5 両手持ち用の杖は大群を滅ぼす

 ツリーウルフを倒した後に気付いたのだが、全てが灰になったので尻尾を回収できなかった。


 そう、これが悲劇だ。


 違うツリーウルフの住処を探さなくてはいけない。


 ……やっちまったぁ〜!


 めっちゃ面倒臭い事やっちゃったじゃん私!


 という事でこれから【地獄の業火ヘルファイアー】をやる時は数本の杖だけにする。


 失敗からちゃんとしっかり学べる私やっぱ凄い!


 凄いったら凄い!


 という事でその日は宿屋の庭で魔法をひたすら練習することにした。


 もしかすると今分かっている魔法を全てやると称号が貰えたりするかもしれないからね。


 ツリーウルフの現実から逃げている訳ではない。


 ないったらない。


 あ〜結構な時間やっていたからかな? めっちゃ疲れてきた。


 多分、MP的なのが無くなってきてるんだと思う。


 少し休憩するか。


 という事で宿屋のベッドで横になる。


 すると直ぐに眠くなってしまって視界が真っ黒になる。


 その時


『称号︰【パーフェクト完全】を極めし者 を獲得しました』


 と聞こえた気がしたが気のせいだろう。


 そのまま意識を手放した。



 一方その頃生き延びたツリーウルフは……


ワフここに誰かいないか!」


 と、木に向かって吠える。


すると木の中からツリーウルフが1匹出てくる。


ガルルルルルウォフ一体何の用だ!」

ワフワフ実は俺らの住処をガルルル変な女が全てルルル燃やしやがったんだ! ワフだから頼むワフ助けてくれ!」


そう吠えると周りの木からもツリーウルフが出てくる。


ウォフ何だって!?ワーフそいつは大変だ!」

ガルルルそんな女殺してルルバフやろうじゃねぇか!」

ワフ本当か?」

ウォフウォル仲間のピンチなんだかルルワフら助けてやるよ!」

ワフルルルありがとう! ワフルルルありがとう!!」




 そしてそんな会話があるなんて夢にも思わず翌日……


「んー?」

 と言いながら目を擦って起きる。


 あ〜昨日は結構魔法を使いすぎて疲れた。


 でも一晩も寝ればこの通り!


 疲れもぶっ飛んで超元気です!


 腕をブンブンと回す。


 さぁ〜て、冒険者ギルドに行きますか!


 と気合を入れて宿屋を出ると街が何やら騒がしい。


 なんだなんだ!? 何があったんだ!?


 あっ、受付嬢の人だ!


「おぉーい!」


 と受付嬢に向かって言う。


 すると、気付いたようでこっちを見た。


 そしてこっちに来た。


「あのぉ〜、何があったんですか?」


 と質問する。


「あぁー、実はですね。ツリーウルフの大群がこの街に来てるんです」


 なっ、なんですとぉ〜!?


「え!? それほんと!?」


「本当です。なので今から冒険者ギルドにて作戦会議が行われます」


 ……絶対原因私じゃん。これ行かなきゃ駄目じゃん。


「あのぉ〜私もぉ〜行けませんかね?」


 多分それこそダメと言われるだろうが言ってみる。


「貴方が……ですか?」


 まあ、そうなるよね。だって私冒険者ランクFだもん。


「はい」


 さすがに自分でまいた種は自分でどうにかしないといけない気がする。


「……分かりました。行きましょう」


 まさかのOK、これは予想外。


「えっ、本当に?」


 聞き間違いかもしれないので念の為もう一度聞く。


「本当です、早く来てください」


 そして受付嬢と一緒に冒険者ギルドに走って行った。



 冒険者ギルドは冒険者で溢れていた。


 皆んな何かを囲っている。


 その中心には周辺の地図があった。


 そしてギルドマスターらしき人が、状況を説明し始めた。


「えー、ツリーウルフの大群は現在、北西方面からこちらに向かってきている。よってこの街の北西方面の壁付近を緊急で防衛することにした。防衛が得意なやつは1番前へ、近接が得意なやつはそのひとつ後ろへ、そして遠距離が得意な奴は一番後ろに行け」


 と言い終わる。


 ……遠近両方出来るやつはどうしたらいいんだろう?


 そう疑問に思っているとつい声に出ていたようだ。周りが私をめっちゃ見ている。


 怖! めっちゃ怖!


 そしてギルドマスターがこっちに向かってきた。


「今の、本当か?」


 圧がすごい。流石ギルドマスター伊達だてじゃないね。


「はっ、はい」


 周りがざわざわと喋り出す。


「静かに!!」


 とギルドマスターが言うだけで周りは静かになった。


「天職は?」

「魔法使い」

「名前は?」

「メルア」

「冒険者ランクは?」

「今の所F」


 この言葉に周りが大爆笑する。


 まあ、当然だよねぇ〜。


 冒険者ランク最低のFの奴が遠近両方出来るって言うんだから。


「静かに!!」


 とまたギルドマスターは言った。


 するとまたすぐに周りが静かになった。


「冒険者ランクFで魔法使いで遠近出来るやつなんざ今までで1人しかいねぇ。おめぇ、それホントか?」


 更に圧が増す。


 本当なんだよなぁ〜これが。


 信じられないだろうけど。


「本当です」


 じぃーっと顔を見てくる。


 やっぱガン見されるのは怖いしやだなぁ〜。


 そして見つめられること数十秒


「こいつは嘘を言ってねぇ」


 その言葉で周りがざわざわと喋り出す。


 さっきのよりも声が大きい。


「静かに!!」


 本日3度目の静かにきましたー!


 そして本日3度目の言われた瞬間静かになるも来ましたぁー!


 ……なんだよこれ。


「よし、この嬢ちゃんに最前線で戦って貰う。異論はないな!?」


 え? なんで?


「「「「「「無いです!!!!」」」」」」


 いや私にあるんだけど。


「よし、頑張ってくれ!」


 えー、うそやぁーん。


 という事で何故か……私が最前線で戦うことになりました。


 ツリーウルフの大群が見えるようになると所々で恐怖故に震えるものが出てきた。


 そして


「おい、大丈夫か?」


 と震えている人に質問する者がいる。


 大体こういう時の返し言葉は……


「ふっ、ただの武者震いさ」


 はい出たーカッコつけてるけど内心超びびってるやつー。


 あっ、やべ。めちゃくちゃ近くに来てたわ。


 という事で【重力無効サイレントグラビティ】で宙に浮く。


 後ろからおぉ〜と驚きの声が聞こえた。そして


「自爆杖!」


 技名っぽく言いながら自爆杖を【重力無効サイレントグラビティ】で飛ばす。

 

ボォーン!! と音がして約20匹位が灰となった。


 いや強よ! やっぱ威力おかしいだろ!


 まあ楽に倒せるならそれでいいや。


 という事で【完全修復パーフェクトリペア】で自爆杖を復活させる。


 後ろからは何も聞こえない。多分驚愕すぎて声が出ていないのだろう。


 これを何回か繰り返したのだが流石に分が悪い。


 くっそーもう一本あったらいいんだけどなぁ〜。


 そしてまた自爆杖を【重力無効サイレントグラビティ】で飛ばす。


 ボォーン! ボォーン! と音がした。


 ……ん? ボォーン、ボォーン?


 あれ? なんか2回音がした気がする。


 まあ気のせいだろう。という事で【完全修復パーフェクトリペア】する。


 すると自爆杖が2本あった。


 ……え? 2本? 何で? 周りを見るともう一本いつの間にか浮いている杖があった。


 多分だがさっき【重力無効】を使う用の杖を出そうとした時にもう1本ロープから落ちてしまったのだろう。


 そして私のものだから分かる。その杖がやっている魔法が。


 その魔法は……


完全複製パーフェクトコピー】という魔法だった。


 名前で分かると思うがコピーしたいものに対してこの魔法を使うとその物体を完全にコピーして近くに出すというものだ。


 だけどこの間の両手持ち用の杖の最高者を獲得した時には無かったはず……


 あっ、もしかして昨日寝る前に聞こえたあれ、まじだった!?


 多分【完全パーフェクト】って付いてるやつ全部やりまくったから手に入ったんだろうなぁー。


 いやー、これはまじで便利すぎる。


 あれ? ちょっと待てよ、もしかしてこれ【完全修復パーフェクトリペア】する用の杖も複製出来る?


 という事で自爆杖を飛ばしながらやってみる。


 えいっ! 【完全複製パーフェクトコピー】!


 すると杖が2本に増えた。


 うわぁー、出来ちゃったよ。これはもうやばいわ。


 そしてここからはただの蹂躙だった。


 何せ何百本もの自爆杖が上から降ってきて、飛んできた自爆杖はまた復活してまた自爆するのだ。


 しかもその数は現在進行形で増えている。


 うん、これは流石にツリーウルフに同情するわ。

 これは酷い。


 まあやってるの私なんだけどね!


 そんなことがあってツリーウルフの大群は消え失せた。


 そしてツリーウルフの尻尾も消え失せた。


 ……またやっちゃったよ私。はぁ〜、まだ私冒険者ランクFのままなのかぁー。


 取り敢えず地上降りるか。


 降りると歓声が起こった。


 ちょっとビクッとした。


 そして皆が


「あいつすげぇー!!」


 と叫んでいた。


 いやぁ〜照れますなぁ〜。


 あっ、ギルドマスターだ。


 こっちにズンズンと歩いてきて、こう言った。


「これからお前は冒険者ランクSだ。さすがにこれ以上ランクを上げるとほかの冒険者から反感を買いかねない、許してくれ。本当はZくらい上げたいんだが」


 え? まじ? 冒険者ランク6つ昇格? やぁ〜ば!


「やったぁ!!」


 この後は冒険者ギルドに言って皆と飲んだり(まだ私は未成年なので葡萄ジュースなんだけどね)喋ったりしてすごい疲れた。


 因みに冒険者ランクF〜Sに一気に昇格したのは私含め3人らしい。


 いや私以外にもいるってま?


 取り敢えず何とか宿屋に帰ってきた。


 さて、明日は何しようかなぁ〜? 


 と思いながらぐっすりと寝た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る