第19話 美髪

祖母の髪は、白髪の一本もなく艶々としていた。

ただ、酷く生臭かった。

秘密よ、と愛用のつげの櫛を見せてくれたことがある。

「人魚の脂を染み込ませとるんよ」

そう悪戯っぽく笑っていた。


祖母は亡くなり、荼毘に付された。

髪だけが燃えずに残り、いまだ箪笥の中で伸び続けている。

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