第12話 離れられない理由って何?
目の前を飛んでいくカナタと、それを受け止めようと伸びる蔓。おかげで地面に落ちる事はなくカナタは空中でキャッチされた。
だけど、目が開いていない。
「カナタっ!?」
『ナンで出テきた!? 今アブナイからスライム、口を開けなかったノニ』
アルラウネの蔓の半分はカナタと反対方向に伸びている。その先には目を真っ赤にして口からは泡を吐き出す昨日よりさらに見た目が怖くなったオークがいた。着ている物や感じから昨日見たのと同じなのかな。
残りの蔓全部でオークの突進を止めているようだけれど……。
『ハルカ、はやく。カナタ連れてニゲる!!』
「でも、アルラウネさんは!?」
『ハヤく。ワタシ、怪我。本調子じゃナイ』
でも、私カナタを背負って移動なんて出来ないし。あとソラが見当たらない。アルラウネだってそのままだと……。
『あゥッ!?』
アルラウネの顔が歪む。オーク側の蔓が噛みつかれていた。
やっぱり、このままなんて駄目だよ。
私はアルラウネに近づき、診察を始める。まずは怪我で本調子でないなら怪我を治せばいいんだ!
「
何で近づいてくるんだと言いたげなアルラウネの状態が浮かぶ。カナタをキャッチしてるのとさっき噛まれた蔓、根は数本、頭側にある花びらに怪我。根にコブがあるけど、今は関係ないのかな?
「もふちゃん!」
『ハイ、ハルカ。ライムの中の回復薬使用をオススメします』
「ライム! 回復薬をお願い」
『わかったラム!』
『ハルカ、お前ナニを?』
「えーいっ!!」
『キゃぁっっ!?』
回復薬で濡れたアルラウネだったけど、すぐに吸収され効果が出る。怪我してたところは全部治ったみたい。
『コレは……』
怪我が治って元気がでたみたい。アルラウネはカナタを持っていた蔓もカナタを置いた後オークへと向かわせる。
『モウ少しモツかもしれない。だけど――』
「アルラウネさん、ソラは? ソラなら皆を乗せて走れるかもしれないの」
『無理。小さな獣、ずいぶんムコウに飛ばされた。それにワタシ、根がココ。動くデキない』
「そんな……」
それじゃあ、むこうのオークをなんとかしないと駄目って事!?
私は考える。オークは昨日も来てて、その時は何のため? どうやって追い返した?
「アルラウネさん、花粉は? 昨日花粉でここからいなく出来たんですよね?」
そうだ。なら、花粉でさっきのライム達みたいに操れば。だけどアルラウネは首を横に振る。
『花粉一日一回。もうデキない』
「うわっちゃぁ。なら、えっとえっと……」
必死に考える間もオークはアルラウネの蔓を握り、噛みつき、踏みつける。時間はあまりないのかもしれない。
「何で、あんなに必死にここに向かってるんだろう?」
アルラウネを食べる為? カナタを追いかけて? 私達? 何が目的なんだろう。アルラウネ、カナタと目で見て、ライムも見ようとする。
あれ、ライムがいつの間にかいない。
『アイツ、傷カラ毒食べた。オカシクなってる。だから解毒するタメにこの花畑荒ラシに……』
「え?」
だったら、解毒してしまえばお帰りいただけるんじゃない!?
ただ、解毒薬をかける為にはライムがいる。ライム、どこ行っちゃったの!?
カナタは目が覚めてない。なら、魔法でしちゃっても大丈夫……なのかな。
「ライムー!!」
『なんだラムー!!』
あらぬ方向からピョーンと跳びはねてきたライムはきれいに着地を決めるともぐもぐ口を動かして、ソラを吐き出した。
『連れてきたラム』
『モヤァ……』
「ソラ!!」
『ソラ、足ケガラム。動けないラム』
「そ、そっか!」
『回復薬使って良かったか? わからなかったから連れてきたラム』
「ごめんね、そんな気を使わせて。二人が必要だったらいくらでも使っていいからっ」
『わかったラム』
ライムは回復薬を取り出し渡してくる。急いでソラに振りまく。
倒れていたソラはすぐに立ち上がった。
「ソラ、早速で悪いんだけど……」
あ、でもアルラウネはここに生えているんだ。一緒に行けないって……。
やっぱり、何か起こるかわからない場所に一人置いて行くのはまずいよね!?
『あゥっ!? あぁぁァぁぁァ!!』
アルラウネが悲鳴をあげる。
オークが彼女の蔓を噛みちぎってしまった。
残った蔓で抑えているのももう限界かもしれない。
『ハルカ、はヤく、カナタを……』
「でも、アルラウネさんが!」
『ワタシはここカラ動けない』
「なら、根っこごと持ち上げてっ」
彼女はふるふると顔を振る。
『ワタシは、毒草。ここ以外で咲くト、ミンナに迷惑。カナタにも』
「でも……」
『カナタ、来てくれて嬉しカッタ。友達になってクレてありがとう。お願い、ハルカ。カナタを守って……』
『ハルカ、行くモャ!! しっかり首に掴まってモャ』
昨日見た大きな姿に変わったソラ。口に咥えられ背中に乗せられる。ライムも後ろに乗ると、最後にカナタを咥えソラは駆け出した。
言われた通りソラの首に腕を回す。
「アルラウネさん!!」
彼女は安心したように笑ってみせ、オークへと視線を向けた。そこで彼女の姿が見えなくなった。
ソラは崖を軽い調子で駆け下りていく。
「ソラ、やっぱり――。アルラウネさんを放っておけないよっ」
『オークはライムより上の魔物ラム。アルラウネもラム。ライム達じゃ、手も足も出ないラム』
『ハルカ、』
でも、アルラウネのあの言い方。
あそこの花畑は彼女にとって大切な何かなのかもしれない。
大切なモノが傷つけられたりつぶされるのは、心が傷ついて悲しくなってしまう。
病院でもあった。ある男の子が女の子の大事な人形を踏んづけて、泣かせていた。
あの時は、看護師の神奈月さんがきれいにしてくれて――。
泣いたり悲しんだりも治してあげられる、そんなお医者さんになるんだ。そして、それを事前に防ぐ事ができるなら。予防も出来るお医者さんに!!
原因を取り除きさえすれば、オークは花畑を荒らさないでいてくれるかもしれない。なら――!!
「お願い、ソラ。ライム!!」
『――何か、手があるラム?』
私は大きく頷いてみせた。
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