第25話 カフェにて

「おはよう、園田君!」

「お、おはよ…」

「あ、おはよう…中野さん、佐藤さん」


キャンパスでリコは悠を見つけて速攻挨拶をしたが、悠と萌はまだぎくしゃくしていた。


「あ、あ、あの…佐藤さん…今日、授業何コマある?」

「4限で終わりだよ」

「じゃ…じゃあ、4限後、ちょ…ちょっと…じ、時間ある?」


悠が萌と4限後に待ち合わせしたのは、初めて2人きりで会ったカフェ『ムーンバックス』だ。萌は2人掛けのテーブルに悠を見つけて話しかけた。


「お、お待たせ。待ったよね?」

「ううん、い、今…き、来たとこ」

「あの…ち、注文してくる!」


悠のコーヒーはもう目の前にあった。普通の喫茶店だったら、待ち合わせ相手が来るまで注文しないで待っているのだが、『ムーンバックス』は混んでいて席をとったらすぐに注文しないといられない。


しばらくして萌がコーヒーを持って戻ってきた後、2人とも話し始めるきっかけがなく、居心地が悪い無言が続いたが、悠が勇気を出して話しかけた。


「あ、あっ、あのっ…この間、感じ悪くて…ごめん」

「この間って?」

「この間の飲み会の件で…」

「ああ…でもあれは私の不注意で…単に恥ずかしかっただけだから気にしないで。私こそ、酔っ払いを介抱させてごめんなさい」

「俺のほうこそごめん。佐藤さんは被害者なのに怒ったりして」

「もういいよ。気にしないで」

「佐藤さんは、優しすぎるよ。もっと周囲を警戒したほうがいい」

「そう?」


萌はしゅんとした。


「ごめん、責めるつもりはないんだ」


また居心地の悪い無言が続いたが、それを破ったのは悠だった。


「あ、あ、あのっ…よかったら、また2人で会えないかな?あっ、バ、バイトとは別に!」


悠の声は裏返っていた。


「ふふふっ…じゃあ、週1くらいでムーンバックスでお茶しよ?」

「週1?」

「多すぎる?」

「ち、ちがっ…ぎゃ、逆だよ」

「うーん、ムーンバックスは高いからなぁ。それ以上はきついかも。それじゃ、うち来てコーヒー飲まない?」

「中野さんの邪魔にならない?」

「大丈夫だよ。都合がつく日、声かけて。リコが駄目な日は駄目って言うから」


その日は2人ともふわふわした気持ちで別れた。


次の日、悠が明日行ってもいいかと聞いてきたので、萌はリコの都合を聞いた。


「リコ、明日授業の後、園田君が家に来るけど、いい?」

「えっ?!そこまで進展したの?!」

「ち、違うよ!そ、そこまでって何?!」

「付き合ってるんじゃないの?」

「違う、違う!」

「なんだ…ヘタレだなぁ」

「え、何?」

「何でもない。私、出かける用事あるけど、2人で楽しんで」

「な、な、何?!」


『2人で楽しんで』というリコの言葉に萌は真っ赤になった。


「リコが用事あるなら、別の日にするよ」

「いいよ。園田君は私には用事ないんだから、お邪魔虫は出かけてるほうがいいの」

「な、何、『お邪魔虫』って?!」


萌はまた赤面してしまった。

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