第27話 お化け屋敷の探索クエスト④
「命を吸い取りカオスリッチの魂の格をあげる。そのためにペトリシアの力を利用したの!?」
「無惨に殺されるよりいいとは思わないかい? アンデッドに殺されれば、痛みを感じて死ぬけれど、ペトリシアの力なら痛みなんてものは感じないんだ。我はそうして死んだ者は運がよかったと思っているがね? 温情を与えてるんだよ?」
と言ったレイスだ。
だから俺は言ってやる。
「痛みを与えないのが温情なら、恐怖を与えるのはいいのか? それこそ無用なんじゃないのか?」
「フフフ、君は減らず口ばかりほざいてるね? みんな、どうせ死ぬんだ。殺す側が好きに殺すんだから、理由なんてどうでもいいじゃないか。なんでそんなことが気になるんだい?」
と面白そうに
「なら初めからいい顔しようとするなよ。いくら理由を付けたって殺すのに良いも悪いもないって話だぜ?」
俺は拳を握りしめながら話す。
「動物たちの命は奪ってもいいのかい? フフフ」
と、俺の弱点でもついたかのように愉快そうに嗤っている。
「そりゃ食べなきゃ俺たちは死ぬからな。俺たちは生きるために命を食べてるんだ」
「フフフ。適当に煙に巻こうとしても
「伊達に長生きしてないんでね」と俺は答える。
「君は学生だろう?」とレイスは不思議そうな顔をしている。
「けれども、ラインガトンの奴よりは君は使えそうだね」
「ラインガトン男爵を知っているのか?」
「もちろんさ、死んだんだろう? あの男爵」
「そうだな」
「いい死に様だったかい? フフフ」
「死に顔は見てないがロクな死に方してなかったみたいだな」
と俺は答えた。
「それはそうだろう。あいつらは我が恐怖を与えて、ペトリシアが魂を奪ったんだからな」
ニッとレイスは嗤った。
「そうか、お前がラインガトン男爵たちを口封じのために殺したのか」
謎は解けたが状況はあんまり変わらないな、と思った。
「あの男爵には小さな子供を大量に集めてもらう必要があった。我らアンデッド軍団のためだ。あれだけ綺麗に魂を抜き取ることができるのはこのペトリシアだけだ。普通は恐怖で魂の色や味が変わるなどありえないんだよ。フフフ」
嗤い続けるワイスを俺は
「なんなら我らの仲間にならないか? 特別待遇だ。人間をいくらでも君の思うまま、望み通りに使ってもいいよ。もちろん殺すのも君の自由さ。我がそれを認めるよ。きっとカオスリッチ様だって同じことを言うさ。フフフ。いい提案だろう? どうだい? 考えてみなよ」
ロクサリーヌが不安そうに俺を見つめてくる。そんなロクサリーヌの頭をポンと軽くたたいて
「そんな提案にのる訳がないだろう?」
「生きたままで我の仲間になればいい。そして死んだら不死にしてあげるからさ。好きなことして生きたらいいんだよ?」
と、レイスは言って嗤う。
「死んだら待ってました、とばかりにアンデッド軍団の仲間入りだろう? それにサルタ師匠の心配どおりになる訳にもいかないしな」
サルタ師匠との想い出がよみがえる。『お前が道を踏み外したとき、ワシはこの世にいないかもしれないんじゃからの』と言われたのを思い出した。心配には及びませんよ、と心の中で俺はサルタ師匠に応える。
「どうだい? そんなこと言ってても実は心は揺れてるんじゃないのかい? 不老不死は人間の夢なんだろう?」
と言うレイスに俺は
「お前らの仲間になんてならないさ。死んだらサルタ師匠に会わせる顔がなくなるからな。俺にとってはお前らの話より、サルタ師匠に心配かけないことの方がよっぽど大切だ」
と答えた。ぎりっと歯を噛み締めたレイスは
「君とは戦いたくなかったけどね。話を聞いてくれないんじゃ仕方ないねぇ、残念だ」
とため息をついた。
「そういう割にはちっとも残念そうじゃないよな?」
と俺は話した。
「それはそうさ。期待したんじゃなく確認したんだからね。あぁ、やっぱり断るんだって思っただけさ」
「話が早くて助かるな」
「ペトリシアは我のだいじな研究対象だ。生涯、浄化などさせん。我の永遠の研究対象だ。永遠に集めた子供たちの魂を抜き取らせ、ずっと自由になどさせんさ」
「お前からペトリシアを解放させてやるさ」
「君にそんなことができるというのかい? 魂の格をあげカオスリッチ様の力を増すのが我らの目的だ。ペトリシアは欠けることなど許されない存在だ。我はアンデッドの未来が見たいのだよ」
その一言を聞いて固い意思の炎がロクサリーヌの目に宿る。
「ペトリシアに子供たちの魂をこれから先も集めさせるというのですか? ラインガトン男爵のところに囚われていた子供たちは……」
とロクサリーヌは言葉を詰まらせる。
「生贄さ。カオスリッチ様のためのね。我の研究の成果が偉大なカオスリッチ様の誕生だ。第2第3のカオスリッチ様が誕生する可能性だってある。それは輝かしいアンデッドが栄える未来だ」
と言ったレイスは一呼吸おいて続けて話す。
「我らが世界を変えるのだ。その先駆けになる。それが我の望みだ」
と恍惚とした表情を浮かべた。
「なに堂々と人間すべてを殺します宣言して、ご満悦な顔してるんだ。そんな世界、俺は許さない。ロクサリーヌはどうだ? 許せるか?」
「許せません!」
それはそうだろう。瞳に力を宿したロクサリーヌは神聖魔法を唱えている。包んだ両手から光が溢れでる。それをそのままレイスに撃ち放った。
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