再び幸せが訪れる時まで《姫子の事件記録》

第２話 お家

　姫子から話し掛けられた女性は、嬉しそうな顔をしながら、

　「ありがとうございます。

　　実は私もこの子が一人で泣きながら歩いていたので、一緒にお家を探してあげていたのです。

　　私が一緒に歩いていたので少し落ち着いたのか、少し前にようやく泣き止んでくれたところでした。

　　でも、まだまだ不安だったのでしょうね。私もどうすればよいのかと不安に思っていた所でした。」

　女性が少し困っている様子で姫子に話しかけてきた。

　「そうでしたか。今までよく頑張りましたね。ありがとう。」

　姫子が女性の顔を見ながら笑顔で答えた。

　「ところで僕は、自分のお名前を言えるのかな？」

　姫子が男の子に聞いた。

　「けんちゃん」

　男の子が小さな声で答える。

　「けんちゃん？それは、もしかして『けんた君』なのかな？」

　姫子が思いついた名前で再び男の子に聞いてみた。

　「ううん、違うよ。けんたろうだよ。」

　男の子が答えた。

　「えっ、お名前は、けんたろう君だったの？

　今までずっとけん君ってお名前だと思っていたのに。」

　女性がこの話を聞いて、驚いていた。

　「そっか、ありがとう。

　　けんたろう君って言うんだね。お名前を教えてくれて、どうもありがとう。

　　けんたろう君は、パパとママと一緒に遊びに来ているのかな？」

　　また姫子が優しく聞いた。

　「ううん、パパとだよ。」

　「そうなんだ。それじゃあ、パパと二人で来ているんだね。」

　「うん。」

　「じゃあ、どんな所に泊まっているのかな？」

　「おっきなおうち。」

　「おっきなおうちなんだ。

　　そのおっきなお家の屋根は、何色かな？」

　「みどり色」

　「そっかあ、緑色の屋根だね。じゃあ、緑色の屋根のお家の色は、何色なのかな？」

　「えっとね、木のおうちだよ。」

　「木でできたお家で、屋根は緑色なんだね。ありがとう。」

　「あとね、その木のお家を見た時に、けんちゃんが覚えている物って、何かあったりするのかな？」

　「うん、あるよ。あのね、ニワトリさんがね、屋根の上にいるんだよ。」

　「ニワトリさん？」

　女性が困惑していた。

　しかし、姫子は落ち着いた様子で納得したように頷くと、

　「そのニワトリさんって、もしかして、風が吹くとクルクル回るニワトリさんの事なのかな？」

　とけんちゃんに聞いた。

　「そうだよ。パパもそう言ってた。」

　「じゃあ、けんたろう君と緑色の屋根に風見鶏が飾られているおおきな木のお家を探しに行こうか。」

　姫子がけんたろう君に微笑みながら答えた。