第2話 俺って嫌われてる?

本編第18話の孝之たかゆき視点の話です。本編では苗字の野村で通していましたが、番外編では下の名前で通します。


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 俺は真理の信用を勝ち取って、田中が請け負いたがらなかった役目を仰せつかった。すぐに実行するより、萌に近づいてからの方がやりやすいと真理を説得してゼミの研究発表グループに入って近づくことにした。


 俺はグループ作りの時に真理と同じグループに入ったが、真理の取り巻き連中であぶれた奴が恨めしそうにしていた。だから、そいつを口実に萌達のグループに移りたいと頼んでもいいかと教授に聞いた。彼女達のグループはもう5人だったので、他の4人グループにしたらどうかと教授は勧めてきたが、それでは意味がない。俺は萌達の発表内容に興味があるからと熱弁を振るって最終的に了承をもらった。


 萌は研究発表のために図書館で調べものをしている事が多い。教授の了承をもらった日の5限後、図書館で萌を発見して早速話しかけた。


「こんにちは、佐藤さん。俺、野村孝之。俺のこと知ってる?」

「えっと……新田さんの取り……じゃなくてお友達?」


 可愛いなと思ってるに別の娘の『取り巻き』って言われそうになって流石の俺もちょっと傷ついた。まぁ、実際、わざと取り巻きになってるんだが。でも俺が真理の取り巻きになってからそんなに経ってないんけど、もうそんな風に認識されちゃってるのか。しかも警戒されてるみたいだ……ちょっと凹む。でも気を取り直して肝心の事を頼まなきゃいけない。


「実はさ、あの発表のグループからあぶれちゃったんだ。佐藤さん達のところに入れてくれないかな?」

「え、今更? なんで?」


 グループ分けした授業は先週だったから、そう思われるのも無理はないけど、歯に衣着せぬ言葉は辛辣だ。俺は再び凹んだ。


「いやぁ、俺って内気でしょう? だからあぶれちゃって……でも中々頼みづらくてさ……佐藤さん達は親切だから、入れてくれるかなと思ってさ」

「野村君が内気?」


 ヤベぇ。警戒度を上げてしまった。


「私達5人だからもう定員いっぱいだよ」

「先生に聞いたら1人オーバーぐらいはOKだって」

「本当に? でも他のメンバーの意見も聞かないといけないからまだ返事できないよ」


 疑われてるのがありありと分かった。教授に事の真偽を本当に尋ねそうだ。教授には『グループを移りたい』って言ったのに、萌には『あぶれた』と言ってしまい、しまったと思った。


 でも心配するまでもなく、他のメンバーがOKしたと次の日に萌から連絡が来た。しかも下調べの分担を萌と一緒にやる事になった! やった!


 俺はその日から萌の隣に座って一緒に下調べをした。


「佐藤さん、このテーマについてこれしか文献見つからなかったけど、十分かな?」

「どれ?……うん、まぁいいんじゃない? 時間もないし」


 なんだか投げやりだ。まさか俺って嫌われてる?


「なんか身に入ってないよね? 大丈夫?」


 そう聞いたら、あからさまに嫌そうな顔をされた。傷つくなぁ……


 真理の幼馴染の園田悠も同じグループなのだが、翌日は3人一緒に同じテーブルに座って調べものをした。そうしたら、萌は明らかにソワソワしていた。俺は、なんだか苛々した。イケメンの俺が嫌われてブサメンで陰キャの園田が好かれるって何かおかしくないか? しかも真理の取り巻きになってから気付いたんだけど、真理も園田の気を引きたくて必死になっている。


 だからわざと園田の前で萌に色々発表の事を聞いたけど、萌は本当に嫌そうだった。むしゃくしゃする! でも効果はあったみたいだ。途中で園田は『あっちで本を探してくる』と言って席を移り、次の日からは離れた席で調べものをしていた。邪魔者がいなくなって嬉しかったけど、萌の機嫌が悪い。彼女には恨まれちゃったみたいだ……

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