27日目(宿泊)

 彼女の名はラフィ。

 時刻は深夜、寝巻に着替えた彼女は今まさに寝ようかというところだった。



「たぶん、そろそろですかね?」


「――遅れました!」


 バーン。



「あなたは……」

「ハァ……どうも……ハァ……僕です……!」


 そう言って、男は息を切らせながらニコリとほほ笑んだ。



「まったく。こんな時間に騒々しいですね。別に毎日来る必要があるわけでもないのだから、遅くなったときは来なくてよいのですよ」

「すみません、姫様がまた寂しがっているかと思うとどうしても……」

「ま、またとはなんですか! とにかく、こんな深夜にバタバタと侵入されては近所迷惑という話です。気を付けてください」

「失礼いたしました。たしかに姫様のおっしゃる通りですね。今日のところはもう帰ります。しから――」

「待ちなさい。誰も帰れとは言ってません」

「……と言いますと?」

「こんな遅い時間にまた屋敷を動き回られたらそれこそ迷惑です。今夜はこのまま泊っていきなさい。私のベッドは幸いにも広いですから、端の方なら使って構いません」


 ラフィがベッドをポンポンと叩く。

 そこまで示されれば、もちろん男の方もピンとくる。


「……初夜?」

「ば、馬鹿なことを言ってないで、早く上着と靴を脱いでベッドに入りなさい!」

「パンツは?」

「結構です!」



「……」

「……」



「…………」

「…………」



「あの……」

「スゥー……スゥー……」





「…………この人、本当に私を落とす気があるのかしら?」

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