってきてくれたからなので、いりませんよ」

「それ位の事では釣り合いませんよね」


 まぁ確かに?命とちょっと多めにとってくれた薬草は同等ではないと思うけど。


「誠明よ、それなら光魔法について教えてもらったらどうだ?」

「あぁそういえば、光魔法について教えてもらいたいんですが」

「光魔法ですか?」

「えぇ、外れ魔法と呼ばれてる事と、ライトボールと浄化位しか使い道がないと聞いていますが……」

「そうですね、概ねその通りです。ライトボールの応用でサンシャインといって小さな太陽を出す魔法がありますね、雨季の期間中でも植物を育てられる良い魔法ですよ。それから結界魔法もあるようですが、使い方が誰も分からないというのもありますね」


 誰も使い方が分からない結界魔法か、気にはなったが、サンシャインも気になった。


「太陽光の代わりになるんです?」

「えぇ」


 ライトボールの形状を変えて熱を持たせることが出来たから、考えればできそうな事ではあるのか、もしかしてレーザー的な事もできるのかな?

 光魔法は、光と熱を操るという認識でよさそうかな?


「他にはありますか?」

「そうですね、はるか昔聖女様が“浄化”で病を治したという逸話がありますが、もしかしたらあなた様も出来るようになるかもしれませんね」

「ってことは、今は出来る人が居ないと?」

「えぇいませんね」


 ふむ、もし浄化で、癌細胞が消せるなら結構使えると思うが、消えた後正常な細胞になるならいいが、消えるとなったら場合によっては使えない……、胃がんに浄化をしたとたん、がん細胞だった部分が消えて、胃に穴があきましたとかになる……。


 感染症なら特定のウィルスだけを消せるなら浄化で対応するのもありだな。


「いいヒントありがとうございます。攻撃的なものは無いんですかね?」

「そうですね、攻撃的なものはありませんね、アンデット相手でしたら浄化やサンシャインですが、動物やそこらへんの魔物に対しては大して効果がありません」


 サンシャインを相手にぶつけたらどうなるんだろうか?


「サンシャインは相手にぶつけても効果ないんですか?」

「そう聞いていますね、少し火傷させるくらいみたいです。何分光は実体がありませんから」


 実体の有無か……、どこまで熱量を上げれるか次第といったところか?


「ありがとうございます」

「いえいえ、他にも訪ねたいことありますか?」

「ん~今のところは……」

「シアよ、誠明は嫁探しでこの世界に来たそうだ、いいやつが居たら紹介してやってくれ」


 ザック!?

 ここでそれ言うの!?せめてミルが居ないところで言ってほしいんだけど!?


 ミルの方を見ると興味ありそうな表情をしていた。


「そうなんですか?」


 さっきとは、声のトーンが違うちょっと驚いたような感じだった。


「そうですね、前の世界には居ないと言われて、この世界に案内されました」

「そうでしたか、あなたの持つ知識や技術を広めるためではないのですね」


 だよね、本来そっちのほうがいいよね。なんかかこっぱずかしくなった。最初から嘘ついておけば良かったかな?


「そうですね……」

「どのような女性がお好みなんですか?」

「妖艶な女性だとよ」


 自分が応える前にザックが答えた。それを聞いた途端ミルがため息をついていたのを見逃さなかった。


「妖艶というより女性らしい人がいいですね」

「同じことだろうがよ」

「自分的には妖艶というとセクシーとかエロイイメージがあるんですが……」

「同じじゃないか」


 個人的には全然違う気がするんだ。


「ちがいますよ、なんというかこ~優しく包み込んでくれるとか、こう面倒みがいいとかそういう意味合いもあります」

「あぁなるほどな」

「ふふふ、そうですね、孤児院の子だと、ユミルとハンナ位ですかね、サラはまだ幼いですが、ユミルはしっかりしてますし、ハンナは面倒見もよく活発ですからね~2人共冒険者ですから難しそうですね」


 あぁ、それは思う、ユミルはお姉ちゃんといった感じで、ハンナは姉御肌って感じだったもんな。まぁそうだよね、あっちこっち行く人だと難しいよね……。


「まぁそうですよね」

「えぇ特にハンナは白狐人族の里探しをするという目標がありますからね」

「白狐人族?」

「えぇ、ハンナの種族ですよ」


 ユキの耳と尾と同じ形状だったのは気のせいじゃなかったか。


「その白狐人族ってユキとなにか関係あるんですかね?」

「キュ~?」


 なぜ私の名前が出てくるの?とかそういう意味かな?


「あると思いますよ。獣人は元々魔物が人になった者達ですからね、白狐人族の元の祖先はホワイトフォックスだと思いますよ」

「キュ~!?」


 ユキが何やら、“そうなの!?”みたいな鳴き声を上げた。


「それから色々な村や町で魔物から獣人になったという昔話が聞けると思いますよ」 

「へぇ~面白そうですね」

「旅をするときは、その土地の昔話を聞いてみてください」

「そうします」


 旅をする楽しみが出来た。いつか旅に出るときはそうしよう。


 その後雑談をしてすごした。



 1週間後、特にこれと言った後遺症が見られず、驚いた事に切断した頭部の骨が綺麗にくっついていた。


 ザックの頸椎といい、シアの頭部といい、この世界の人は自然治癒力が高いのか?と思った。

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