最弱覚醒者は幾億の時を経て最強に至る

あおぞら

プロローグ

「―――な、何だよこれ……ッ!」


 俺―――斎藤神羅さいとうしんらは、砂浜でのランニングの途中に突如眼の前に現れた異形な存在に恐れ慄き尻餅をついた。

 恐怖で声が漏れる。


「ど、どうしてこんな所に、え、EXエクストラ級の巨神獣が居るんだよ……ッ!」


 俺の手元には『error』と表示された、SSS級まで測れるランク測定器がある。

 そして海には数千メートル級の大きさの鯨型の巨神獣が浮かんでおり、ジッと此方を見ていた。

 

 ———巨神獣。

 30年前に突如海底から現れた化け物。

 姿形は地球の生物に似ているが、それ以外は大きく違う。

 デカいだけでなく、それぞれの個体が特殊能力を持っている。


 コイツらのせいで沢山の人が死に、今でも人が存在しない土地が存在する程だ。


 しかし地球が対抗する様に、一部の人間に《異能力》と呼ばれる力と『ステータス』と呼ばれる自身の身体パラメータを表示した半透明のボードを手に入れた『覚醒者』と呼ばれる者達が現れた。

 現在では全人類の5割超が覚醒者になっている。


 かく言う俺も覚醒者だが、よく分からないと異能力しか持っておらず、ステータスも……。


—————————————

斎藤神羅

18歳

Lv.5

体力:5

魔力:5

攻撃:F-

防御:F-

敏捷:F-

【??異能力】

《???》《???》

————————————


 人類最弱と言っても良いほどに弱い。 

 そもそも覚醒者なのに異能が使えないのだ。


 そんな俺が……巨神獣の中でも最強と呼ばれるEX級巨神獣とどう戦えと言うのだろうか。

 

「い、いや……もしかしたら俺が弱すぎて気にしないかもしれない……」


 人間が外で埃が舞っていても大して気にしない様に。

 

 しかし———現実は無情だった。

 

 突如鯨型の巨神獣が目をカッと見開く。

 そして巨神獣の体を白い輝きが包み込むと———


「%°3#¥≠4+$>#°1%3°##3ッッ!!」


 大きな口を開け、不快で奇妙で不気味な咆哮を上げた。


 コォォォォォォォォッッ!!


 その瞬間に辺りの———俺も含めた———全ての物が吸い込まれる。

 

「く、くそッ———まだ俺は此処で死ぬわけには———」


 俺は最後に、幼稚園からの幼馴染で高校を卒業する時に告白しようとしていた人———水野琴葉の顔を思い浮かべて———意識が暗転した。







「———ッ……ん…………ぐっ……こ、此処は……?」


 俺は全く知らない所で意識を取り戻した。

 痛む体を無理やり奮い立たせると、朦朧とした意識のまま辺りを見回す。

 

 そこ・・には大量の白い砂に海に落ちていたはずのゴミが散乱していた。

 そして上を見上げると、まるで太陽の様に直視することが出来ないほどに明るい。

 

 この空間は意外に広く、万全ではない俺の体では探索出来ないほどに広かった。

 しかしどこ行ってもゴミや砂浜の砂、海水に死んだ魚くらいしかない。


「…………此処はあの鯨の腹の中なのか……?」


 と言うか周りに落ちている物のことを考えるとそれ以外にあり得ない気がする。

 しかしそれは俺にとって死よりも絶望的な現実だった。


「……ははっ……このまま何も出来ず飢えて死ぬのか……まぁそれはそれで良いか……。どうせ此処から出られないんだし……」


 ただの一般人と変わらない俺がEX級の巨神獣の腹の中から脱出出来るわけがない。

 俺はそこで———思考を停止させ、大人しく死を待った。


 1時間、1日、1週間、1ヶ月……どれくらいだったか分からないが、俺は無心で何もしなかったが、死ぬどころか飢えを感じることすらなかった。

 それどころかここに来た時よりもピンピンしている始末。


 こうなると新たな考えが浮かんでくる。

 俺にとっては最も残酷で苦痛に満ちた考え。

 

「……もしかして俺は死ぬことすら出来ないのか……? …………ははっ……俺が一体何したって言うんだ……」


 俺は腹の中の壁の様な所に背を預け、天を仰ぐ。

 今、俺の体を、何も出来ない自分への不甲斐なさと、死ぬことの出来ない絶望感、琴葉にもう一度会いたい……でも会えないと言う哀愁感など、様々な気持ちが渦巻いて混ざり合って俺の心を蝕んでいく。

 ふと彼女の顔がチラついた。


 ゆるふわボブな茶髪を靡かせ、可愛らしい大きな茶色の瞳を細めて小さな口をにへらと緩ませながらも、向日葵の様に元気で周りを自然と明るくする魅惑の笑顔。

 こんな雑魚な俺を見捨てなかった唯一の人。

 そして———小さい頃からずっと見てきた、俺を魅了した愛しい人。


「あー……せめて琴葉にはさよならを言いたかったなぁ……くそッ……」


 俺はやりきれない思いを、八つ当たりの様に壁にぶつけると———


《レベルが上がりました》


「っ!? レベルが上がった……?」


 俺は急いで自身のステータスを見てみたが、確かにLv.5→6になっていた。

 絶望に包まれた俺の気持ちが一気に晴れる。


 俺はガバッと痛みも忘れて立ち上がり、壁に向けてボクシングの構えをとって渾身のストレートをお見舞い。


《レベルが上がりました》


「……はははっ……よし、よし! 希望が見えてきたぞ……! 何故かは知らないが、俺の雑魚ステータスでも経験値が手に入る!」


 俺はグッと拳を握り締めて誓う。



「———必ずこのクソッタレな場所から脱出してやる……ッ!!」


 


—————————————————————————

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