12 両手持ち用の杖は買い物をする
お布団……もふもふ……。
ぐへへ……最高ぉー。
「ふがっ」
そう変な声を出して起きた。
うーむ、やはりここ最近マジで仕事してたからかガチで眠い……。
昨日とか本当に死を感じた。
まじで焦ったわー、あれは。
まあ取り敢えず今日こそは! ゆっくりするぞぉー!
昨日もこんなことを言っていた気がするが、気にしない気にしない。
なんたって今日は……この部屋から一歩も出ないからだ!
部屋から出ると何かあるのならば出なければ良い。
ということで二度寝しまーす。
そう思い寝ようとすると……
『ドンドン』
と扉を叩かれた。
……私は毎日トラブルに巻き込まれる運命のようだ。
扉を開けるとルーファさんがいた。
「……どうしました?」
私と戦え! とか言われたら即扉を閉めて寝よう。
そんなことを思っていると
「私と一緒に買い物に行かない?」
………………は?
「え、ちょ、なんでです?」
「まあまあ良いじゃない、下で待ってるわね」
そう言ってルーファさんは下に降りてしまった。
……えマジで?
今日休みたかったのに。
でも行かなかったらここが昨日の市場みたいになるだろうなぁ。
はぁ……異世界転生したのになんか世界が優しくない。
これにはブラック企業も真っ青ですわ。
行くのやだけど行くかぁー。
ということで『無限収納袋』を首にかけて下に降りた。
ルーファさんは宿の出入り口付近の壁に寄りかかるようにして待っていた。
そして私を見るや否や
「メルアちゃーん! こっちこっち!」
と言って手を振っていた。
あれ? こんなキャラだっけ? なんか違くない?
気のせい……か? いやまあ私昨日初めて会ったからよくルーファさんの事知らないんだけどね。
「あっ、今行きます!」
そう言って急いで階段を降り、ルーファさんの近くに行く。
「昨日市場が少し崩壊したの知ってる?」
知っとるわぁ!
おかげで死にかけたわぁ!
「勿論知ってます」
「なら話が早いわ。今あの付近はその事件があったばかりで怖いから別の所に行こうと思ったのだけれど私、方向音痴なのよ。だから案内してくれないかしら?」
なるほど、道案内か。
それなら私を買い物に誘ったのも分かる。
でもその市場を崩壊させた犯人貴方ですけどねぇ!?
何被害者ぶってるんですか!
「もちろん良いですけど……どこに買い物に行くんですか?」
「昨日と反対方向が良いからナイナア商店街に行きたいわ」
「分かりました」
さて、ナイナア商店街は何処だ?
てかナイナア商店街って名前なんかダメな名前な気がするけどねぇ!?
欲しいもの無いなぁってなっちゃわない!? 大丈夫!?
まあ大丈夫だろう……多分。
そういえばこの間ギルドで手に入れた地図を『無限収納袋』に入れたままだった。
という事で取り出して見てみる。
成程、確かに昨日行った市場とは真反対の方向だ。
よし、道なりも分かったし行くとしよう。
「では、行くとしますか」
「はぁーい」
そう言いながら宿を出るのであった。
さてさて、この状態で街を歩くとどうなるか分かるだろう。
めっちゃ見られるのだ!
前から言っている通り、私は冒険者ランクSだしルーファさんはSSだ。
そりゃあ見られる。
でもいくらなんでもこれは見過ぎでは無いだろうか。
今どんくらい見られているかというと、家に居る大半の人がわざわざ窓を開けてこちらを見ていて、お店で食事をしている人、飲み物を飲んでいる人、料理している人全てが見ている。
いや見すぎ見すぎ!
「私達、人気者ね」
と小声で言われた。
「あっはははは……」
前世では注目されることなんて無かったならマジで緊張する。
人に見られるって案外怖いなぁ……。
「ふふ、じゃあさっさと行きましょうか」
そう言ってルーファさんは歩く速度を上げる。
別に追いつけないわけでは無いので私も歩く速度を上げる。
そうしてジロジロ見られまくりながらもナイナア商店街に着いた。
いやー、なんだろう、歩いただけなのにものすごい疲れた。
「着いたわねー、じゃあ少し食材を買いたいのよ。案内してもらえるかしら?」
えっ!? 案内って商店街までじゃなかったの!? やばいなー、来たことないから分からないや。
取り敢えず【見る者】を発動しよう。
分かるかもしれない。
ということで発動する。
ついでに【
……どうやらここら辺には無いようだ。
少し歩くと、野菜が売られていた。
「野菜売り場に着きましたが、何か買いますか?」
と聞いてみると
「うーんそうねぇー、私野菜はあまり好きじゃ無いのよ、だからパス」
ダメだぞー野菜はしっかり食べないとー。
と口から出かけたのを我慢して
「分かりました」
と言って肉屋を探した。
まあ普通に近くにあった。
「肉はいります?」
そう聞くと
「勿論!」
と聞こえた時にはすでにそこに姿はなかった。
な……なんちゅう速度だ……。
ファーナさんの側によると
「それであとはメムガの肉とレウルサの舌、そしてヴィルンガの皮を下さい!」
と叫んでいた。
うわー、聞いたこともない動物の名前でいっぱいだー。
てか名前的にはあまり美味しそうには聞こえない……。
まあ生き物に美味しそうな名前をつけることの方が珍しいか。
その後ルーファさんがご飯を買い終わり、次の場所に行くことになった。
次は武器屋だそーで。
うん、魔法をずっと使うのは中々大変だわ。
特に【見る者】は【
この商店街では尚更だ。
でも案内するって言ったのは私だし責任持ってやります!
そしてそこそこ歩いて武器屋についた。
「ファーナさん、着きましたよ」
そう言うとファーナは鞭を取り出して
「これ直せるかしら?」
とお店の人に質問していた。
「うーん……まあ直せんこともないがぁ、こりゃまた派手にやったなぁ」
「そうなのよ〜、昨日ちょっと手応えがある人がいてねぇー」
……もしかして私の事かな?
だとしたら私は少しはランクSSと渡り合えたということだ。
そう考えるとちょっと嬉しい。
「って訳で、三日後に来てくれ」
「分かったわ」
さて、買い物はこれくらいかな?
「じゃあ次はね……」
えっ、まだあるんすか。
「洋服、買いに行きたいわ!」
!? 洋……服……!?
前世の私には一切の関連性の無いものだ。
まさか……まさか異世界でそれと触れ合うことになるとは……。
やっぱ異世界最高だわ。
「というかルーファさんって洋服に興味あったんですね?」
「ん? まあそうね、少ーし興味が湧いたのよ」
へー、一体どういう心境の変化だろうか?
戦闘狂だなんて呼ばれているから興味が全くないと思ってた。
ナイナア商店街の少し開けたところに洋服屋はあった。
「わぁ〜、結構色々あるのねー」
確かに洋服はかなりの量がある。
というか日本では見たことのない物が殆どだ。
まあ何故かハワイアンな服が売られていたりもするが……。
いや本当になんでだよ。
ハワイアンな服着てなんの
まあ【見る者】でちょっと見てみるか。
効果とか知りたいし。
《名前:ハワイアンシャツ
DP:500
効果:ハワイアァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!》
????????????????????
え? どゆこと? ハワイアァァァァァァァァァン?
どんな効果だよ!
見ただけじゃ分かんねぇわ!
すると目の前にいた青年が
「これ買います」
と、ハワイアンシャツを指さしながら店員に言った。
えこれ買うの? マジで?
センスどうなってるんだ?
まあ人それぞれか。
男はそのハワイアンシャツを買い、試着室に行って着替えたようだ。
「イエェェェェェイ!! ハワイアァァァァァァァァン!!!!」
着なくてよかった!!
着たらあんな風になってたの!?
マジで着なくてよかった!
ハワイアンになってしまった彼を見ているとファーナさんが近づいてきた。
「あら、珍しいわね。彼が着てる服、〝呪いの装備〟よ」
へぇ、この世界にも呪いの装備があるんですかい?
いや本当に私着なくてよかった!
「効果は……まあ見ての通りかしら」
うん、説明しにくいよな!
「分かります、大丈夫です」
効果:ハワイアァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!
って書いてあるだけだったから実際は効果はよく分かっていないんだけどね。
「呪いの装備はね、ダンジョンとかそういうところによくあるのだけれど、まさか洋服屋にあるとはねぇ……ちょっと私、ギルドに報告してくるから、メルアちゃんはショッピング、楽しんで」
そういうとメルアさんは―消えた。
まじで【
私も習得したい。
そう思うのだった。
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