第24話:二大作品の黎明と最終決戦

4月25日(火)


 レベル23で過去の世界へ。


メモ:グリーンドラゴン、パープルウォーム、ドラゴンゾンビからは逃げられない


 復活したリッチのフレアーで全滅しかける。それ以降のボスは大したことないようだが、油断せずにヘイストをしっかりかけて倒したほうがよさそうだ。名刀マサムネを手に入れて、たけるが5回攻撃できるようになった。


 一旦脱出してセーブ。レベルは26。次はクリアを目指す!


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 僕は今日の出来事を日記にした。明日と明後日は、日々木さんは来られないという。当然、それまでFF1のプレイは止まることになる。


 もちろん、ポーションの補充だけはしておいた。ついでに、僕だけ先に最後の展開を「下見」してやろうと何度か起動したのだが、やっぱり初めてのエンディングは一緒に見たいと思って我慢することにした。


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 日々木さん、今は何のゲームやってる? FF1はやり直してるのかな? それとも他のゲーム? この前うちのクラスのハルキがファミコンのドラクエ1を始めたみたいなんだけど、協力してレベル上げをしようという話になった。日々木さん、持ってたっけ? 良かったら一緒にやってみない? 今のパスワードは


ぜごばこせ でおわげずけほ

めよれぎざ かりば


 レベル5 こんぼう 布の服 皮の盾


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 ハルキは、今は同じ本体に入っている『キャプテン翼』にハマっているようで、ドラクエのほうは進んでいない。日曜日に僕がプレイしたままだ。


 **


4月25日(水)


 DQ1、私も持ってる! 前に少しだけやってみたけど途中でパスワード失くしちゃった。リレー方式でのプレイ、面白そうだから私も混ざってみるね。ハルキさんには内緒にする?


 DQ1とFF1。同じファミコンのゲームなのに全然違うよね。発売日は1年半しか変わらないのに。DQ1はどこのダンジョンも同じ、灰色の石の壁と赤いレンガの床。でもFF1はダンジョンごとに個性的な見た目をしてるのが好き。


ぜだびろぐ ぬりそてぬわと

ねふむゆぎ いとり


 レベル9 鉄の斧 鉄の鎧 皮の盾


 ちょっとレベル上げすぎちゃったかも? リムルダールに行ったら敵が強くてなかなか帰れなくなって、気づいたらこんなレベルに……。イベントは進めてないよ。


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 木曜日、日々木さんから交換日記の返事を受け取る。DQ1がFF1の1年半前だって? 改めて調べてみると、たしかにDQ1は1986年5月、FF1は1987年12月だ。現代だと、同じハードであれば5年前のゲームと今のゲームのどちらが新しいかを区別することすらも簡単ではないだろう。


 ファミコンの時代は、たった1年でも技術的にものすごい発展をしていたようだ。父の世代が言うところの「2大RPG」の一作目を交互にプレイしながら、その時代の空気を想像する。


 ***


「ごめんね、2日も空けちゃって」

「いいよ、気にしないで」


 金曜日、約束通り日々木さんは来てくれた。


 *


「逃げられない敵はグリーンドラゴン・パープルウォーム・ドラゴンゾンビ。あとアイスギガースだ」

「あとは地下に出てくるエレメント系ね」


 2度目の探索はさすがに効率的だ。マサムネの存在も大きく、ザコならほぼ一撃で倒せる。特にリッチ相手に、ヘイストのかかった10回ヒットで1000以上のダメージを与えたときは、思わず二人で声を上げてしまった。


 *


「この下がラストだよね」

「多分、ね」


 この時点で、レベルは27になっていた。ティアマットを倒した先にある階段を降りると、フロア全体が魔法陣のような構造をした部屋。最後のボスの正体は、最初に倒したガーランドだった!


 *


「……つまり、奪ったクリスタルの力を使って未来の自分を過去に戻すループってこと?」


 日々木さんが、奴のセリフの内容をわかりやすく整理してくれる。


「これ、倒しちゃったらループが切れて戻れなくなったりするのかな。まあダテレポあるけど」

「どちらにしても、ゲームとしてはボスとして倒さなきゃね」


 ガーランド改め、その名も「カオス」との戦闘が始まる。BGMはいつも通りだ。


「やっぱりヘイストかけて攻撃かなぁ」

「一応バマジクかけてみたら?」


 ドラゴンメイルとイージスの盾・守りの指輪を装備したナイトは、ダメージ系の耐性は揃っているものの、精神・地面・時空への耐性がないらしい。デスビホルダーのストップを食らったのも時空属性であるためのようだ。バマジクを使えば、このうち精神と地面への耐性を得ることができるという話だ。


「うわ、地震! 危なかった……」


 このゲームの地震、魔法で言えばクエイクの効果は、ダメージではなく即死である。つまり、ここでバマジクを使わなければナイトたけるが即死していた可能性がある。1回しか使えないクラス7の魔力を、ブリザガではなくバマジクに使ったのは正解のようだ。


 あとは攻撃あるのみだ。スーパーモンク"そうた"と共に、直接攻撃で数百ポイントずつ削っていく。炎やサンガーのダメージは防具の耐性が軽減してくれる。赤魔道士の"はるき"と"そら"も、半端な回復などより攻撃に回る。


 思ったよりHPは高くないようで、3ターン目に勝利のファンファーレが鳴り響く。だがカオスの姿は消えない。これは変身して第二形態か?! と思いきや、そのまま崩れ去って画面が切り替わり、エンディングらしきメッセージが流れはじめた。


 ***


注:


『バマジク』


 地震以外にも、直接攻撃についてくるマヒの追加効果対策にも有効。なおカオスの行動パターンもファミコン版とリメイクで異なっており、1ターン目から地震が飛んでくるのはファミコン版特有。

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