570 スライム戦争

( リーフ )



東門から外へと出ると既にルーン先生が待っていて、更にその場で探知魔法を使って森の魔力反応を探っているところであった。



そして俺達が到着した事に気づくと、それを解きピッ!と森のある方向を指差す。



「 今半径1km範囲内を探知魔法で探ってみたんだが、ちょうど小さなスライム戦争が起きている場所が転々と横に広がって続いてるみたいなんだ。



それを辿って問題の場所まで行ってみようぜ。 」




俺はOK!と返事を返し、そのまま3人でまずは一番近くで起きているスライム戦争の戦場へと最短距離で向かった。




そしてそこへ近づくにつれてフワッと漂ってくるのは入り混じった木や草をすりつぶした様な匂いと、肉の腐った様な?変な匂い。


鼻をつまむ程ではないが不快に分類される匂いに僅かに眉を潜めると、見えてきたのはドロドロに溶けてしまった木や地面、そして運悪く近くを通ってしまったらしいモンスターの溶けた死骸、そしてーーー



沢山のスライム達が強酸を出し合って戦っている姿であった。




ピュピュピュッ!!!と凄い勢いで飛び出すマシンガンの様な強酸の攻撃。


それがお互いに直撃しているにも関わらず防御力がとんでもなく高くなっているスライム達はまだまだ余裕でピンピンしている。



しかし周囲の耐久性はもはや風前の灯火。


辺り一帯がドロドロで、シューシューと溶け出す時に発生する煙がそこら中に充満していた。




これがスライム戦争か・・




一段と濃くなった変な匂いに一度ゲホッと咳き込むと、俺は即座に腰に差している中剣を二本抜いて構えると、そのままタッと一番近くのスライムに向かって走る。



すると、俺の存在に気づいたスライムたちは標的を変え、俺に向かって強酸のマシンガンを打ってきたが、それをヒョイヒョイと避け、その中の一匹に切りかかったーーーーが・・




ガキィィィィーーーン・・・




あまりの硬さに俺の剣は跳ね返されてしまい、剣から伝わる細かい振動を手で受け止めながら「 硬っ!! 」と叫んだ。




これはまともな攻撃は通らないぞ!と一度距離を取り、スキル< 魔法付与術 >で魔法属性を付与しようとした、その時ーー



「 あたいに任せな! 」


そう行ってルーン先生は杖を軽く上に掲げ、そのままスキルを発動する。





< 魔法師人の資質 > ( ノーマルスキル )




< 砦の破壊者 >



一定時間対象の防御力、耐性値をダウンさせることができる。


そのダウン量は術者の魔力値と運のステータスに比例し、更に使用時間は術者の体力値に比例する。



(発現条件) 



一定以上の魔力値、運、体力値を持つこと


一定回数以上の魔法を用いた戦闘経験があること、かつ防御体勢の敵を倒した経験があること







< 魔法師人 >は攻撃からサポートまで幅広い魔法を扱う事のできる戦闘系中級資質。



魔法系のスキルを使い、どうやらスライム達の防御力ダウンのデバフを掛けてくれたらしい。




そのスキルにより、その場のスライム達はガチッ!とした見た目からぷるぷるボディーへと変化。


チャンスと思った俺は直ぐにその集団へと飛び込む。




そして近くの一匹に向かって剣を振ると、予想通り!


先ほどと違い多少抵抗はあるものの、楽に切り倒すことができた。




それを見て、よーーし!と気合を入れ直した俺は、そのままスパパパーンとスライム達を次々と倒していった。




そうしてとりあえず一つの集団を倒しきり、ふぃ〜と息を吐き出すと、近寄ってきたルーン先生がカッカッカ〜と笑いながらバシバシと俺の背中を叩く。




「 よ〜し!あたいの見所通りだ!この調子でどんどん行くぜ! 」




「 ルーン先生こそ凄いや、デバフ魔法。 


お陰で楽に倒せたよ。ありがとう。 」





単純に凄いと思って御礼を告げると、ルーン先生は気を良くしたのかフフンと胸をグイッ〜と張って得意げに言った。




「 まぁな!そりゃ〜死ぬほど努力してきたからその賜物ってやつなんだぜ〜。



実は子供の頃に助けてくれた人が、めちゃくちゃカッコいい人でさ、それから元々あんまり良く思ってなかった魔法に対してのイメージが変わったんだ。



それまでは弱々〜としている魔法使いに対して何となく好きになれない感じがあったんだけどよ、その人に会ってそんなイメージは一瞬でなくなったな〜。



それからは元々得意な魔法を必死で練習したんだ。



イメージに踊らせれるべからず!これ大事!だよな! 」




「 ほほぉ〜。それはとても良い出会いをしたんだねぇ。 」




その恩人さんを思い出しているのか、キラキラ目を輝かせながら嬉しそうに話すルーン先生に思わずほっこり。




そうそう、イメージを気にしすぎて自分の才能を潰すのは勿体ないのだ!



フンフンッと鼻息荒く心の中で宣言した後、ルーン先生がどうして自身の担当する< 魔法学 >の授業にて好きな格好を生徒達にさせようとしたのかが、何とな〜く分かった様な気がした。



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