【書籍化決定!】捨てイヌ拾ったらテイマーになった件〜自称・平凡な男子高校生は、強すぎるペットたちと共にダンジョン無双⁉︎いつの間にかネットで有名になってました。ヤバすぎる〜

反面教師@5シリーズ書籍化予定!

一章

第1話 運命の出会い

 地下迷宮ダンジョン


 それは、ある日。世界に突如として現れた謎の異世界。ダンジョン内部には多くの秘密や金品財宝が眠る。


 だが、もちろんタダですべてが手に入るわけではない。


 ダンジョン内部には、人間とは異なる生物が潜んでいた。まるでアニメや漫画の中から飛び出してきたかのような化け物たちを、人々はモンスターと呼び、そのモンスターを倒して一攫千金を狙う者たちが現れだした。


 けれど、ダンジョン内部に生息するモンスターは強い。現代兵器でも太刀打ちできない化け物を前に、人類は不安と恐怖に怯える。




 ——そんな時、世界を救う救世主が登場した。




 後に、【覚醒者】と呼ばれる者たちのことだ。


 彼らは、特殊な能力と驚異的な身体能力をもちいて、次々とモンスターを駆逐していった。次第にその手の超人が人口の一部を占め、やがて多くの覚醒者が生まれる。


 気付けば、ダンジョンが発生してから十年。


 世間ではダンジョンを攻略する者、

探索者シーカー】と呼ばれる職業が一般的になった。


 人間を超えた能力を持つ彼らに、覚醒者になれなかった大半の者が、憧れと尊敬を抱く。


 某配信サイトでは【ダンジョン配信】なるコンテンツが流行り、まさに世界そのものがダンジョンを中心に大きく変わっていった。






 ……しかし、その流行に乗り切れない者も当然ながら一定数いる。


 僕みたいな平凡な人間がまさにそれだ。


 数年前にテレビで見た探索者に憧れなかったと言えば嘘になる。


 ——自分もあんな風に、仲間たちと一緒にダンジョンへ潜って楽しみたい! 冒険したい!


 そう、何度も夢にみた。


 けれど、ダンジョンに入ることができるのは、【スキル】と呼ばれる才能を覚醒させた者だけ。スキルの開花は、条件も時期も不明だ。ある日、突然目覚める者もいる。


 早い人間で、齢九歳の少女がスキルを発現させた例もある。


 だが、十六歳を迎える僕にはいまだスキル発現の兆候はなかった。スキルが発現しなければ、世界に突如として現れた【魔力】なる未知のエネルギーの恩恵にもあずかれない。


 一説によると、その魔力に適合した人間こそがスキルを授かれるという。


 五十を過ぎた男性が、強力なスキルに目覚めた例もあるし、いまだに完全に諦めたわけではないが……夢をみて数年。それだけの時間が経てば、『自分は特別じゃない』と思っても不思議じゃない。


 端的に言えば、僕は諦めてしまったのだ。


 すっかりやる気も社交性も失った僕は、たとえ探索者でなくとも平凡な人間だ。


 通う学校のクラスメイトたちとは仲良くできないし、気の知れた友人もいない。両親は共働きで家を留守にするし、高校生になったら半ば無理やり一人暮らしさせられた。


 当然、恋人もペットもいない。近隣住民と仲がいいかと言われたら、話をしたこともない。


 ……どこまでも、僕の人生は退屈で面白味に欠けていた。


 しかし、そんな僕にも知り合いくらいはいる。




「……雨、結構降ってるな」


 二年三組の教室内で、自身の席に座りながら窓の外を眺める。


 時刻はすでに放課後。ぎゃあぎゃあ騒ぐクラスメイトたちを横目に、僕はさっさと家に帰って明日からの休日をどう過ごそうかと考えていた。


 そこへ、唐突に声がかかる。女性の声だった。


「降ってるね~。よかったあ、朝のニュースちゃんと見ておいて。犬飼いぬかいくんもちゃんと傘は持ってきた?」


「…………神崎さん」


 声のしたほうへ視線を向けると、僕の隣には見覚えのある黒髪の美少女が立っていた。


 彼女の名前は神崎かんざき詩織しおり


 僕と同じ二年三組に在籍する女学生だ。人目を引く端正な容姿に、腰まで伸びた美しい黒髪が大和撫子さをアピールする。


 けど、僕としてはただのクラスメイトにしか過ぎない。こんな風にいきなり声をかけられて少しだけびっくりした。


 彼女は誰にでも優しいから、たまにこうして僕にも声をかけてくる。


「一応は。折り畳み傘があるから、家に帰る分には平気だよ」


 僕のぶっきらぼうな返事に、しかし神崎さんは気にした様子もなく笑顔で返事を返す。


「そっか。じゃあ気を付けて帰ってね。最近はゲートとかあまり開かないみたいだけど、真っ直ぐ帰らないと怖いモンスターに襲われちゃうかもよ~? なんてね」


 そう言ってから『バイバイ』と手を振って彼女は先に教室から出ていった。


 わざわざ声をかけてくる必要があったのかと思ったが、彼女の厚意に感謝しつつ僕も席を立った。


 鞄に教科書などを詰め込んで持つと、そのまま喧騒の中を通り過ぎて教室を出る。


 廊下の突き当たりを目指し階段を下りると、すぐそばに二年生用の昇降口が見えた。そこで靴を履き替え、色とりどりの生徒たちの傘を眺めながら、鞄から折り畳み傘を取り出して広げる。


 ぽつぽつと雨粒を弾き、独特な音色を立てる傘を一瞥しつつ、僕は校門をくぐって外に出た。


 自宅まで徒歩二十分。


 のんびりと雨の中のアスファルトを進む。




 ▼




 しばらく歩いていると、自宅付近の住宅街へと入った。


 僕の家の周りは、なぜか老夫婦が多く住んでいる影響か、あまりこの時間は人通りが多くない。さらに自宅そばの十字路など、早朝か夜しか人がほとんど通らないほどだった。


 次第に雨の音に世界が呑まれる。


 なんの変哲もない舗装された道。生垣が見え、塀が立ち、殺風景な景色ばかりが広がる。


 今日も今日とて代わり映えしない。唯一、普段と違ったのは、帰るまえに神崎さんが話しかけてきたことくらいだろう。


 少しまえの記憶を思い出しながら一本の直線を歩いていると、——ふいに、僕の目に、日常とは違った光景が映った。




 それは、電柱のそばに置かれたダンボール。その中から顔を出した……青白い毛の生き物だった。




「…………犬?」


———————————————————————

あとがき。


新作スタート!

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