第4話
004 母という人
誰でも人に嫌われるより好かれる方がいいに決まっている。僕はその意味で人から好かれていた母をとても誇らしく思っている。ただ母のことを憧れられる存在というのは、少々 以外 だった。女学校時代の母は人から憧れを抱かれるような、そんなにすごい人だったのだろうか?
僕は母が好きだけど、憧れるというような気持ちを持ったことはなかった。というか人から憧れを抱かれるような人間というのはどうも 母とはぴったり来ない。母は人に好かれはするだろうが 憧れられるというの とは 違うの じゃないだろうか。
母は本当にひろこおばさんが言うように 何でもできてしまう人だったのだろうか。
確かに 母は大抵のことは自分でできる人だった。ただ電気的なものは苦手でどうも 怖がってできなかったことが多かった。なぜ苦手なのかよくわからなかったが だいたい女性は電気的なことは苦手なもんだと僕も思っていた。だから母ができなくても僕は少しも 不審に思ったことはなかった。例えば 蛍光灯を交換することなどは母はとても苦手だった。そんな時 父がいれば父が交換してくれたので、事なきを得ていた。父がいない時は僕が代わりにやったこともあった。他に母できないこと というのは 思い浮かばなかった 他のことは たいてい できてしまった。ただひろこおばさんが言うように 何でもできる人という感じはやはりしなかった。そういう点で母は ごくごく普通のおばさんだった。 少なくとも僕にとっては。
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