カチューシャ達の突進
「レオポルト2が撃破された」
レオポルト2が破壊された瞬間、カチューシャ達も驚き衝撃で恐怖した。
「不味い、残った一両を撤退させないと」
だがカチューシャはすぐに状況を把握しすべきことを理解、残った貴重な一台を逃がすことした。
そして操縦手に命じる。
「発射地点へ全速前進!」
「はい!」
「カチューシャ、危険すぎない?」
「あれだけのミサイル、そうそうあるもんじゃないわ。多分レオポルト2専用、それ以外には使いたくないはず」
「確かに新品を骨董品には使いたくないわね」
自嘲している間にクルー達の覚悟は決まった。
「発射装置を破壊する! 狙って!」
「カチューシャ! ランチャーもアームも細すぎて狙いが定まらない!」
タブレットで狙いを付けていた砲手が報告する。
「アームだけ伸ばして、車体は地面の窪みにすっぽり入れているみたい。私たちからは狙えないわ」
アームは細すぎて狙えない。
小型クレーン程度の太さだが、通常でも全長六メートル、幅三メートルの戦車を相手に照準するため、小さすぎて狙えない。
「分かった! なら、手前側の地面を狙って! 牽制よ!」
「了解」
カチューシャの命令通り、目標手前の地面を狙って打つ。
試しに一発アームを狙うが外れる。
やはり振動する車内からアームを狙うのは無理だ。
「突進して!」
「近づいて砲撃を浴びせる気か?」
接近するT34を見てモーリェ課長は、驚いて目を見開いた。
第二次大戦の遺物だが、ローメッツはタダの装甲車だ。
車体が低いのが唯一の取り柄で、防御は断片防御、二〇ミリクラスの機関砲さえ耐えられない。
T34の砲撃でもイチコロだ。
「あんなのに撃破されたら笑いものだ。一寸勿体ないけど、始末するようにローメッツに言って」
「残りのレオポルト2は良いのですか?」
「逃げる戦車より向かってくる戦車を迎撃しないと危険だよ。もう一両破壊して最低限の目的は達成したんだ。ここはノーダメージで離脱してワンサイドゲームに見せよう」
「了解」
すぐにローメッツに指示を出し、狙いを変えるように命じた。
「気付かれた!」
アームが自分たちの方へ旋回するのを見てカチューシャは狙われていることに気がついた。
「大丈夫! 回避すれば問題ない!」
カチューシャはアームの動きを見て照準の状況を読んでいく。
「回避!」
カチューシャが命じた瞬間ミサイルが放たれた。
だが、ミサイルのため、誘導可能で軌道を修正して迫ってくる。
しまった
カチューシャが思った時にはミサイルは目の前にやって来たいた。
次の瞬間、ミサイルはT34の正面装甲に当たり、ゴーンという音を立てて弾かれた。
「装甲で弾けた!?」
「何で?」
クルー達が口々に驚きを口にするが、カチューシャは何故だったのか理解出来た。
「ミサイルだから、最高速になる前に当たってしまって貫通出来なかったんだ」
カチューシャの推測は当たっていた。
大砲なら発砲時、砲口から砲弾の速度、初速が最高速度であり、遠くへ行くほど速度は落ち、貫通力も低下する。
しかし、ロケット推進のミサイルは違う。
大砲のように反動がない分、徐々に速力を増すため発射直後は遅い。
最大、秒速1500mで飛ぶミサイルも同じ。
そしてエネルギー弾は十分な速力がなければ、装甲を貫通出来ない。
T34は敵に接近したため、貫通するには足りない速度の間にミサイルを受けて、装甲で弾いたのだ。
「このままツッコんで!」
「また撃たれない?」
「大丈夫! アレ二発しか搭載できないみたい」
「アームが華奢で二発しか撃てないのがネックになったな」
モーリェ課長は苦笑する。
イリヤは運動エネルギー弾のため重く、ランチャーを含めてミサイル重量は100 kgを超える。
三メートルの高さからトップアタックや建物の角からアームを伸ばして打とうとしたため、二発積むのが限界だった。
そのため、二発撃ったら再装填の為にアームを縮ませる必要がある。
「退避させますか?」
「いや、出たところを砲撃でやられる。そのまま引きつけておいて……ってT34が止まらないぞ何をする気だ」
「カチューシャ! もう目の前だけどどうするの!」
「そのままぶつけちゃって!」
「大丈夫なの!」
「これは戦車よ! あんな細いアームへし折るくらいの頑丈さがあるんだから。体当たりしてへし折って」
「了解!」
操縦手はカチューシャの命令で勢いよく向かって行く
「とりゃあああああっっ」
T34はローメッツにぶつかった。
低い車体だったため、簡単にT34は乗り上げる。
そして勢いはそのままに、車体上部を走り、アームに乗りかかり、へし折るとそのまま降りた。
「うおっとっ」
着地の衝撃がカチューシャ達を襲う。
折ったアームがクッションになり少しは衝撃を吸収したが、一メートル近く落下したため車内の衝撃は激しい。
「もお、カチューシャは無茶なんだから」
「ごめん。でも上手くいったでしょう」
後ろを振り返り、戦果を確認するカチューシャは気軽に言った。
見事にアームをへし折り、発射装置を破壊している。
車体に予備の弾薬を搭載しているとしても、もう再装填は無理だ。
「さあ、早く移動しましょう」
とカチューシャが言ってT34を進めた直後、一発のミサイルが、真後ろを通り過ぎた。
「不味い、もう一両残っていた」
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