幕間スキット「猫と人間」
ルナ「……」
フェスタ「どうした? まだ納得してないようだな」
ルナ「それは……まぁ……変装すべきであるというのは、間違いなくその通りなんですけど。女装は流石に……」
フェスタ「別にいいじゃないか、似合ってるぞ」
ルナ「そういう問題ではなくて」
フェスタ「アストレアは大体いつも女装してるだろ」
ルナ「叔父上は好きでそうされているんですよ!」
フェスタ「ふむ、似合ってる似合ってないが問題ではなく、自分の意志で女装をしているかどうかが問題というわけか」
ルナ「とにかく! 次の町についたら仕立て屋に行かせてください。贅沢は言っていられないのは分かりますが、このままではいくら何でも不自然です。必要経費なんです」
フェスタ「別に違和感はないがな」
ルナ「振る舞いに表れるんですよ!」
フェスタ「わかったよ。服屋な覚えておく…………服屋に寄ってる余裕があればの話だがな」
ルナ「何か言いましたか?」
フェスタ「いや、なんでも」
ルナ「そう言えば服で思ったんですけど……フェスタさん、猫になってる間……その……」
フェスタ「全裸だな」
ルナ「で、ですよね。だけど、黒猫から人間になったときはちゃんと服着てますよね」
フェスタ「そうだな。人間という生き物は公共の場では衣服を着用するのが自然だからな」
ルナ「いや何故着ているのか、ではなく。服はどこから? 人間と猫の姿に行ったり来たり出来てる時点で質量保存も何もないとは思うんですが……」
フェスタ「ふむ、いい知的好奇心だな。ではヒントをやろう。自分の特技は『幻想魔術』。幻術やら攪乱が得意だ」
ルナ「別にクイズがしたいわけではないのですが……えっと……猫の時は服を着ていらっしゃらない……人間になるといつの間にか服を着ている……フェスタさんは幻想魔術が得意…………まさかっ!?」
フェスタ「さて、どうだろうな」
ルナ「いや、今は普通に服を着ている……いや、それももしかして……幻……あ、あわわ……ごめんなさい! 少し頭を冷やしてきます!」
フェスタ「ふむ、皇太子といえど、中身はまだまだ十歳の少年か」
アルター「まったく、さっきから聞いていれば」
フェスタ「厠は済んだのか」
アルター「デリカシーのないことを……あまり、殿下をからかうんじゃないぞ」
フェスタ「からかっているわけではないさ。ただおしゃべりを通じて人となりを知っていくついでに楽しんでるだけさ」
アルター「からかい半分じゃないか……で、実際の所どうなんだ?」
フェスタ「と、言うと?」
アルター「お前が痴女か、そうではないか、という話だ」
フェスタ「さぁな」
アルター「おい」
フェスタ「服を着ずに幻術で往来を闊歩する変態だと思うのならばそれが真実だし、ちゃんと服を着たまっとうな人間だと思うのならば、それもまた真実。それを決めるのはルナだよ」
アルター「不健全な女だ……」
フェスタ「惑わすのが自分の仕事なのでな」
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