第6話 世界樹の迷宮と『花』魔法:VS魔物試験

 エヴァが今回試験を受ける格闘場の大きさは、15m程度の正方形となっていて、その周りを腰当たりまである壁が囲っている。


 その壁の奥に、3m程度の奥行で観覧席が設けられている。壁と観覧席の間には、世界樹の力を借りた目に見えない防御壁があり、滅多なことでは壊れない。

 まぁ、それを1度どころか数度に渡り壊した伝説を持つ者が身内にいるのだが、今のエヴァには関係がない。


 ◇

― ☘

 最初の試験は、序盤の定番モンスタースライムである。

 この試験では、最低難易度のスライムを倒すという単純な意図と、その裏には「世界樹の種」と呼ばれる魔核を、如何に適切に、正確な判断をして破壊するか……が試される。

 それ故に、試験開始前にサーシャからは、この試験では、魔核を破壊して倒すところを主眼にして査定すると、あらかじめ伝えられている。


 この査定は、まだ世界樹の迷宮に足を踏み入れていない「ルーキー達の順位」に反映される。 順位とは、各ランクに設けられた『同ランクの格付け』であり、その順位の上位者だけが、次のランクへの昇格試験を受けることができる。


 実は、ルーキー達の順位付けのみ、特別な仕様となっているのだが、それは、エヴァが試験に受かったとしたら、サーシャからしっかりと説明があるのだろう。


 ◇


 モンスターが放たれた。

 この時点で命の奪い合いが始まっている。

 まず、試験を受けに来た新人ニューピーが、勘違いするのがこれである。


 モンスターに言葉は通じない。「始めっ!!」の合図は関係ない。

 だから、奴らは解き放された瞬間に襲ってくる。


― ☘

 当然、この戦いもスライムが、解き放されたと同時に、体をブルルと震わせてエヴァ目掛けて飛びかかってきた。


―――ありゃ? びっくりするくらい遅いぞ?


 彼女の受けた印象はこれであった。

 それと同時に、飛び掛かって来たスライムの魔核を、糸をなぞるように、剣で軽く線を引く。


 すると、魔核はサクリと切れ、切られた魔核を残し、スライムは光の粒子と共に発散して消滅した。


「ふぇ?」

 試験を監督しているサーシャが目を丸くする。


 あれ?この子は、スライム相手でも油断しないし、必要以上に魔核を狙うことを強要したのに、焦りを微塵も感じていない。そして、多分……目茶苦茶強い?


「なぁ……今の試験ってこんななのか? ぶーぶー!」

 カイト姐さんが、呆れてブーイング。 他の姐さん達もぶーぶー。


「きっと次が見物なのよ!」

 フローラ姐さんが、フォロー?を入れる。


 ◇


「ん。ごほん。第一試験合格です。では、次です。2体と戦っていただきます。」


「はい! 複数戦は確か(ぶつぶつ)」

 エヴァは、姐さんたちから教わった複数戦の教えを思い出しながら、構える。


― ☘

 第二試験で登場したのは、スケルトン1体とゴブリン1体。


 ここで試されるのは、ヒト型モンスターに対する対処がひとつめの課題。

 次に、アンデッドモンスターと女性の場合のゴブリン対処である。


 ゴブリンは、繁殖期の性暴力的な衝動が、女性の場合は脅威となる。

 今回のこの個体も、その衝動が強いものが選ばれている。


 2体のモンスターは、お互いに共闘も干渉も頭にない。

 自由になったと同時に、発情しているゴブリンが本能のままに襲い掛かってくる。

 得物はナイフだ。


 飛び掛かってきたゴブリンのナイフを、エヴァは片手剣で弾き返すと、その後ろからスケルトンが片手剣で突いてくる。

 エヴァは、それを半身の姿勢で躱し、改めて間合いを取る。


(あら。人型でアンデッドとゴブリンが相手となると、少し臆したのかしらね?)

 サーシャは、先程のスライムとの対戦と比べて「普通の立ち上がり」に少し拍子抜けをして、そう思う。 


「んー。試験なので、慎重にとも思ったけど性に合わないなぁ。 取り合えず適正をどうたらと説明があったので、アンデッドさんは魔法でサクッと行くかぁー。」


― ☘

 エヴァは、「花」のタリスマンに魔力を込める。



 花開く音とともに、迷える御霊を救えッ―――

―― ✿『花』魔法 蓮 



 タリスマンが光ると、スケルトンの足元に蓮の花が咲き、光がスケルトンを包み込む。『ふぁあ、幸せを感じるありがとう――。』スケルトンの顔が生前の男性の顔に一瞬戻り。天に召されていく。


「ギョ!?」

 仲間ではないが、敵でもないスケルトンの気配が、急に魔法で消されたのを感じ、ゴブリンがそちらを振り向いてそう言った瞬間。


 スケルトンが召された天から、光の矢が降り落ちゴブリンの魔核を直撃する。



― ☘

「ま。こんなとこかな? 骨さんありがとう♪」


 モンスターを見ていたサーシャが、声の方を向くと、結果を見ることなく彼女の隣まで移動して来たであろう、エヴァの寛いだ笑顔があることに驚く。


(何時、私の隣まで移動を……。いやその前に今の魔法が『花』魔法なの? アンデッドの昇天の仕方が「高レベルの神聖魔法級」、それに追撃をしたように見えたけど。 流石スタースキル……でいいのかな。)


「サーシャさんどうですか! いい攻撃だったでしょ!えへへ。」

 無い胸を張り、ニカッと白い歯を見せるエヴァ。


「あぁ。もう私には理解できない強さ!文句なしで第二試験合格よ!エヴァさん。」


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✿ 読者の皆様

 エヴァが『花』魔法 蓮 を使ったシーンのイラストはこちらです♪

(『花』魔法を使っているエヴァの絵を頂きました♪ 可愛い過ぎる姿を是非ご覧ください♪)

https://kakuyomu.jp/users/Egg774/news/16818093074117355025

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